連載
» 2006年01月23日 17時25分 公開

韓国携帯事情:ソウル市の交通系電子マネー「T-money」の今

「T-money」導入から1年。駐車場、役所、本屋や映画館、自動販売機など、利用の幅が広がってきた。携帯電話と組み合わせたサービスも始まったT-moneyの今を探る。

[佐々木朋美,ITmedia]

 ソウル市の交通カード「T-money」の進化が目覚ましい(2006年1月24日の記事参照)。T-moneyは、ICチップ入りの交通カードで、料金をあらかじめカードにチャージしておくプリペイド式と、クレジットカードに組み込まれたポストペイドタイプの2種類があり、1500〜2000万枚が既に発行されている。

 地下鉄やバスなどの利用範囲がソウル市以外にも拡大しただけでなく、交通以外での用途や、カードのデザインおよび決済方法が多様化するなど、日常生活にすっかり浸透し活用シーンも増えている。本格的なサービス開始から1年で大きく変わったT-moneyの現状をお伝えしよう。

利用できる場所や用途が拡大

 「T-money」という名称で交通カードが発行されたのは、2004年7月に遡る。同年12月には機能が拡張された「Smart T-money」が発行され、交通以外における支払い場所も大幅に増加。1年ですっかりソウル市民の生活に定着した。

 現在T-moneyはソウル市内のバスや地下鉄だけでなく、ソウルの学校や会社に通う人が多く住んでいる仁川市や京畿道など、郊外地域の交通機関でも利用が可能となっている。

 T-moneyは交通以外にコンビニなどでの決済も可能だが、このように決済ができる利用場所の拡大も図られた。駐車場、役所(各種書類発行手数料)、本屋や映画館、飲料水の自動販売機、駅備え付けのお菓子の自動販売機などで利用可能となったほか、今後はトンネルの通行料や展示場での各種支払い飲食店などでも採用される予定だ。

駅設置のお菓子の自動販売機(左)。右側の画面下にある黄色い枠の部分に、T-moneyを当てて決済を行う。T-moneyのチャージ機(右)。中央下にあるカード置き場にT-moneyを置き、チャージしたい金額ボタンを押してからお金を挿入する。1度に1000〜5万ウォンまでのチャージが可能だ

 これまで交通カードへのお金をチャージは、駅の窓口や特定のコンビニなどで行うものだった。しかし窓口の混み具合や特定のコンビニの有無によっては手軽に素早くチャージできないという不便さがあった。しかし今後はそうした不便もなくなりそうだ。というのも、交通カードの自動チャージ機が地下鉄駅に設置され始めているからだ。自動チャージ機は、比較的乗車率の少ない駅から次第に稼動し始めているが、乗客の多いソウル中心部の駅でもいち早い稼動が待たれている。

形態もさまざまに

 カード形式も多様化した。これまではクレジットカード型とキーホルダー型のT-moneyおよび提携クレジットカードでの決済が可能となっていたが、その後、電子辞書やMP3プレーヤーに交通カード機能が搭載されるなど、形態が多様化している。

 また2005年5月にはキャリア3社とT-moneyシステムを運営している韓国スマートカードが提携し「モバイルT-money」サービスが提供されることとなった。これは携帯電話にSIMカード大のチップを挿入することで、携帯電話をT-moneyのように利用できるシステムだ。対応携帯電話は、2005年5月で600万台あり、2005年中に1000万台の普及を目指している。

 モバイルT-moneyのチップは、各キャリアのWebサイトや代理店を通じて発行してもらえる。チップは提携している銀行ごとに数種類あり、電子マネーチャージの際はモバイルバンキングを利用する。そのためチップを利用するには、韓国スマートカードと提携した数カ所の銀行のうちの1つに口座を作り、インターネットバンキングに加入することが必要だ。

 また自宅で電子マネーのチャージができる機器も、昨年末から投入された。「T-P.O.P」はUSBを搭載した電子マネーチャージ機だ。PCを通じてチャージできるので、自宅や会社で好きな時に電子マネーをチャージできる。T-P.O.Pを利用するにはインターネットバンキングに加入する必要がある。T-P.O.PをPCのUSBポートに差し込んでから、インターネットバンキングを通じて電子マネーをチャージする仕組みだ。

モバイルT-moneyのチップ。携帯電話に搭載されているスロットに差し込んで利用する
T-P.O.Pには交通カードをはさめる程度のクリップが付いており、ここで固定しながらチャージを行う。キーホルダーのように持ち歩くこともできる
T-moneyの模様も多様化している。写真はKTFの音楽配信サービス「Dosirak」のロゴマークのT-money。コンビニエンスストア「GS25」で販売されており、交通カードを買うとDosirakの利用チケット(5000ウォン分)もおまけで付いてくる
Doosan Dongaの電子辞書「Prime AP150」(左)。韓英/英韓/国語など、6種類の辞書を内蔵。主に電子辞書が必需品の学生が重宝している。HyunwonのMP3プレーヤー「DAH-1800T」(右)。大きさは高さ70ミリ×幅30ミリ×厚み13ミリ、重さ34グラムというコンパクトさ。移動中にMP3プレーヤーで音楽を聴く人が多い韓国ならではの製品

後払い式カードを巡る問題

 クレジットカードの利用率が高い韓国では、T-money機能付きのクレジットカードも多く利用されているが、それが最悪の場合、使用中止の危機に瀕している。韓国スマートカードとSamsung/ロッテ/新韓銀行/外換銀行の4社が、昨年末に行われた再契約で決裂したためだ。

 決裂のそもそもの理由は、韓国スマートカードが再契約に関して提示した条件に対し4社が反対したことによる。韓国スマートカードはカード発行の際、管理費と手数料として1300ウォン(約150円)をカード社が負担すること、そしてT-money機能付きクレジットカードが1度でも利用された場合、1枚あたり年利用料2500ウォン(約290円)を支払うことを提示した。これに対し4社は「独占的地位を利用した契約条件」と反発し、真っ向から対立することとなった。

 1月初旬からさっそく4社と韓国スマートカードの話し合いが再開されたが、今後も管理費や手数料、年利用料などの価格などを巡りさまざまな論議が飛び交いそうだ。

 市民の足であるT-money。しかもクレジットカードの利用率が高い韓国において、それが使えなくなったとしたら致命的だ。市民の利益を第一にした、一刻も早い解決が望まれる。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう