セイコーインスツルが目指す、「BT Watch」の可能性携帯+腕時計の未来を探る(2)(2/2 ページ)

» 2006年07月05日 21時35分 公開
[江戸川,ITmedia]
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腕時計で何をするか

photo 携帯電話にメールが着信した時の表示。電話帳データはあらかじめ転送しておくのではなくその都度読み出すのだという

 SIIが開発した実験機ならメールの着信を知ることはできる。しかしメール本文を読む機能はない。本体に搭載するメモリ容量が少ないという技術的な事情のほか、メール本文を読む必要性については十分な議論が求められるからだ。BT Watchは携帯電話と共存するシステムであって、腕時計単体に通信機能やメール作成機能を持たせる必要はない。仮にそうした機能を持たせたとしても、ここまで進化した携帯電話の機能にはやはり及ばない。

 腕時計に向かって話しかける通話機能も同様だ。時計は時計として“携帯電話をサポートする”程度の機能がちょうどよいというところだろう。携帯電話で届いたメールを読むと、腕時計側の未読表示もすぐに消えるなど、うまく連動できれば使い勝手は悪くないと想像できる。

 ところで時計と携帯電話の役割分担という点では、じつは面白いことが起きている。

 時計の世界では電波時計が標準になりつつあり、もはや時刻調整の必要はない。一方の携帯電話も、GPSや基地局の情報から正確な時刻を得られるようになってきているため、調整の必要もなくなってきている。まだ電波時計が実装できないBT Watchでは、その携帯電話側の時計情報を得て、正確な時刻を保つという仕組みになるようだ。時計自らが時を刻むのではなく、携帯電話の第3のディスプレイと化してしまうわけである。

 しかし第3のディスプレイとして機能した場合、使い勝手が著しく向上することも想定できる。カバンやポケットの中にある携帯電話の受信する電波の強さやバッテリー残量なども確認できるようになる、圏外だから移動しようとか、バッテリーが切れそうだからショップに立寄ろうという判断も即座に行えるようになるだろう。また、海外でも使える携帯電話が増えてくれば、現地時刻への切り替えを携帯電話に任せることもできる。これこそが、携帯電話と腕時計の共存する理由であり、情報機器としての腕時計の新たな可能性である。

商品化への課題

 BT Watchの登場までまだしばらく時間がかかる中で、シチズン時計が「i:VIRT」を発売したことについてはSIIも注目している。では同社で実際に商品化されるのはいつだろうか。機能面では先行しているように見受けられるし、実験機開発のニュースリリースでは、2007年の商品化を目標にするとしている。

 なお、「この商品に不可欠な機能としているのがメール通知機能。2007年になってもその機能が載せられないのであれば、商品化はできないと考えています」と述べるように、i:VIRTと同じスペックの製品を出す考えはないようだ。

photo 左から順にRuputer、WRISTOMO、BT Wacth(実験機)。別々の製品というよりは、これが進化の系譜だといえる

 実際、腕時計にBluetoothを搭載しただけの試作機も同社内でいくつも作成されており、i:VIRTほどの本体サイズ/機能を備えるものならすぐに実現できるレベルにあるという。しかし「メール通知機能は外せない」──これが同社の強い意思だ。

 メール通知機能はすでに実験機で検証され、技術的にはそれほど高いハードルではないように思われる。しかし、BT Watchがハンズフリープロファイルを拡張した規格であることが議論の的になっている。「ハンズフリープロファイルは、車の運転中などに利用することを想定しているため、メールに関しては一切サポートしないことになっている」というように、BT Watchの実現にはまだ課題が残されている。

 今後、具体的なデモンストレーションを繰り返し実施することにより業界全体がこの市場に着目するのであれば、同社の開発した実験機の持つ意味は非常に大きかったといえるようになるだろう。腕時計市場のみならず、モバイル市場に一石を投じることができるのか。BT WacthとSIIの今後に期待したい。

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