KDDIの小野寺正社長は4月24日、2007年3月期決算と同社の新たな経営戦略「チャレンジ2010」について説明した。
2007年3月期決算は、同社の牽引役である携帯事業で、番号ポータビリティによる顧客の取り込みが好調に推移したことなどから過去最高益を計上。連結売上高が前年比9%増の3兆3353億円、営業利益が16.2%増の3447億円で増収増益となった。
2008年3月期の課題は、「チャレンジ2010元年」として、あらゆるサービスで顧客満足度NO.1に挑戦し、持続的な成長を目指すことだと小野寺社長。移動通信事業については、今期中の3000万契約とシェア30%の達成を目標に、引き続き顧客獲得策を強化する考えだ。
2010年は、通信キャリア各社が次世代ネットワークの提供を開始すると予想されることから(記事1、記事2、記事3参照)、“通信業界の転機の年”といわれている。小野寺社長は2007年度を、この転機に向けた新戦略の第一歩を踏み出す年と位置付け、「チャレンジ2010」というコンセプトを打ち出した。
「2005年以降は持続的成長に向け、“戦略とスピード”で顧客基盤の拡大による売上と利益の成長を目指した。番号ポータビリティや東京電力とのFTTH事業統合など、大きな課題をクリアしたので、次なる成長に向けた方向性を打ち出す機会だと考えた。『チャレンジ2010』には、2010年の飛躍を確かなものにするポジションを実現しようという意志を込めている」(小野寺氏)
コアメッセージとして掲げるのは「あらゆるサービスで顧客満足度NO.1を目指す」「量的拡大と質的向上の両立で持続的向上を図る」という2点。モバイル分野での増収増益基調を維持しながら、顧客基盤と事業ドメインの拡大による売上高の向上を図り、2010年度には連結で「営業収益4兆円、営業利益6000億円を目指す」とした。
2010年に向けた事業のポートフォリオについて小野寺氏は、連結売上の4分の3を占めるなど好調なコンシューマー向けモバイル事業(au)を牽引役に、固定通信事業の推進と黒字化を図り、法人向けサービスについては、モバイル/ネットワークソリューションともに、売上と利益の規模を拡大させたい考え。そして、新たな事業領域の拡張にも積極的に取り組むとした。
新規事業の育成に向けた取り組みとして挙げるのは、事業ドメインの拡大。拡大領域の1つは、異業種とのコラボレーションビジネスだ。「情報流通プラットフォームを強化し、異業種企業と協業することでインフラビジネスを拡大する」(小野寺氏)
もう1つは「コンテンツ・メディアビジネス」だ。従来の料金回収代行や協業、広告、EC分野に加え、2008年度半ばの開業を予定している「モバイルネットバンク」など、新たな事業領域を拡大することでコンテンツの利用人口や売上単価を伸ばし、流通総額の拡大につなげるとした。
小野寺社長は、それぞれの事業分野別の計画についても言及。コンシューマー向けモバイル事業は、共通プラットフォームとして開発中の「KCP+」を導入することで、端末開発コストの削減とRev.A対応の拡大を図るとし、料金・サービス面では新サービス導入によるARPUの底支えを目指すとともに、国際ローミングの拡充や顧客ニーズに合ったビジネスモデルの開発、決済・認証、通信・放送連携サービスの拡充で競争力を強化する考えだ。通信インフラは、800MHzの再編とそれに伴うカバーエリアの拡充を図り、ポストRev.Aの商用化も「おそらく2010年までにはやることになる」という見通しを示した。
コンテンツ・メディアビジネス事業では、タッチポイント(顧客との接点)の拡大と強化で、多種多様な世代とセグメントにリーチし、コンテンツ人口を拡大するとした。コンテンツの売り上げは、2006年の実績が前年比55%増の272億円と大幅に伸びており、小野寺社長が「2010年には2.5倍の規模に伸ばせると考えている」と期待する分野。「KDDIグループの持つ全顧客ベースをターゲットに接点を拡大する」(小野寺氏)
FMBC(固定とモバイル、放送の融合)サービスの展開に向けた取り組みとして挙げたのは、auショップにおける固定サービスとのクロスセル推進と、放送波を使ったコンテンツ配信モデルの拡充。特に後者は、すでにデジタルラジオで実現している、放送波を使った効率的なコンテンツ配信のビジネスモデルを他の放送媒体にも広げる考えだ。
こうしたビジョンと施策で「量的拡大と質的向上」をバランスのとれた形で実現し、“成長し続けるKDDI”を目指すと小野寺氏。過去最高益に浮かれることなく、新たな一歩を踏み出す。
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