W-ZERO3もノートPCも“どこでもTV”──米国発のロケフリもどき「Slingbox」を試すTVストリーミングシステム(1/3 ページ)

» 2006年04月17日 11時00分 公開
[平澤寿康,ITmedia]
photo 米国で販売されているSling Media「Slingbox」。購入価格は249.99 USドル(2006年4月12日現在の円換算で約2万9000円)。ちなみに日本では(まだ)販売されていない

 インターネットを利用して、いつでもどこでも好きな場所でTVを視聴できるソニーの「ロケーションフリー」シリーズが人気だ。特に、昨年発売された「ロケーションフリーベースステーション LF-PK1(レビュー参照)は、専用クライアントソフトをインストールしたPCやポータブルゲーム機「PSP」を利用して遠隔地からTV視聴が行え、しかも実売価格は3万円前後となかなか導入しやすい価格ということもあり、発売当初はどこに行っても売り切れ、2006年4月現在でも人気製品の1つとなっている。

 一方米国では、同様のコンセプトとなる製品がLF-PK1よりも一足早く、2005年6月に発売されていた。その製品とはSling Mediaというメーカーが発売する「Slingbox」だ。ブロードバンド回線を利用し、インターネットに接続できる環境があれば世界中のどこからでもPCなどを利用してTVの視聴が行える、まさしくロケーションフリー ベースステーションと同様の機能を持つ製品であり、本国ではLF-PK1以上の人気があるという。

 今回はこの「Slingbox」を実際に入手し、日本でも利用できるのか、LF-PK1と比較して使い勝手はどのように違うのかを実際に試してみることにした。

まるでシルバーインゴット。国内の製品ではマネしにくいインパクトのあるデザイン

 ではまず、Slingboxのパッケージ内容を確認していこう。

 Slingboxのパッケージには、Slingbox本体とACアダプタ、AVケーブル、赤外線送信アダプタ、LANケーブルなどに加え、Windows XP用のクライアント(視聴用)ソフトが入ったCD-ROMが同梱されている。

 写真を見てもらうと一目瞭然だが、本体はかなりインパクトのある特異な形状だ。まるで金のインゴット(色からすると銀のインゴットか)のよう。その形状から向こうのユーザーからは“チョコレート”などとも呼ばれているようだ。ただし実際にTVの周辺に置いてみると、特異な形状のわりにはそれほど違和感を感じないところが不思議である。

 本体サイズは、約270(幅)×約100(奥行き)×約41(高さ)ミリ/重量約680グラムと、それほど大きいわけではない。横置きスタイルであるため、TVの上/薄型TVの画面下/AVラックの隙間などにも問題なく設置できる。

photophoto 本体サイズは約270(幅)×約100(奥行き)×約41(高さ)ミリと、それほど大きくない。PSPと並べてみるとこのような感じだ、奥行きサイズはPSPとほぼ同じである。TVの上はもちろん、薄型TVの画面下の隙間などにも問題なく設置できる。形状は特異だが、置いてみるとそれほど違和感は感じない

 本体前面には電源とLAN接続を確認するためのLEDが備わり、中央に「Sling Media」のロゴが配置されている。また、このロゴの“n”の部分にもLEDがあり、TV映像のストリーミング配信が行われている場合に赤く光るようになっている。

 背面は電源コネクタやLAN端子、TVアンテナ入力端子、AV入出力端子が並ぶ。これからも分かるように、内蔵のアナログTVチューナーを利用したTV映像のストリーミング配信はもちろん、AV入力端子経由で接続した外部AV機器の映像も配信が可能となっている。AV入力端子にHDD/DVDレコーダーやCSチューナーなどを接続すれば、それらの映像も外出先から視聴できることになるわけだ。

photophoto 本体前面には、電源とLAN接続の状態を確認するLEDランプがある。また中央のロゴの“n”は、クライアントがアクセスしている状態で点灯する。本体背面には、電源コネクタやアンテナ接続端子などとともに、AV入出力端子、S-Videoの入出力端子、LAN端子(100BASE-TX)、赤外線リモコンアダプタ接続用コネクタなどが並ぶ

 なお、AV入力端子はS-Video×1とRCA×1の計2系統を用意するが、音声入力はRCA音声左右の1系統のみとなっている。そのため実質AV入力は1系統のみで使用することになるだろう。また、付属する赤外線送信アダプタを活用することで、外部AV機器のリモコン操作をクライアントソフト経由で(つまり外出先のPCから)制御できるようにもなっている。ちなみにAV出力端子はAV入力の映像・音声信号をパススルーさせるためのものとなる。

 このように形状こそまったく違うものの、基本的なハード面の仕様はLF-PK1に非常に近いと言っていい。とりあえずネットワーク経由でTVを観たいなら、SlingboxにTVアンテナ、LANケーブル、ACアダプタを接続するだけで準備は完了だ。

初期設定はほとんどソフト任せでOK。設定は容易だ

 Slingboxの初期設定は、視聴用のクライアントソフト「SlingPlayer」のインストール時に同時に行われる(今回はSlingMediaのWebサイトに掲載されている執筆時点での最新版v1.0.5.140を利用した)。もちろん本機は基本的に海外の製品でありSlingPlayer自体も英語版しか存在しないが、インストール作業はまったく難しくはないので安心して欲しい。

 インストーラにより、ウィザード形式で各種設定作業を行っていく。そこで必要な入力作業は、Slingboxにアクセスするためのパスワード設定と設置地域(国)の選択、入力ソースの選択ぐらいだ。そのほかの設定は、標準設定のまま「次へ」をクリックしていけばほぼ問題なく作業は完了する。

photophoto 視聴用ソフト「SlingPlayer」およびインストーラは、当然だが英語インタフェースだ。とはいえ、インストール作業・設定はほぼデフォルト設定のままで問題ない場合がほとんどで、簡単。“設置する国”欄には、日本(Japan)が存在している。つまり、日本のTV放送を受信し視聴することが可能だとこの時点で分かる(画像=右)

 この手の製品ではある程度の知識を必要とするネットワーク関連の設定についても、デフォルトでIPアドレスをDHCPで自動的に取得する設定となっている。昨今の家庭内LANを構築しているユーザーであればそのままでOKだろう。必要となるポート開放の作業も、いまどきは多くの製品が該当するUPnPに対応するルータ(筆者はバッファロー「BHR-4RV」を使用)を導入しているのであれば特別な設定はほぼ必要ない。もちろん割り当てるIPアドレスや、動画配信に利用するポート番号を意図的に固定指定することも可能である。

 またこの時点で、Sling Mediaが用意する独自のダイナミックDNSサービスへの登録も自動的に行われる(もちろん利用料は一切かからない)。このときに「Finder ID」という識別コードが自動的に割りふられ、外出先からインターネット経由で自宅のSlingboxに接続する際に利用する。接続時にSlingMediaのサーバにFinder IDを返すことで接続先のグローバルIPアドレスが判明し、自宅に設置したSlingboxにアクセスできるようになるという仕組みだ(もちろんこの過程はユーザーが特別に意識する必要はない)。

photophoto チャンネルスキャンを行うと、地上アナログのVHF/UHF電波が自動的にサーチされ、自動的に受信チャンネルが登録される。導入した筆者宅である東京地区で受信可能なチャンネルはすべて登録された(画像=左)。UPnP対応のブロードバンドルータを利用していれば、インターネット経由で外出先から接続するために必要となるポート開放などもすべて自動的に行ってくれる(画像=右)

 複数のPCにSlingPlayerをインストールして活用する場合にも、2台め以降のPCにもこのFinder IDを入力するだけでよい。このように、普通にPCが扱えるユーザーであれば誰でも簡単に利用できる。特にネットワーク関連の設定作業が楽という点は非常に好感が持てるのである。

 ちなみにSlingPlayerにはインストール数(ライセンス数)の制限も設けられていない。デスクトップPCやノートPC含めて、手持ちのPCすべてにSlingPlayerをインストールして活用することもできる(ただし複数クライアントの同時アクセスは行えない)。これも、本機を導入したくなるユーザーにとってうれしいポイントだろう。

photophoto SlingMediaが用意するダイナミックDNSサービスへの登録も自動で行われる。このとき割り振られる「Finder ID」がキモとなる。2台め以降のPCへの設定もこのIDを用いて行える(画像=左)。IPアドレスやストリーミング用のポート番号を手動指定することも可能(画像=右)
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