Javaプラットフォーム1つで世界市場を開拓するAromasoft韓国携帯事情(2/2 ページ)

» 2006年09月20日 19時59分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]
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「Disney Mobile」も採用するJavaプラットフォーム

 AromasoftのJavaプラットフォームは、2001年に米Sprint PCSに採用されたのが始まりだった。この時に提供したプラットフォームの完成度の高さが評価され、Sprint PCSが他社へもAromasoftを紹介してくれた。ともにSun Microsystemsと協調関係を築き、これを機にAromasoftのJavaプラットフォームは世界的に知られるところとなった。

 現在、世界で広く採用されているmTeaを、顧客のニーズやスペックに合うようカスタマイズして提供しているのは既に述べた通りだ。中でももっとも特徴的だった企業は、との質問にAromasoftは「Disney Mobile」と答えている。

 Disney Mobileは家族向けのサービスを中心に提供するキャリアであることはよく知られている。子どもの現在位置を知ることができるロケーションサービスなどは、同社の代表的なサービスだ。また「自社の持つディズニーコンテンツを販売していきたいという考えがあり」(Aromasoft担当者)、プラットフォームもそのようなサービスの特徴に合わせる必要があったという。

 こうしたサービスの違いは当然キャリアごとに異なるものだが、これがスペックやユーザーインタフェースの違いとなり、それは最終的にAMSやJSRライブラリの違いで左右されることとなる。

 とりわけ、特定の機能に特化した付加JSRライブラリはDisney Mobileのような特徴あるサービスを提供する端末ほど必要になる。Javaプラットフォームを提供するAromasoftは、Sun MicrosystemsにJavaのライセンス料を支払う必要はあるものの、こうした独自の付加JSRライブラリを多く提供すれば、Aromasoftへのライセンス料も支払われる。ここが腕の見せどころとなるわけだ。

 ちなみにそうした意味でもC言語で開発され、ライセンス料も必要ないeXpanonは、同社にとって大きく売り込みたい製品の1つと言える。

 Aromasoftによると、Disney Mobileは「コンサルティングをしながら携帯電話のスペックなどを決めていった」ということだが、携帯電話事業が初めてということもあり、スペックが頻繁に変更されたという。Aromasoft担当者は「これがDisney Mobileの事業でもっとも苦労した点で、それまでのノウハウの積み重ねがなければやり遂げられなかったこと」と振り返る。

 Disney Mobileに端末を提供するのは、Aromasoftの固定顧客であるLG電子とPantech&Curitelだ。こうしたつながりが、Disney Mobileが韓国に大変縁が深い理由となっている。

世界市場のさらなる開拓を目指す

 Javaプラットフォームは将来、どうなっていくのだろうか。Aromasoft担当者は「Javaの利用率は国際的に高まっており、2010年のJavaプラットフォームの普及率は80%程度にまで上昇するという予想も出ている」と述べている。

 こうした状況に備えてAromasoftは、ますます世界に向けた動きを強化していきたい考えだ。すでに広く採用されているmTeaはもちろん、今後はeXpanonも同社の主力製品となるべく売り込み活動を強化していく。

 現在、同社のJavaプラットフォームを搭載した端末は海外で約65%、韓国内で約35%となっているという。それほど同社にとっては海外が重要な市場となっており、目線も常に世界へ向けられている。

 同社のエンジニアは約38人。競合他社と比べ決して多い方ではないが、Javaプラットフォームという事業1つに絞り、その分野で確実に大企業からの信頼を得ている点が「韓国内には競争者がいない」(Aromasoft担当者)というほどの実績を支える原動力ともいえる。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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