韓国はもとより、海外でも広く知られる携帯電話用のJavaプラットフォーム専門企業がある。
Aromasoftは独自のJavaプラットフォームが世界的に高く評価されている韓国の企業だ。同社が供給するJavaプラットフォームは韓国のほか、米国やヨーロッパなどの携帯電話メーカーも広く採用している。AromasoftとそのJavaプラットフォームについて、同社担当者に話を聞いた。
まずはAromasoftによる3つのJavaプラットフォームから紹介しよう。
同社の代表的な製品と言えるのが「mTea」だ。mTeaはJava MEをベースとしたプラットフォームであり、顧客のニーズに合わせてカスタマイズして供給している。
mTeaはVMである「MVM(Multiple Java VM)」、「CLDC/MIDP」、「AMS(Application Management System)」、「HAL(Hardware Abstraction Layer)」、「JSRライブラリ」から構成されている。
MVMは複数のアプリケーションを同時に実行できるようにするため、Aromasoftが開発したVMだ。2005年に開発したものだが、今年はこれをさらに高速化する目的でコンパイル方式のアプリも実行可能とした。「DAME(Dynamic Adaptive Multiple Execution Engine)」を開発した。これらMVMやDAMEを含むmTeaは顧客のニーズに合わせてカスタマイズ可能となっている。
その性能のよさは世界的に認められており、現在のところ香港のHutchison 3G、仏Orange、独T-Mobile、米Cingular Wireless、Virgin Mobile USAなど、世界20カ国以上のキャリアに供給している。
そして韓国の標準アプリプラットフォームとして現在、携帯電話への搭載が義務付けされている「WIPI」(2005年3月3日の記事参照)は、Aromasoftでも「AROMA-WIPI」として供給している。
実は韓国の標準プラットフォーム作りを目指していた2001年9月当時、これに関する規格の公募で選定されたのがAromasoftによるものだった。そのためWIPIはここでの規格を基盤として、Aromasoftが主体となり作り上げていったものである。
WIPIは現在、バージョン2.0が供給されており、そこではCLDC/MIDPが必須規格として採択されている。そのためWIPIの規格策定などを行う「KWISF(韓国無線インターネット標準化フォーラム)」と米Sun Microsystemsでは、WIPIの世界市場進出を果たすべく協力しあう提携を結んでいる。
実際には韓国の市場はまだWIPIに一本化されているわけではない。韓SK Telecomや韓KTFでは、GNEX(GVMのアップグレードバージョン)、SK-VM、そしてBREWといった既存のプラットフォームを併用しており、複数のプラットフォームが同時に搭載されるという状況がここしばらくは続きそうな展望を見せている。
ただし、元々はプラットフォームが複数あることから生じる不便さを解消するために開発されたものであるため、韓国ではあくまで一本化を目指している。また携帯電話を含むさまざまなワイヤレス通信規格の発展に、端末の性能も合わせていく必要があるため、WIPI規格は今後も発展を遂げていく予定だ。
もう1つ、Aromasoftが今後広くアピールしたいと考えているのが「eXpanon」だ。
これは携帯電話だけでなく、携帯動画プレーヤーやカーナビゲーションシステムなど様々な端末への搭載をも見込んで開発されたJavaミドルウェアプラットフォームとなる。
低レベルのソフトウェアとは独立したWAPブラウザや各種ユーティリティといったアプリケーションを開発・ポーティングして動作させることが可能となる。このほかリアルタイムアプリケーション開発機能や、モジュール構造など開発時間の短縮にも繋がる要素を用意している。
Aromasoft担当者によるとeXpanonは、「米Qualcommの“uiOne”のようなプラットフォームを目指して開発した」という。現在のところ搭載する端末は販売されていないが、「搭載に向け、メーカーと協議中」(Aromasoft担当者)とのことで今後の拡大に期待できる。
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