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» 2006年09月29日 19時19分 公開

ゆれる「本当に見えてなかったの?」Mobile&Movie 第229回

映画の中に登場する“モバイル製品”をご紹介する「Mobile&Movie」。今回ご紹介するのは、1人の女をめぐって揺れ動く兄弟の絆を描いた「ゆれる」。人の心に潜む“ゆれ”がドラマを意外な方向に導きます。【ネタバレ注意】

[本田亜友子,ITmedia]
作品名ゆれる
監督西川美和
制作年・製作国2006年日本作品


  今回ご紹介するのは、香川照之とオダギリジョーが兄と弟を演じた『ゆれる』。脚本も手掛けた、1974年生まれの女性監督・西川美和が丁寧に描く、やるせない物語に引き込まれます。以下、内容に触れますので、これから見る予定の方は注意して下さい。

 東京でカメラマンとして成功した早川猛(オダギリジョー)は、久しぶりに故郷へ戻ってきました。実家では、父(伊武雅刀)と兄の稔(香川照之)が二人で暮らしており、そこで母の法要が行なわれたのです。稼業のガソリンスタンドを継いだ稔と、勝手気ままに暮らす猛。ガンコな父にとって、猛はシャクに障る存在。きつく叱ってしまい、ケンカ腰になる父と猛を、稔はいつも仲裁していました。

 そんなやさしい兄・稔を慕う猛。早々に東京へ戻るつもりでしたが、稔が「久しぶりに遊びに出かけたい」というので、もう一日滞在することに。また、稔や猛の幼なじみである智恵子(真木よう子)が、稔と仲良くガソリンスタンドで働いているのを見かけ、何となく気になっていたのです。猛は智恵子を誘いだし、久しぶりに二人きりになって言葉を交わします。最初はギクシャクしていたものの、次第に打ち解けていく二人。智恵子は「猛と人生をやり直したい」という気持ちまで、ぶつけてきました。その重さに、思わず逃げ出す猛。

 翌日、稔は智恵子も誘って、幼い頃よく遊びに来ていた渓谷へやって来ました。なんとなく気まずい猛でしたが、智恵子も明るく振舞い、それ以上に稔ははしゃいでいました。つい、智恵子を避けるように、カメラを片手に釣り橋を渡り、渓谷の奥へ入っていく猛。夢中でシャッターを切っていると、釣り橋の方から叫ぶ声が。慌てて、釣り橋まで戻ると、稔がガタガタと震えていました。智恵子が釣り橋から転落したというのです。

 猛はショックが大きすぎて、言葉も出ない状態。警察や消防には、猛が事故について語りました。あくまで、事故だったとかばう猛。しかし、それ以来、稔の言動は少しずつ、おかしくなっていきました。猛に対して、敵意を持った言葉を発したり、ガソリンスタンドで働いていても、クレームをつけて来た客に逆上してしまったり。昔の稔がウソのように思えてくるほど。猛は、兄が自分が思っていたような人間だったのか、疑問を持つようになります。本当に事故なのか、兄が何を考えているのか、分からなくなってしまったのです。

 事故のショックが癒えないまま、東京に戻った猛に、叔父の早川修(蟹江敬三)から携帯に電話がかかってきます。叔父は弁護士で、稔を担当することになったのです。

 「猛ちゃん、もう一度聞くけど……」

 猛が裁判で証言することになり、あらためて事実を知るために叔父は尋ねます。

 「本当に見えてなかったの?」

 「見えてなかったよ」

 「へんな様子の声とか聞こえなかった?」

 「流れの音がうるさくて」

 あくまで、稔の無罪を主張する猛。しかし、猛の心は揺れ動いてゆき、稔と猛の関係も変化していきます。智恵子の事故に隠されていた真実とは、何だったのでしょう?

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