「選ばれ続けるauを目指す」──KDDIの小野寺社長

» 2006年10月20日 23時28分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 KDDIの小野寺正社長が中間決算報告の場で、同社の事業の見通しについて説明した。2007年3月期中間決算は、増収増益を達成。連結ベースの営業収益が前年同期比9.3%増の1兆6048億円となり、営業利益は前年同期比37.7%増の2295億円を計上した(10月20日の記事参照)

 増収増益に大きく貢献したのは携帯電話事業。携帯事業の営業収益は前年同期比5.7%増の1兆2834億円で、営業利益は前年同期比23.9%増の2428億円に達するなど順調に推移している。

 au携帯電話は、累計シェアが9月末時点で28.1%に達し、上期の純増シェアは47.7%でトップを獲得。WINの契約者も9月末時点で1077万契約となり、うち79%がパケット定額プランに加入しているという。またau携帯電話の検索サービスとして提供開始したGoogle検索の効果も出ており、検索の利用が増えるとともに、Google Adwordsの効果で広告売上が3割増を記録したという。

 番号ポータビリティ(MNP)に向けた施策としては、秋冬の主力製品となる14モデルを他キャリアにさきがけて発表し、順次市場への投入を開始している。サービスについても“他キャリアにあってauにない”サービスの穴を埋めるとともに、上り最大1.8Mbpsを実現するEV-DO Rev.Aや、BCMCS技術を採用したマルチキャストシステムによるプッシュ配信サービスを開始するなど、auならではのインフラを生かしたサービスを展開している。小野寺社長は、こうした施策により「従来顧客の維持と新規顧客獲得の両面で選ばれ続けるauを目指す」とした。

Photo WINのARPUはWINユーザーの増加に伴いミドルエンドのユーザーが増えたことから下がり気味だが、全体で見ると、1XからWINにシフトすると必ずARPUが上がるので全体のARPUを押し下げる要因にはならないという。ただ無期限繰り越しやMY割などの割引の浸透率が高まっているので、その分はARPUを押し下げる要因になるとした。音声の利用は「少し減ったかなと思う」(小野寺氏)

番号ポータビリティ、事前予約は予想通り

 開始が目前に迫った番号ポータビリティについて小野寺社長は「当社にとってチャンス。(早い時期に端末やサービスを発表したこともあり)大きな期待を寄せている」とし、MNPで動くと見られる若者層だけでなく、ビジネスマンや企業ユーザーにもぜひ来ていただきたい」とアピールした。

 MNPの事前予約の状況については「想定通り」というにとどめ、具体的な予約数は明かさなかった。MNPを利用するにしても、ユーザーの立場から考えると、「年割やMY割を途中で辞めると違約金が発生するため、契約期間が終わったところで変えるのが当然」(小野寺社長)といった要素もあり、「番号ポータビリティはずっと続く制度。短期的な数をいっても意味がない」(同)と話す。

 ただし番号ポータビリティの効果については当然のことながら前向きに捉えている。「たとえ携帯契約者の10%が動いても、その数は1年で約900万、2年で450万。5%しか動かなくても2年で200万以上になる。auの上期の純増が約100万前後で、通期が約200万だとすると、それに比べていかに大きい流動数なのかが分かる。だからこそ期待しているし、がんばっている」(小野寺社長)

端末ラインアップの増加傾向は避けられない

 2006年は番号ポータビリティの導入が決まったこともあり、各キャリアが例年にない数の端末を投入しているが、この傾向は来年以降も続くと小野寺社長は予測する。「ユーザーの要望の多様化は間違いなく、今後も機種数が増加傾向に行くのは当然だと思っている」(小野寺社長)。そうなると端末価格の高騰が懸念されるが、KDDIはメーカーとともにコスト削減に務めると話す。

 それが可能であることを示す例として挙げるのが、KDDI Common Platform(KCP)の採用による開発コストの低減だ(7月21日の記事参照)。高機能なWINの端末構成比が高まっているにもかかわらず、コストは下がっており、「3月期を100としたときの単価でいうと1割くらい下がっている」という。

 2007年には共通化領域を拡大した新たな統合プラットフォームを構築する計画で、メーカーと協力しながら高機能化とコスト削減の両立を目指すとした。「メーカーにも納入価格を下げてほしいとお願いしているが、それ以上に重要なのが、KCPや新統合プラットフォームのような仕組みをメーカーと一緒に導入することでメーカー自身のコストを下げること。新プラットフォームができれば従来以上に機種を増やしても、1機種当たりの単価が大きく上がることはない」(同)

 端末の販促費も通期の3万7000円から大きく変えるつもりはないという。「収益面から見れば、販促費を下げることで利益面でいい影響が出るが、他社との競争もあるので、当社が率先してコミッションを下げて端末価格を上げることはない」(同)

 なおソフトバンクモバイルが導入した割賦販売の「スーパーボーナス」については、「ビジネスモデルだけを変えても、販売チャネルが大きく変わらない限り、販売店に影響を与えるだけ」という見方を示した。「こうした施策で混乱するのは販売の現場。販売店は重要なパートナーであり、パートナーとWin-Winの関係を築けないといい結果にならない」(同)

音楽は明らかに先を行っている──“auならでは”の強みを生かす

 番号ポータビリティの開始に向けて各キャリアは、“サービスの穴を埋めるサービス”の提供に注力している。ドコモがauの強みであった“音楽”や“GPS”を「903i」シリーズでキャッチアップし、KDDIもHTMLメール機能やニュースのプッシュ配信、テレビ電話など、ドコモと同様の機能を提供するなど、サービスや機能の明確な差が見えにくくなっている。

 こうした中、KDDIは先行したサービスで優位性を保つとしている。「音楽は、明らかに先を行っている。秋冬モデルではヤマハの協力を得て、機種ごとに最適化を図って音質を上げるなどの施策を打っており、心配していない」(同)。

 またワンセグについても他社より積極的に取り組んでいると話す。対応端末のラインアップはもとより、放送と通信の融合に向けたビジネスモデル作りにも積極的に取り組んでおり、既にワンセグの有効利用を検討して制作した音楽番組を、日本テレビと組んで提供することが決まっている。

 またワンセグが一番有効なのは災害時だとし、ユーザーの要望が強ければ標準搭載の可能性もあるとした。「災害が起こったときに、まず放送で状況を確認した上で(必要なら)通信に移行すればいい。チップセットも第2世代になって消費電力も減りコストも下がっているので、標準搭載の可能性は十分ある」(同)。

端末の数や色数は増やせばいいというものではない

 秋冬モデルでは、ソフトバンクが13機種54色の端末を発表し、ドコモも年度内に20機種以上の端末を投入するなど、各キャリアが機種数や色数を増やす傾向にある。また、ソフトバンク、ドコモともにユーザーからのニーズが高いスリムケータイを多数ラインアップしている。

 こうした傾向に対して小野寺社長は「単純に機種数や色数を増やせばいいということではない。基本的な性能、基本的な色を揃えればいい」とコメントしている。

 販売総数がある程度見えている中で、機種数や色数だけがどんどん増えれば、1機種当たりの数は減ることになり、それがメーカーの端末開発の負担になるという。「我々は色数は少ないかもしれないが、ターゲットを決めて“こんなユーザー向けにはこんな色”というようにカテゴリーを分け、それに適した端末を提供しようと考えている」(同)

 薄型端末については「ユーザーが普通に使って問題ない品質を保証した上で薄さを追求する」といい、冬モデルの「W44K」を例に挙げた。「京セラのW44Kは、強化ガラスを使って普通の端末より強度を上げて提供する。ただ薄ければいいというのではなく、きっちりマーケティングした上で出す」(同)

 なお、他キャリアにあってauにはまだない、スマートフォンの投入については、「スマートフォンはニッチなマーケットであり、MNPの中ではニッチよりメインストリームを狙ってきた」と説明。ただニーズがあることは認識しており、開発の検討は進めているとした。

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