10月24日から始まる番号ポータビリティ(MNP:Mobile Number Portability)。携帯電話の番号はそのままで、契約しているキャリアを変えられる――ということで、自社のユーザーを失わぬよう、しかし他社のユーザーを獲得できるよう、各キャリアとも新端末や新サービスの準備に余念がない。
しかし実施日が近付くにつれて、MNPを利用したいというユーザーの興味、期待は徐々に失われつつあるようにも見受けられる。各種調査でも、MNPの利用を希望するユーザーが減少しつつあるという結果が出ている(9月14日の記事参照)。
なぜ、MNPへの期待がなくなりつつあるのだろうか。よく言われる理由は2つある。1つは“電話番号は変わらないが、メールアドレスは変わってしまうことに皆気付いたから”というものだ。今や通話に勝るとも劣らないほどメールは重要なコミュニケーション手段である。どうせメールアドレスが変わったことを通知しなくてはならないなら、電話番号が変わっても同じこと、と考える人が増えたというわけである。
もう1つの理由は、それまで長期契約によって上がってきた利用料金割引率が、キャリアを変わることによってなくなってしまうということだ。長期契約ユーザーの割引率アップの上限を、ドコモは5年から10年に(2005年7月29日の記事参照)、auは6年から11年へ引き上げた(2005年8月31日の記事参照)。これらの施策を各キャリアが始めた結果、「MNPが始まるまで我慢する」と考えていたユーザーが動くに動けなくなってしまった、と分析する人も多い。また、MNPの手続き詳細が明らかになるに従って「手数料が高い」という声も聞かれるようになってきた。
これらの理由は確かに正しい。しかし記者は、このほかにもう1つ大きな理由があるのではないかと考えている。それは、「ユーザーが契約キャリアを変わる理由を、キャリア自らが潰してしまったのではないか」というものだ。
最初にMNPの話が決まったころは、「他キャリアの端末やサービスに興味があるので、電話番号が変わらないなら使ってみたい」という声が多く聞かれた。例えばドコモユーザーが「MNPが始まったら、auに変わって着うたフルを聞いてみたい」と考える、といった具合だ。「ボーダフォンに移ればノキアの端末がある」という人もいただろう。
しかしこの1年、各キャリアの出す新サービスは、キャリアの独自性を強調するというよりも「“他所にあってうちにない”をなくす」ためのものが多かった。例えばドコモが着うたフル端末をリリースしたり(5月11日の記事参照)、auの新サービスがデコメ互換の「デコレーションメール」や、テレビ電話機能だったり、といったものだ(8月29日の記事参照)。
また、複数キャリアに端末を供給するメーカーも増えた。ドコモにしか供給していない富士通や、auにしか供給していない日立製作所やカシオ計算機といったメーカーもあるが、ほとんどの端末メーカーは複数の通信キャリアに端末を提供している。シャープに至っては携帯3キャリア(+ウィルコム)全てに端末を提供している状態だ。
サービス面でも端末面でも「どこに行ったって同じ」という状況をキャリア自身が作り出した結果、ユーザーは「別に変わらなくてもいいや」と白けてしまった……今の状況を生んだ根本的な原因は、そこにあるのではないだろうか。
もちろん、各キャリアごとの特徴はなくなってしまったわけではない。ドコモには端末の種類が多く、また数多くのアプリが利用できるという特徴がある。また、機種数で見ても使えるサービスで見ても、おサイフケータイの選択肢が広い。auの着うたフル&LISMO、またEZナビウォークは、他キャリアではまだ使える端末は少ないサービスだ(3月27日の記事参照)。ボーダフォンは携帯キャリアでは唯一、「LOVE定額」などの音声定額プランを打ち出している(2005年10月11日の記事参照)。
現時点で秋モデルや秋以降の新サービスについて詳細を明らかにしている携帯キャリアはauだけなので、ドコモやボーダフォンが驚くような独自サービスを発表する可能性もなくはない。
10月24日まではまだ1カ月以上時間があるが、今の時点でITmedia読者の皆さんはMNPに対してどのような意見を持っているのか、以下のアンケートで聞かせてほしい。
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