これぞ“UIレボリューション”――2画面ケータイ「D800iDS」の持つ可能性「D800iDS」開発陣インタビュー(1/3 ページ)

» 2007年02月08日 19時12分 公開
[遠藤学,ITmedia]
photo D800iDS

 NTTドコモが2月9日に発売する「D800iDS」は、メインディスプレイとは別に、ダイヤルキー部分にタッチパネルディスプレイを搭載した2画面ケータイだ。ドコモと三菱電機が共同開発した端末で、CEATEC JAPAN 2005には「2画面ユニバーサルデザイン携帯」として試作機(以下、CEATEC版)を参考出展していた(2005年10月の記事参照)。

 文字入力はタッチパネルならではの「手書き入力」に加え、「2タッチ入力」「5タッチ入力」に対応。タッチパネルは自由にキーの数や機能を変更できることを生かし、最低限のメニューを表示する「3キーモード」、標準的な機能を表示する「6キーモード」、従来の携帯とほぼ同様に操作できる「10キーモード」という3つの操作モードを用意した。

 CEATEC版には10キーモードがなく、またタッチパネルディスプレイの下に搭載する3つのボタンの役割が製品版とは異なるなど、両者には違いも多い。CEATEC版からどのような進化を遂げ、製品版はどのようなものに仕上がったのか。D800iDS開発チームに聞いた。


photo (左から)NTTドコモ プロダクト部 第三商品企画担当 浅野径子氏、NTTドコモ プロダクト部 第三商品企画担当 課長 永田隆二氏、NTTドコモ プロダクト部 第三商品企画担当 吉田岳人氏、三菱電機 開発部 技術開発課 先行技術企画担当 課長 冨森建司氏、三菱電機 NTT事業部 NTT第三部 第一課 吉井雅和氏、三菱電機 商品開発部 機種第九課長 木口栄氏

型番の由来は“あのDS”ではない

 D800iDSの“DS”という型番を聞いた時、多くの人は任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」を想像したことだろう。2画面かつタッチパネルという端末構成は、昨年ブレイクしたゲーム機を連想する人がいても不思議ではない。

 D800iDSはニンテンドーDSを意識した端末なのか? ドコモ プロダクト部の吉田氏はいろいろ想像が膨らむネーミングだが、それを意識したわけではないと話す。「D800iDSのDSは“Direct&Smooth”からきている。Directは駅の券売機や銀行のATMなどのように、タッチパネルに出てきたものをタッチしてすぐに機能を実行できるということを指す。これに加え、タッチパネルでの操作は十字キーでカーソルを移動するというまどろっこしさも解消する。これがSmooth。2つを合わせてDSと名付けた」(吉田氏)

 CEATEC版が発表されたのは2005年9月末。ニンテンドーDSのブレイク前である(ブームの火付け役となった「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」の発売は2005年12月末)。注目を集めた時期は近いものの、便乗して作ったような単純なものではないのだ。

 三菱電機 開発部の冨森建司氏は、2画面ケータイ自体は2003年のCeBITで、スライドタイプのコンセプトモデルをすでに展示していたと振り返る。「2画面にしたいというコンセプトはかなり前からあった。研究開発を2002年末ぐらいから始め、CeBIT 2003に出展している。ただその時は、いろいろな可能性の中から手探り状態で研究を行っていた」

 その後、ドコモの取り組み――すべての人が使いやすい商品/サービスを追求するというユニバーサルデザインの考え方に基づいた活動「ドコモ・ハーティスタイル」とマッチしたことから、両社で共同開発することが決定。製品化への道が開けた。ちなみに、共同開発決定から1月16日の製品版発表までにかかった期間は、三菱電機 NTT事業部の吉井雅和氏いわく「(携帯の開発期間としては異例の長さの)実に2年4カ月」だという。

 「タッチパネルなので、キーの数やデザインはいくらでも変えられる。可能性は無限大にある。従来の操作体系はメーカー側から提供しているものだが、(D800iDSの3つの操作モードのように)タッチパネルならユーザーの操作性をより考えたものを提供できる。ドコモさんに説明する時には“UIレボリューション”って言ってました(笑)」(吉井氏)

 「2画面ユニバーサルデザイン携帯電話の試作機として発表したのがCETAC版だったが、発表後の反響は“それだけにするのはもったいない”というものが多かった。ミュージックプレーヤーのリモコンを下に表示できるし、2画面を使った新しいアプリも作れるだろうと。いろんな可能性があるのだから、ユニバーサルデザインに絞ってしまうのはもったいないという声が多数寄せられた。その部分を反映しつつ、使いやすくしていったのが製品版になる」(吉田氏)

 CETAC版のノウハウを生かしつつ、ターゲットをより一般向けにした製品版。CETAC版は3キーモードと6キーモードのみだったが、より広い層に受け入れられる端末作りを目指したことで、従来の端末と遜色ない操作ができる10キーモードが生まれたという。また、CETAC版では「手書」「切替」「電源」の役割を担っていたタッチパネル下の3つのボタンは、製品版で「発話/文字」「クリア/マナー」「終話/電源」に変更。電源をタッチパネル上に再現するのは現在の技術では難しく、また1つのボタンだけにすると浮いてしまうことから、「十字キーとダイヤルキーの間にあるキーを全部タッチパネル下に移動した」(吉田氏)という。

 三菱電機独自の研究期間を含めれば約4年の歳月をかけ、さまざまな変更を重ねて作られたD800iDSだが、最初から不変の開発コンセプトがある。それが2画面であること。形こそCEATEC出展前のスライド型から折りたたみ型へと変化したものの、ドコモと共同開発する中で薄さや2画面ならではの使いやすさに磨きをかけて、製品版へとつなげていった。

 「それぞれを比べてみる(写真参照)と分かるが、どんどん薄くなっている。タッチパネルディスプレイを使っていると言っても、薄型化が重視されている現状で厚くなってしまうのは厳しい。商品開発部のスタッフに頑張ってもらい、ほかの端末と大差ない厚さ21ミリが実現できた」(吉井氏)

photo (左から)2007年1月(製品版)、2005年10月(CETAC版)、2005年3月(コンセプトモデル)。ムーバベースの「端末が閉じない(笑)」(冨森氏)コンセプトモデルは、利用イメージや機能を探る検証用として作ったという

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