最強女性チームが磨き上げた“オンナゴコロ”の神髄開発チームに聞く「W51P」(2/3 ページ)

» 2007年03月01日 19時27分 公開
[岩城俊介,ITmedia]

“オンナゴコロ”の追求と理解

 大勢が出席する大会議室において、男性は北山氏ひとりという状況で会議も行われた。

 「そんな中で生き残っていく(笑)ためには、“オンナゴコロ”を少しでも理解する──ここから始めました。数ある女性誌を隅々まで熟読し、デパートの化粧品コーナーでコンパクトを買いあさり、ヨガスクールなどの“オケイコ”にも行きました。自分が女性だったらこういうものがほしい──と、まず、なりきる努力をしました」(北山氏)

 「北山さんは、女性が中心の開発チーム内で、女性と普通におしゃべりできるんです。普通の会話でなく“おしゃべり”ですよ(笑)」(大西氏)

 ……おそらく多いであろう男性読者目線に置き換えると「90ナノプロセスで3GHzのクロックを実現したAthlon 64 X2 6000。ピーク時の消費電力値が125ワットと高くなったね。でも3DベンチマークではCore2 Duoのトップグレードに肩を並べているよ」などと話すようなものか。どうでもいいが。

 「デパートの化粧品コーナーに行く先々で感じたのが、化粧品コーナーの販売員さんの存在感。もしかして本機の目指す理想に近い女性像なのかもしれない、ということが見えてきました」(北山氏)

 「化粧品コーナーの販売員さんは女性から見ても憧れの存在です」(大西氏)

 そのような人に「どんな携帯使っていますか」と問うと、いわゆる今までのファンシーな“女性向け”ではなく「オトナとして恥ずかしくない」と自分が感じたものを、ある程度“仕方なく”所持していることが多かった。

 女性向けとなると、キュービックジルコニア入りとか、ハートマーク、丸めの形状にするなどとやや簡単に考えがちだ。もちろんこれはこれでニーズがある。しかしW51Pでは、逆にそれを避けようという考えで開発が進められていった。

 「インタビューや調査を含めたデザインワークをしていく中で、“仕事で出しても恥ずかしくない。でもカワイイ”という2面性を持つイメージが形になってきました。これらは実は相反することなのですが、これを表現できるならきっと、という思いが固まりました」(北山氏)

男性開発陣の苦悩(?)と努力

 多くを女性が占めるW51Pの開発チーム。しかし技術・設計陣は男性が多い。“オンナゴコロ”をほぼ理解する北山氏は別にして、大西氏らはそんな男性陣に、開発案件をどのように説明・指示したのだろうか。

 「モノを作る人、みんなの意識を合わせるのが大変でした。今までお話したように、言葉で理論的に“女性はこうなんです”と伝えるのは非常に困難です。そこで私たちは、まず“今回のイメージはこれです”と、ある女性誌を配布することにしました」(大西氏)

 記事・企画の内容以外にもモデルの雰囲気、紹介される服や装飾品、誌面構成など、雑誌から得られる情報は多い。男性陣は「生まれて初めて見た」「こんな本があるなんて知らなかった」という人も多かった。中には「“某”姉妹のような感じですね」とややずれた認識を持ってしまった人もいたようだ。

 そこから男性技術陣も、北山氏同様に大変努力した。

 「男性技術陣も20、30代の女性の友達などに自らすすんでアンケートをとるなどし、“いままで自分が思っていた女性像と違い、こんな発見があったよ”と意見を集めてくれたり、自分がイメージするのはこういう音楽を聴いている人だと思うよ、というCDを集めてきてくれたりしてくれました」(大西氏)

photo “バーの間接照明”をイメージしたソフトイルミネーションパネル。光ると彫刻が浮かび上がる

 “オンナゴコロ”の理解──気がついたら男性技術陣も含めてそれに取り組んでいた。

 W51Pの背面パネルは左右非対称のデザインとともに、“ヒカリ”で浮かび上がる彫刻の存在がそのテーマを演出する特徴の1つになっている。

 この「ソフトイルミネーションパネル」は、“バーの間接照明”をイメージしている。単純にその光で陰を作り、絵柄が出ているだけのように見えるが、実は光の広がり方(角度)や強さ、色、彫刻の柄や細かさ、内容はもちろん、パネルを貼るための方法なども含めて徹底して議論され、“計算された陰影”を作り出した。なおボディカラー別に、そのテーマにちなんだ別々の彫刻デザインが施されているのも特徴だ。

 そのほか、前述の“カメラのレンズ”部分にも同社としては初となる試みを盛り込んだ。

 「レンズ部分も含めてボディと同じ色──は無理かもしれないが、限りなく目立たせたくない。それは“これこれこういう理由だからです”と、技術陣にすごく無理を言いいました」(北山氏)

 「W51Pは、カメラ部分を撮像素子やレンズ、カバーまでワンモジュール化し、それを裏側からはめ込む仕組みを採用しました。そうすれば貼りしろが表面に出ることもなく、より小さく、レンズ部分も目立たなくなります。これでデザイン陣にもなんとか許してもらえました」(技術・設計担当 南賢治氏)

 通常、携帯のこの部分は、内部にあるレンズを保護するための透明アクリルカバーを外側から貼って仕上げることが多い。レンズの周りに縁取りされ何かのパーツがあるのもそのためで、最も精度を高くでき、コストも押さえられる工法。しかし、それを貼るための“貼りしろ”が表面に必要となり、結果としてレンズ周りが目立つことになる。そこで技術・設計陣はモジュールを全て裏からはめる新たな工法を用いて“オンナゴコロ”に取り組んだ。

 もう1つ、マクロ切り替えスイッチを内側に配置し、できるだけデザインにとけ込ませるとともに、撮影補助用ライトを備えない仕様とした。

 「そもそも、なぜここにこんなスイッチがあるの?」というデザイン的な理由に加え、例えば「このスイッチが意図しない位置になっており、撮りたかった写真が撮れなかった」こともあったという声なども反映したという。また、ある程度の光量がある室内でもライトなしで撮影できるカメラ性能を備える(まったく光源のない暗闇では難しいだろうが)ことで、撮影補助用ライトをあえて省いた。これも本機のテーマと重なるユーザーを考えた結果だった。

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