レビュー
» 2006年04月17日 11時00分 公開

TVストリーミングシステム:W-ZERO3もノートPCも“どこでもTV”──米国発のロケフリもどき「Slingbox」を試す (2/3)

[平澤寿康,ITmedia]

米国の製品だが、日本でもまったく問題なく利用可能

 さて、インストールや設定作業はまったく問題なく終了した。次は本当に日本でも利用(インターネット経由での視聴)ができるのかどうかを実際に試してみよう。

 なお前述したインストールの段階で設置地域を選択したわけだが、そこに「Japan」という選択肢が用意されていた時点で日本でもほぼ大丈夫だろうと想像はしていた。案の定、あっけないほど問題は生じなかった。SlingPlayerを起動し「Watch」ボタンをクリックすると、ウインドウにTV映像が当たり前のように表示された。

photo SlingPlayerを起動すると、なんの問題もなくTV視聴が可能だった。ここまでまったく難しいことはなく、拍子抜けしてしまったほどだ。標準では、帯域に応じてビットレートを自動的に変更する「SlingStream」という機能が有効になっているが、映像ビットレートは最大1.4Mbpsまで手動指定することもできる(画像=右)

 ちなみにSlingboxの発売直後は日本のTV放送受信には対応していなかったようだが、SlingPlayerとSlingboxのファームウェアがバージョンアップされたことにより、日本のTV放送周波数も正式にサポートしたらしい。とにかく、チャンネルの自動スキャンで設定された東京地区の放送局はすべて視聴可能である。東京地区以外も問題ない……はずである。

 ここまでの過程で、予想外のトラブルなどはまったくといっていいほどない。強いて上げればソフトやマニュアル類が英語ということと、“あっけなく拍子抜け”だったことが予想外なことだろうか。ソニーのLF-PK1は「視聴までのプロセスが非常に簡単であること」が人気のポイントだが、Slingboxもほぼ同等だと言っていいだろう。

 映像はWindows Media Video 9でエンコードし配信する仕組みとなっている。映像ビットレートは(初期設定では)利用する帯域に応じて自動的に変化するようになっている。もちろん映像ビットレートを最大1.4Mbps(音声ビットレートは上限90Kbpsで映像ビットレートに応じて変化する)まで手動で設定することも可能だ。なお映像解像度の指定・変更は行えず、320×240ドット固定となる。

 視聴時の画質は解像度がやや低いこともあり、映像ビットレートを最大値の1.4Mbpsに設定した状態でもテロップの文字などがやや潰れたような感じに映る。また、動きの大きいシーンではブロックノイズも発生しがちである。とはいえテロップの文字がまったく判別できないほど潰れるわけではなく、全画面表示にしなければそういったこともそれほど感じないため、十分満足できる画質だと思う。個人的にはLF-PK1の最高画質設定時と同程度か、それ以上の画質が得られているように感じる。

photo (画像=左)映像ビットレートを1.4Mbpsに指定した場合の画像。解像度が320×240ドットなのでやや緻密さに欠け、小さな文字の判別などもやや難しいが、全体的なクオリティは悪くない
(画像=右)こちらは映像ビットレートを300kbpsに設定した場合の映像。こちらでは文字はほぼ完全に潰れ、動きの速い場面では背景なども大きく崩れてしまう傾向だ。とはいえWMV 9でエンコード/配信しているからか、300Kbpsという低いビットレートのわりには破綻の度合いは少なく、視聴が不可能というわけではない

 とはいえこれは、十分な帯域が得られる同一LAN内(しかも有線LAN接続)で視聴した場合の話だ。外出先──公衆無線LANなどを利用して視聴する場合には、自宅で利用するインターネット接続環境の上り速度とそのときの無線LAN状態によって画質が大きく左右されることになる。

 筆者宅では上り/下りともに最大100MbpsのUSEN「GyaO 光 マンションLANタイプ(実測スループットは20Mから30Mbps)」を導入していることもあり、11Mbps公衆無線LANを利用した接続でも映像がとぎれることは皆無で、非常に安定した視聴が可能だった。

 しかし上り速度の遅いADSLを利用する場合はその限りではないと予想できる。最近では、ADSLでも上り速度5Mbps以上と謳うサービスも多いが、家庭内の実測値では1Mbpsを下回る場合も少なくはない。そのような環境では、映像・音声とも最大ビットレートでの配信(常時1.49Mbps以上)は難しい。

 試しに、低速環境を想定して映像ビットレートを300Kbpsに指定(この場合の音声ビットレートは45Kbpsとなる)して視聴してみたところ、やはり映像はかなり荒れてしまう。特に動きのある部分はのっぺりと潰れる傾向で、小さな文字(字幕など)は判別できないほど崩れる。ただしまったく視聴できないわけではなく、見るに堪えないというほどではない。これは、低ビットレートでも破綻の少ない傾向にあるWMV 9を利用しているからだと思われる。この部分はLF-PK1に対する優位点といっていいかもしれない。

 ところで海外製のTVチューナー製品で日本の放送を受信する場合、ステレオ音声放送がきちんと受信できないという問題が発生する場合もある。その点本機ではステレオ放送の受信/再生も問題なかった。ただし、2カ国語放送はダメだった。映画番組などの2カ国語放送において音声を主音声/副音声が切り替えられず、左右のスピーカーから日本語と英語の音声が同時に聞こえるという状態となった。本機は完全な日本市場を想定した製品ではないため仕方がないといえるが、導入にあたっては若干注意が必要だ。

“どこでも”リモコン機能もある。しかし国内のAV機器の多くは操作できないのは残念

photo 付属する赤外線送信アダプタ。SlingPlayerを利用して、インターネット経由でもDVD/HDDレコーダーなど外部AV機器のリモコン操作が行える

 Slingboxには、DVD/HDDレコーダーや衛星放送チューナー、CATVのセットトップボックスなどを遠隔地から操作できる機能も備わっている。こちらはLF-PK1における「AVマウス」とまったく同じ機能と考えていいだろう。付属する赤外線送信アダプタを利用して、遠隔地からインターネット経由で自宅にあるAV機器を操作できるというわけだ。SlingPlayerにあらかじめ登録されている外部AV機器のメーカーと製品の型番を指定し、赤外線送信アダプタをそのAV機器の近くに設置しておけば、遠隔地からもAV機器の操作が可能となる。

 ただし、残念ながら日本で多く利用されているAV機器はほぼ登録されていない。そのためメーカー名や機種の型番を指定して設定することは現状、無理そうである。リモコンコードの学習機能も存在しない(この機能があると自宅に帰る前にエアコンを付ける、などいろいろと遊べそうだったのに)。

 とはいうが、試した限りではリモコン操作が完全にNGだったわけではない。筆者宅では家庭用DVD/HDDレコーダーである東芝「RD-H1」を使用しているが、本機にあらかじめ登録されている機器の中から「Digital Video Recorder/Toshiba」の項目にあった機器を適当に選択してみたところ、電源のオン/オフや録画済みデータの番組リスト表示、再生コントロールなどが行えた。ほかのメーカーの製品でも、登録されているリストから同一メーカーの適当なモデルを選択することで操作できる可能性が高いのではないだろうか。

photo 日本で利用されている機器は、現時点では基本的に登録されていない。しかしメーカーや機種を適当に指定するとリモコン操作が可能になる機器も存在する(画像=左)。SlingPlayerには選択した機器に応じたリモコン操作用のパネルが表示される。こちらはインターネット経由でRD-H1の録画番組リスト表示を行っているところ(画像=右)

 とはいえ地上/BSデジタルチューナーやCSデジタルチューナーなど、日本独自のAV機器はリモコンコードが登録されない限り遠隔操作は行えず、筆者宅の機器でも全滅だった。現時点でこの部分に関すると、LF-PK1に遠く及ばないといわざるをえない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう