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» 2006年03月10日 14時47分 公開

クラッシュ「I love you...」Mobile&Movie 第202回

映画の中に登場する“モバイル製品”をご紹介する「Mobile&Movie」。今回は、3部門で本年度のアカデミー賞を受賞した「クラッシュ」をご紹介。携帯が離れかけた2人の心をつなぎます。

[本田亜友子,ITmedia]
作品名クラッシュ(Crash)
監督ポール・ハギス
制作年・製作国2005年アメリカ作品


 今回ご紹介する作品は、本年度アカデミー作品賞を受賞した『クラッシュ』。舞台は、犯罪、事故、強盗と激しい衝突が繰り返される危険な街ロサンゼルス。苛立ちの中で暮らす人々の心のより所になるのは、愛する人とのふれあい。どうしようもなく声が聞きたくなった時、携帯電話を鳴らすのです。

 深夜のロサンゼルス。地方検事のリック(ブレンダン・フレイザー)は、妻のジーン(サンドラ・ブロック)を連れて、政治絡みのパーティの出席していました。さらなる出世を狙うリックは、幅広い層からの支持を集めるために必死。そんなリックを冷ややかに見ているジーン。周り中を敵に感じて、イライラする毎日。パーティの帰り道も、リックに悪態をついてしまいます。

 「食事中に電話に出てほしくないの」

 気の短い妻にリックは言葉を選びます。

 「じゃあ、携帯を預けるよ」

 リックの携帯電話に、女性秘書から四六時中連絡が入るのが気に入らないジーン。苛立ちを募らせながら車に乗り込むと、そこへ二人組みの強盗が現われて銃を突きつけられます。あっさりと車を譲るリックに、ジーンは怒り心頭。しかしリックはこの強盗事件さえ、自分の出世に利用できないかと画策している様子です。

 強盗された車の情報を聞き、周辺のパトロールを始めた警察官のライアン(マット・ディロン)とハンセン(ライアン・フィリップ)。同じ車種を見つけ、停止させますが、中に乗っていたのは黒人の裕福な夫婦でした。ハンセンは窃盗車ではないと気付き、その場から立ち去ろうとしますが、人種差別主義者のライアンは職務質問を始めます。

 夫のキャメロン(テレンス・ハワード)を車から降ろし、容疑者扱いをするライアンに、妻のクリスティン(サンディ・ニュートン)は激しく抗議します。しかし、クリスティンが怒りをぶつけるほど、ライアンは執拗にキャメロンを責めたてるのです。キャメロンは、クリスティンにおとなしくライアンの言うことを聞くようにと諭します。そんな夫のだらしない態度に失望するクリスティン。キャメロンは、これまでの人生でどうすればトラブルをうまくやりすごせるのか学んでいました。それは自尊心を捨てること。しかし、今夜の出来事はキャメロンにとってもショックでした。

 その後、リックの車を盗んだ強盗犯とキャメロンが出会うことに。ひとつの強盗事件、そしてふたつの交通事故が交錯しています。そして、さらなる試練がキャメロンとクリスティンを待ち受けていました。すべてが終わった時、キャメロンはクリスティンに携帯電話で連絡を入れ

 「I love you...」

 と、心からの気持ちを告げます。同じようにリックも弱りきったジーンに想いを伝えるのです。心細くなった時、聞きたいのは愛する人の声。激しい感情の衝突の中、誰もが知らず知らずのうちに他人と係わり合って生きていること、傷つかずには生きていけないことを実感させられる作品です。

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