「手書き」で操作はこう変わる──開発陣に聞く「W42SA」

» 2006年09月05日 00時46分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 「W42SA」(8月28日の記事参照)は、一見すると普通のコンパクトなWIN端末。しかし、その中にはユニークな機能が搭載されている。ダイヤルキー部分に書いた手書き文字が、テキストとして入力される機能だ。

 これは「スムースタッチ」と名付けられた機能の1つ。ほかにもダイヤルキー部分をなぞってタップすることで画面のスクロールや選択操作を行う「スクロール&タップ」、手書きの図形を暗証番号の代わりに使える「スムースロック」、キーに触れるとカメラのオートフォーカスが働く「オートフォーカス」の3つが用意される。

 「これまでにない、分かりやすい操作性を実現できないか」──。スムースタッチを搭載したいきさつについて、こう説明するのは鳥取三洋電機のマルチメディアビジネスユニット モバイル通信技術部で主任企画員を務める川口弥文氏だ。スムースタッチでどんなことができるのか、どこが便利になるのかを聞いた。

Photo アダージョブラック、レガートホワイト、カプリスピンクの3色をラインアップした「W42SA」。サイズは49×99×19ミリで、末尾がすべて9になるところから「トリプル9コンパクトサイズ」と名付けている。「単に薄いだけでなく、高さや幅も平均的なWINやFOMAよりコンパクトに仕上げている」と川口氏
Photo 背面から底面につながるラインはカービングラインと呼ばれ、音の波長をイメージしたもの。ラインの背面側には、中央に並べて設置したツインスピーカーの音を左右に広げるためのスピーカーホールが設けられている
Photo 着信時には背面のWINロゴが点滅。不在着信時にもロゴが光って知らせる

手書き認識を使いやすくするために

 スムースタッチは、キーパットと基板の間に、静電シートを入れることで実現した機能。川口氏は、実装に当たって難しかった点が大きく2つあったと振り返る。

 1つは静電シートをどう固定するかだ。「静電シートをしっかり固定しないと正しい読み取りができず、だからといって両面テープのようなものでガチガチに固定してしまうと、キーのクリック感や厚みに影響が出る。試作を繰り返しながら、どんな固定の方法ならうまくいくのかを細かく検証し、いちばんいい手法を採用している」

 もう1つは認識の精度だ。手書きの入力は人によって速度が異なるため、例えば「は」と入力する途中で時間があいた場合には、「し」なのか「は」に続く途中なのかを端末側で見極めなければならない。「一画、一画の時間をどう持たせるかが課題だった。多くのモニターに試してもらいながら検証し、文字を確定するまでの時間を『速い』『普通』『遅い』の3段階から選べるようにすることで解決している」

 開いたときに出っ張りのないヒンジも、実は文字入力のしやすさに一役買っているという。「開いたときにヒンジ部分に段差がないため、十字キーやソフトキーをヒンジの近くに持ってきても打ちやすさを損なわずに済む。このキー類を上に上げたことで、ダイヤルキー部分の面積をより大きくでき、それが文字入力用のスムースタッチエリアを大きくすることにもつながっている」

Photo ヒンジ部が出っ張らないので、十字キーがヒンジ付近にあっても操作に影響しない

キーをまったく使わずに文字を入力できる──手書き入力

 手書き入力は、ひらがなとカタカナ、英数字、一部の記号の認識に対応し、手書き入力設定をオンにしておけば文字を入力するほぼすべてのシーンで手書きによる入力を行える。ジェスチャー設定をオンにすれば、上下左右のカーソル移動や改行、文字種切り替え、文字の削除なども手書きででき、PDAなどの手書きに慣れている人でも便利に使える。「文字入力時の十字キーとソフトキー、決定キー、クリアキーの操作を手書に対応させている」(川口氏)。また手書き入力をオフにしていても、文字を入力するシーンでサブメニューを押すと、手書きのオン/オフを切り替えられるので、テンキー操作が面倒な入力時のみ手書きにするという使い方も可能だ。

Photo ダイヤルキー部分に指で文字を書くと、その軌跡を判別してテキスト化する。文字を入力していくと変換候補が表示される

Photo ジェスチャーは十字キーとソフトキー、決定キー、クリアキーに対応した10種の操作が可能。決定キー、アプリキー、クリアキー、上キー、下キーの操作のみを手書きで行う「モード2」と、10の機能を手書きで行う「モード1」がある

Photo 「つ」と「っ」の書き分けや「。」「、」の入力は、エリアを分割することで分かりやすくした(左)。手書き入力がオンになっているときは、画面上のピクト行に鉛筆マークのアイコンが表示される(右)

文字入力以外のところも見てほしい

 手書き入力に注目が集まるW42SAだが、「文字入力だけをやりたくてスムースタッチを搭載したのではない」と川口氏。分かりやすく直観的なUIを模索する中で出てきたのがスムースタッチだといい、この機能が生きる利用シーンを精査するのにも時間をかけたと話す。その結果搭載されたのが「スクロール&タップ」「スムースロック」「オートフォーカス」の3つの機能だ。

 スクロール&タップは、通常は十字キーや決定キーで行うスクロールや決定操作を、指をすべらせてタップする操作に置き換えたものだ。「例えば電話帳を調べるとき、横に指をすべらせれば列が、縦にすべらせれば行がスクロールし、任意の相手が出てきたらタップで発信までできる。カレンダーも、スクロールとタップで日付を選び、そのまま手書きでスケジュールを書くところまでできる」。メールやWeb、PCサイトビューアなどのように情報量が多く、スクロールに手間がかかるようなシーンで役立つ機能だ。

Photo カレンダーで任意の日を選ぶときにも、縦横に指をすべらせればいい

 スムースロックは、ロックの解除を手書きの図形で行えるようにするもの。通常、ロックを解除するには、4〜8ケタの暗証番号を入力する必要があるが、これを図形と書き順で解除できるようにしている。「例えばハートマークを登録した場合、書き順が異なるとロックは解除されず、四角を登録した場合でも、画数や書き順が異なると解除されないなど、登録パターンは無限にある」。認識精度は、「難」と「易」の2段階から選択可能で、セキュリティをどれだけ優先するのかに応じて選べる。

Photo 図形を書けばロックを解除できる。ロック解除時の認識精度は「判定難度設定」で変更できる。「難」を選ぶとセキュリティがより高度になる

 オートフォーカスは、ダイヤルキーに触れると働き、キーを押し込むとシャッターが切れる。操作を直観的に行えるのに加え、オートフォーカスが働き、シャッターが切れるまでのタイムラグを軽減する役割も果たしている。

Photo キーに触れるだけでオートフォーカスが働き、フォーカスが合うとピピッという音がする。半押しなどの操作を行うことなくオートフォーカス機能を利用でき、そのままキーを押し込めばシャッターが切れる

 携帯電話は多機能化が進む半面、小型化も求められ、その中でどのように使いやすくするかが課題となっている。それに対する鳥取三洋の答えがスムースタッチといえるだろう。このUIがユーザーにどのように受け入れられるのかに注目したい。

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