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» 2006年12月04日 15時32分 公開

IEEE802.20の標準化作業、“中立的”な新体制の下で再開

参加メンバーからのクレームなどにより、一時活動停止に追い込まれていたIEEE802.20ワーキンググループの活動が、2006年11月13日に再開された。今後802.20がどうなるのかは、12月4日の週に結論が下されるという。

[園部修,ITmedia]

 2006年11月13日、IEEE-SA(Standards Association)の判断により停止されていたIEEE802.20(以下802.20)ワーキンググループの活動が再開された。

 同ワーキンググループは、米Intelや米Motorolaから提出されたクレームなどにより混乱が生じ、2006年6月16日に「あまりにも多くの議論を巻き起こしている」「議事の進行が透明性に欠け、独占的に進められているている」といったことを理由に活動停止が言い渡されていた(5月15日の記事参照)

 再開された802.20ワーキンググループの様子を、クアルコムジャパンの標準化担当部長、石田和人氏に聞いた。

新執行部の下、出席者が所属企業と参加目的を表明

 活動再開にあたり802.20ワーキンググループでは、まず旧執行部(リーダーシップ)を解散し、IEEE-SA主導の下で、802.20陣営にも802.16陣営にも属さない中立的なメンバーによる執行部を構成。中立性を保つための監視機関も設置した。これは9月にIEEE-SA側から提示されていた、事態収拾のための解決案にのっとったものだ。

 新しい議長に選任されたのは、アーニー・グリーンスパン氏。同氏は米Aroscoというテクニカルエンジニアリングやマーケティングサポートを行っている企業の代表者だ。

 「通常、IEEEで議長を務めるような実力者は、たいていどこかの会社のコンサルタントなどに就任していますが、グリーンスパン氏は802.20陣営の企業とも、802.16陣営の企業とも関係はなく、非常に中立的な立場にある人物です」(石田氏)

 また今回の会合から、802.20ワーキンググループの出席者は、自らが所属する企業を明確にすることが義務づけられたため、初日の多くの時間は自己紹介にあてられた。200人ほどの出席者のうち、約半数の100人強が投票権を持つメンバー(Voting Member)で、傍聴メンバーや新規参加者も半数近くいた。

 この自己紹介では、コンサルタントの場合スポンサー名も明らかにする必要があったため、米Intelや韓Samsungといった、明らかに802.16陣営に属するメンバーが多数参加していることも分かった。

 IEEEでは、出席者1人に1票の投票権が与えらる投票制度を採用しており、会議に2回続けて出席すると、3回目から1票を投じる権利が与えられる。2005年末以降、ワーキンググループの出席者が3倍ほどに急増したのは、Intel、米Motorola、Samsungなど、802.16e陣営の支持者達が集まったためだと言われていたが、実際その通りであることがはっきりした。

会合は論点の整理と議論に終始

 構成員の立場や目的が明かされたところで、ワーキンググループでは2006年6月の時点で80%以上の賛成を得て承認された要求仕様をそのまま802.20の技術使用として採用するべきなのかどうか、当時の技術の評価方法と評価基準は適正なものだったか、投票の手順は公正だったか、技術システムの選択基準は公平だったか、といった点を中心に議論が行なわれた。

 議論のプロセスの中では、問題を指摘する声、養護する声などさまざまな意見が挙がったという。一部の議題については結果に拘束力のない予備投票(straw poll)も行われたが、その結果は議題によって変動はあるものの、おおむね賛成40、反対40、棄権20といった割合だった。

 ちなみに予備投票では1人1人が名前を呼ばれ、前面のスクリーンにプロジェクターで氏名が表示された状態で賛成か反対か、棄権かを表明し、意見を述べたため、誰がどう投票したかは一目瞭然。「明確に802.20の標準化に対して反対というか、抵抗している人たちがいました」と石田氏は話す。

 802.20を前向きに進めたい陣営と標準化に対して抵抗勢力となっている陣営との間で、微妙なかじ取りが要求される会合だったが、石田氏は「議論は非常に中立的かつ慎重に行われた」と振り返った。

 なお会合では各種の議論は行われたものの、その場で結論は一切下されなかった。議論の内容と出された各種意見は、議長がリポートにまとめ、IEEE-SAに提出することになっている。IEEE-SAはこのリポートをもとに、802.20をどうするか判断する。

 この判断は12月4日の週に下される予定で、決定内容は翌週(15日頃)までに明らかになる見通しだ。ここで、今まで進めてきた標準化作業のどのレベルまで戻ることになるのかがはっきりする。

方向性が決まる次回会合は1月15日からロンドンで開催

 IEEEは標準化を進める場であるにもかかわらず、標準化そのものを妨げる動きがあり、前に進めなくなっているという802.20のワーキンググループ。「技術的、あるいはマーケティング的な面で、建設的な提案があればそれについて検討したり、議論したりもできるが、反対している人たちから出てくるのは批判的なコメントばかり」と石田氏は嘆く。

 以前にも、IEEEでは数の戦い(多数決のような状態)になったりして、結局議論がまとまらず、標準化に至らなかった技術はいくつもあった。ただ、それらと今回802.20が直面している問題とが大きく異なるのは、今回は2つの技術間の争いではなく、標準化そのものの賛成と反対で争っている点だ。石田氏は「標準化そのものは妨げるべきではない。最終的な判断は標準化をした後でユーザーに委ねるべきで、“標準化しない”という選択肢はあまりいいことだとは思えません」と、802.20に対して批判的な人たちの行動に不快感を示す。

 「802.20は、固定通信の制約や影響を一切受けない形で高速な無線通信を行う、という明確な目的のある通信規格です。もしそれが標準化されないということになると、大きな問題だと思います。IEEEの限界といえるかもしれません」(石田氏)

 次回の会合は1月15日からロンドンで開催される。残された時間はあとわずかしかない。しかしQUALCOMMは、まったく悲観はしていないという。

 「現状ではまだ不明確な点も多いので、慎重に事を進める必要はあります。そのため、1月の次回会合で何が起こってもいいような準備はしています。ただ、我々は基本的にはポジティブに考えています。これをプロプライエタリな技術としてQUALCOMMだけで実用化しようという考えは持っていません」(石田氏)

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