これぞ“UIレボリューション”――2画面ケータイ「D800iDS」の持つ可能性「D800iDS」開発陣インタビュー(2/3 ページ)

» 2007年02月08日 19時12分 公開
[遠藤学,ITmedia]

3つのモードが担う役割

 元からあった3キー、6キーに加え、10キーの3つの操作モードを用意したD800iDS。その狙いを吉井氏は次にように話す。「電話とメールだけでよいという人には3キー、普段よく使う機能だけをスムーズに使いたいという人には6キーがある。そこにキー配置は従来の端末と同じで、もっと新しい楽しみ(タッチパネルを使ったこれまでにない操作感)が欲しい人もいると考え、タッチパネルでの10キーを導入した」(吉井氏)

 従来の端末と変わらない操作性を保ちながら、新たな可能性を見せるべく導入を決めた10キーではあったが、それに対する開発スタッフの意見は分かれたという。「10キーは最後まで悩んでできたモード。使いやすい携帯と新しい携帯のどちらを目指すのか? 開発スタッフの中でもこの意識合わせはできていなかった。使いやすさを訴求したいという人は10キーはいらないと言い、新しさを訴求する人は、ターゲットがぼやけるかもしれないけど入れたいと言った。意見は本当にたくさんあったが、最終的には入れることになった」(吉田氏)

 「らくらくホンは使用者とは別の人が設定を変更することが多い。ただ、らくらくホンのメニュー構成は従来の端末とは異なっていて、慣れていない人だと使いにくいという話も聞く。普段から使う人であれば問題ないが、たまに触って設定を変更するだけの人にも使いやすいモードがあったほうがいい。そうなった時にモードを切り替えられて、さらに10キーモードがあるのは便利だと思った」(浅野氏)

 らくらくホンと同様、主に携帯初心者の利用が想定される3キーモードは、浅野氏の言う通り、実際に使う人とは別の人が設定を変更することが考えられる。そうなった時、10キーモードがあれば設定を変える人にとっても“使いやすく”、普段から10キーモードを使う人にとっては“新しい”操作感覚を提供できる。スタッフ間でも意見が分かれた2つの要素ではあるが、10キーモードを入れたからこそどちらにも訴求できる端末に仕上がった。

photophoto 10キーモード(左)時にタッチパネルディスプレイ上にある十字キーを押すと、三菱電機製端末ではおなじみの「スピードセレクター」をタッチパネル上に再現したものが現れる(右)。スピードセレクターと聞くと、しっかりと回されなければいけないイメージがあるが、吉井氏いわく「円にはなっているが、スピードセレクターの一部分を触ればその場で小さく回しても反応する。こちょこちょ操作でも問題ない」。“タッチパネルとはこういうことか”と、スタッフの間でも驚きの声が上がったという

 無事に3つの操作モードを搭載したD800iDSだが、それぞれのモードで担う役割が異なるのも事実。これに伴い、モードごとに使える機能と使えない機能ができた(表参照)。特に顕著なのは、iモードが使えない3キーモードだが、機能を絞った理由を吉田氏は次のように話す。

 「3キーモードはシンプルにしすぎたと思う面はあるが、どこまでなら機能を削減しても使いやすいと感じてもらえるのかに挑戦した。木口さんが『らくらくホン シンプル(D880SS)』を担当していたので、その時のノウハウを生かしながら、“iモードはなくてもいいんじゃないか”とか、“その分メールはできたほうがいい”など議論を重ねて機能を詰めていった。1つ目のモデルを出したことでユーザーからのフィードバックが来る。機能を絞った分だけ、今後は機能を足していけるようになる」(吉田氏)

モードによるサービス/機能対応比較表
  3キーモード 6キーモード 10キーモード
着もじ △(電話着信のみ) △(電話着信のみ)
iモード
iアプリ
iチャネル △(テロップ表示のみ)
デコメール △(閲覧のみ) △(閲覧のみ) △(閲覧のみ)
おまかせロック
電話帳お預かりサービス
マルチナンバー △(着信履歴・リダイヤルは非表示) △(着信履歴・リダイヤルは非表示)
フルブラウザ △(サイト表示中の切替のみ)
赤外線通信
FOMAプラスエリア
自動時刻補正
圏内自動送信メール
明瞭トーク
※どのモードも対応していないサービス/機能は除く。

 今後は機能を追加していけると吉田氏は話すが、2画面ケータイの第1弾となるD800iDSには、ケータイのトレンドともいえるミュージックプレーヤーや外部メモリスロット、FeliCaなどの機能が搭載されていない。90xi、70xiシリーズの住み分けとも捉えられるが、やはり残念な部分ではある。

 「外部メモリに対応しなかったのは、薄くすることが第一にあったから。店頭に並んでいる時に、いかにほかの端末と同じ大きさに合わせるかを優先したためで、その関係からなくなってしまった機能もある」(吉田氏)

 「製品版の21ミリという厚みを維持しようとすると、外部メモリスロットを入れる余裕はなかった。ミュージックプレーヤー機能を持たせるにしても、専用のハードウェアを搭載しないと電池の減りが激しく、半日も持たなくなる。これはあまり実用的ではないと判断した」(木口氏)

 可能性が無限にあるタッチパネルだけに、中途半端なものを提供したくなかったと吉井氏も続ける。

 「ミュージックプレーヤーは、普通のテンキーで操作するよりも専用のユーザーインタフェースを設けたほうが使いやすくなる。シーンに応じた最適なキーを表示して、タッチパネルで選んでもらう。今回は実現できなかったが、ミュージックプレーヤーを載せるならそういう形で提供したい」(吉井氏)

 このほかD800iDSの特徴として、モード切り替え時に再起動がかかることが挙げられる。最初に使うモードを決めた後は、切り替えることはほとんどないという前提だったそうだが、「技術的に言えば、設定を真っ白な状態に戻して立ち上げなおしたいということがあった」と木口氏。端末の中身が持っている値と実際の状態が異なると、最悪の場合、タッチパネルの反応がズレる可能性もあることから、再起動をかけることになったという。

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