2006年は空前の端末ラッシュ──その傾向と問題点:2006年の携帯業界を振り返る(1)(2/4 ページ)

» 2006年12月28日 23時59分 公開
[聞き手:房野麻子,ITmedia]

難しくなっている“メーカーごとの差別化”

ITmedia 限られたリソースの中で、1機種で何十万台と売るのではなく、ターゲットユーザーを細かなセグメントに分けて、ちょっとずつ売れる端末をたくさん出す、という傾向も感じました。

石川 今後はさらに加速しそうですね。

神尾 それもあるから、auはOSだけじゃなくて、ソフトウェアまで基本的な部分は共有化しています(7月21日の記事参照)。彼らは低コストで端末を作るというのをポリシーにしているので、今の状態のまま低コストで端末を作り続けて、しかも多様化するには、そこまでやらなくてはならない、ということですね。OSを汎用化しましょう、とか言っているレベルではなくなっているんです。今まではBREWの上で各社が独自で作っているという状態で、OSまでは統一されていましたが、今後はさらにその上のソフトウェア、例えばメール機能だったりテレビ機能だったり、基本的なものは共通化されていきます。実際にワンセグも、au端末は「EZテレビ」で全部一緒じゃないですか。

ITmedia 見た目の部分だけがちょっと変わる、という感じですね。

石川 端末メーカーとしては差別化をしにくくなるから、やりにくい部分があるとは聞いています。確かにコスト面ではいいかもしれないけれど、個性を出しにくい。

神尾 コスト削減や生産性という意味では(共通化は)正しい。でも、例えばEZテレビで、この仕様は嫌だ、使いにくい、と思っても、そのソフトが変わらない限りどのメーカーのものも全部一緒なので、ユーザーは逃げ場がなくなるんですよね。

 UIを統一するがゆえに、損なわれる部分と得られる部分があります。得られる部分とは、どのメーカーの端末を使っても基本的な使い方が一緒なので、ユーザーが混乱しないこと。確かにこれには一理あって、ドコモの場合、メーカーが変わると操作系がものすごく変わるので使いにくいと感じることがありますが、auではメーカーを変えてもあまり迷うことがない。一方で、メーカーの個性が消えるし、メーカーが創意工夫する場所、UIを使いやすくできる要素が減ってしまう。これは損なわれる部分ですよね。ただ、今のauの方針は、端末の価格を上げないで今後も競争していくことですから、共通化の推進は必然的にやらざるを得ないでしょうね。

石川 シャープの「911SH」が搭載する「おなじみ操作」機能では、他メーカーのものに似せてUIを変えられるじゃないですか。あれをやられちゃうと、メーカーのアイデンティティがなくなってしまう。メーカーのオリジナルな使いやすさだったものも、911SHを買えばどれでも使えてしまいますから。今後、各メーカーの使いやすさ、例えば“N”の使いやすさ、“P”の使いやすさ、みたいなものは、どうなっちゃうの? という危惧があります。

神尾 そういう意味では、メーカーは特徴的な機構を持っていないとダメなんですよ。先にも挙げましたが、シャープのサイクロイド液晶だったり、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズが「W44S」で採用したデュアルオープンスタイルだったり、あるいは三菱のワンプッシュスライド、パナソニック モバイルコミュニケーションズのワンプッシュオープンみたいなものが必要です。一番辛いのはオーソドックスな折りたたみを作っている“N”なんですよね。UIや中の機能に差がなくなってきたときに、何をもって「これはNだ」とするのか、というものがなくなってしまったので。

ITmedia それを踏まえて、メーカーに期待したいことは?

神尾 ある意味、もの作りに回帰していると思います。サイクロイドがいい例ですが、ハードウェア的な特徴を出せれば、それはブランドになるんですよ。ソフトウェアの差が出にくくなった分、本当の表層のUIと、あとは機構が骨太の特徴になりますよね。やっぱり、サイクロイドはインパクトがあった。使いやすいかどうかは別ですが、ソニー・エリクソンのデュアルオープンスタイルもそう。

石川 富士通の「ヨコモーション」は……。

ITmedia あれもワンセグを見据えた動きなのかな、と思いますが。

神尾 ヨコモーションは、もっとサイズが薄かったらインパクトがあったと思います。

石川 まだ中途半端なんですよね。ただ横になるだけではダメで、うまくリンクしていないと使いにくい。

神尾 横画面の提案があったことは、今年のトピックスの1つですよね。横画面の活用は、来年のキーワードになるでしょう。

 

ITmedia PC向けのコンテンツは基本的に横画面で見ることを想定されていますし、フルブラウザが今後広まっていくことを考えると、横でも縦でも使えるということは重要になりそうです。

神尾 カメラも縦長より横長の方が撮りやすくなっています。世の中の流れがその方向になっていますね。ナビゲーションにしたって、カーナビは横長画面です。縦長がいいのは、実は昔からある携帯向けのブラウザ、文字中心の画面だけなんですよ。

サブディスプレイの意味が変わってきた

ITmedia 画面の話が出たところで、もう1つ。今年はサブディスプレイが復権してきたかなと思うのですが、どうですか?

神尾 復権しているかな……私はむしろ落ち目かな、と思っているんですが。

石川 小さいサブディスプレイが一般的になってきた、という感じですね。とりあえず載っています、というような。

ITmedia ただ、一時期回転二軸スタイルが増えた頃は、サブディスプレイはなくなってしまうのかな、と思ったこともあったのですが……。

神尾 ちょっと変わりましたね。つまり、今までのように、カラーで全部表示しましょう、ではなくなりました。本当に必要な情報だけを表示しましょう、というサブディスプレイは確かに復権したと思います。その意味で、私が一番評価しているのはN702iDのサブディスプレイ。デザイン的に処理した上に、「iチャネル」が流れるという機能がマッチしていて良かった。テキスト情報をテロップで流すというのは、新しかったし面白かった。今年はauでも「EZニュースフラッシュ」を始めましたしね。

ITmedia 昔と同じ意味でのサブディスプレイではないということですね。

神尾 むしろ、普通の液晶で窓のように四角く切ったようなものは、デザイン的にちょっと古い印象になっていると思います。どれだけ効果的に表示できるか、ってところが重要なんじゃないでしょうか。

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