MediaFLOで“テレビ”ビジネスの拡大を狙うQUALCOMMMediaFLO Day 2007(1/2 ページ)

» 2007年05月14日 11時18分 公開
[林信行,ITmedia]

 米QUALCOMMが、放送とデータ通信のいい所取りをして、モバイルテレビの新しい形を生み出した「MediaFLO」。そのMediaFLOを紹介するイベントとして開催された「MediaFLO Day 2007」では、実際にMediaFLOを採用した商用サービスを開始した米Verison Wirelesのセッションのほか、QUALCOMM幹部によるセッションも開催された。

 できたての新本社ビル最上階にある、見晴らしのいい取締役室で行なわれたセッションでは、QUALCOMMのCEOポール・ジェイコブス博士や、執行副社長兼インターネットサービス部門およびMediaFLO部門社長のペギー・ジョンソン氏なども登壇し、MediaFLOにかける意気込みを語った。

ワンセグ、DVB-HとMediaFLOすべてに対応したチップを開発

Photo CEOのポール・ジェイコブス博士。QUALCOMMのビジネスは、革新的な技術を開発し、ビジネスの良循環を生み出し、市場を拡大していくことだと話す

 QUALCOMMは、第3世代(3G)携帯電話で使われているCDMA技術や、au携帯電話のプラットフォーム技術であるBREWなどを提供する技術の会社だ。巨額の資金を投じて研究開発を行ない、そこで生み出した技術をライセンス供与したり、自社が開発したチップに組み込むんで販売する。端末メーカーがそうした技術ライセンスやチップを使って先進的な機能を備えた端末を開発すると、それをキャリアが採用して、顧客に付加価値の高いサービスを提供する。高性能な端末を購入したユーザーは、付加価値の高いサービスを楽しみ、ARPU(顧客平均単価)の向上に寄与する。そうして増えた売り上げは、巡り巡ってQUALCOMMに戻り、次の開発へと向けられる。この良循環(Virtuous Cycle)が同社のビジネスの基本だ。

 現在、QUALCOMMが技術をライセンスする企業は100社以上ある。CDMA関連技術の利用者は、全世界で3億7300万人いると言われている(参考までにGSM携帯電話の利用者は昨秋の時点で約20億人)。また、携帯電話のプラットフォーム技術として非常に重要な役割を果たしているBREWでも、同プラットフォームが誕生した2001年11月から、それを利用したソフト開発者やサービス提供社は累計で10億ドルの売り上げを計上した。こうした売り上げの循環を次世代技術のために投資し、最近では最大28Mbpsでの通信を実現する世界初のHSPA+チップセットなども開発した。一方、インドなどの新興市場にも目を向け、安価な携帯電話づくりに有利なチップなども開発、提供している。

 その同社が最近、特に力を入れている事業の1つがMediaFLOだ。

 日本ではワンセグ放送(ISDB-T)、そしてヨーロッパではDVB-Hと、米国外では既に携帯電話向けのテレビサービスが始まっているが、QUALCOMMではこの2つの放送方式にMediaFLOを加えた3つの放送方式に同時対応する「UBM」(ユニバーサルブロードキャストモデム)チップの開発を進めており、近々提供予定だ。このチップを使えば、携帯電話機メーカーは、さまざまなキャリアやサービスに、1つのハードウェアでより柔軟に対応できる。

 講演の最後、ジェイコブス博士は“未来の携帯電話は、人々を楽しませ、驚かせる──ついでに通話をすることもできる”という米FORTUNE誌からのお気に入りの文句を引用しつつ、「未来の携帯電話には、より多くの機能が集約され、エンターテイメント的な要素も高くなる」と語った。

PhotoPhoto 1チップでMediaFLO、ワンセグ(ISDB-T)、DVB-Hの3規格に対応できるチップも試作が完了している。携帯電話の通話はもはやおまけの機能となりつつある

携帯電話所有者の数はテレビ所有者の約2倍

Photo QUALCOMM執行副社長兼インターネットサービス部門およびMediaFLO部門社長のペギー・ジョンソン氏は、MediaFLO対応端末をきっかけに映像コンテンツのビジネスも大きく広がると力説する

 QUALCOMMでMediaFLO部門の社長を務めるペギー・ジョンソン氏は、MediaFLO技術が普及することにより業界全体にさまざまなビジネスチャンスが増えることを強調した。

 世界の総人口約66億人のうち、携帯電話の利用者は約23億人。なんと地球上の3人に1人が携帯電話を持っていることになる。これに対してテレビの保有者はその約半分で約12億5000万人。優良な映像コンテンツを持っている会社は、これらの人々になんとかして自社のコンテンツを届けたいと思っているが、放送の免許を持っていない会社は、ケーブルテレビネットワークを持つ会社などに頼るしか手段がない。とはいえ、わざわざケーブルテレビを引いてくれている人口は、世界で3億5000万人とテレビの保有者よりさらに少ない。そう考えると、携帯電話向けの番組配信は、従来よりも多くの人にコンテンツが届けられるという点で非常に魅力的だ。

 携帯電話に映像コンテンツを配信する方法としては、携帯電話のネットワークを利用したストリーミング放送やダウンロード提供という形もある。しかしネットワークへの負荷も大きく、同時に利用できる人の数が限られてしまう。そこで、大勢の人により安価に番組を届けられる「放送」技術に目を付けて開発されたのがMediaFLOだ。

 「放送技術を、携帯キャリアの視点で、あるいは携帯端末を提供するメーカーの視点で商用化したのがMediaFLOです。MediaFLOでは、バッテリーの持続時間や小さな端末での使い勝手、限られた帯域を有効利用する方法などを考慮して開発しました。

 携帯電話の世界では、既に個々の顧客を認証して、どのサービスを契約しているかを確認する技術が確立されています。またデータ通信を使って顧客が必要としている情報を届けるための技術も熟成しています。顧客から料金を徴収するためのしくみもあります。MediaFLOでは、放送の技術と携帯電話の機能を組み合わせて、携帯電話ならではのテレビ放送はどうあるべきかを検討して開発されたものです」(ジョンソン氏)

Photo 世界の総人口66億人中、携帯電話の所有者は23億人、テレビの所有者は12億5000万人と言われる。映像コンテンツを有効にビジネスにつなげるのに、携帯電話向け放送市場は数の上では有望そうだ。MediaFLO対応携帯電話が普及するとともに、さまざまなビジネスチャンスが広がっていくと見ている

 放送専用の電波を用いるMediaFLOは、携帯電話のネットワークにはほとんど負荷をかけないため、利用者の増加に伴う追加の設備投資も必要ない。大型スポーツイベントの生中継など、ストリーミング放送が苦手とする、多数のユーザーに向けた映像の同時配信なども容易に実現できる。

 MediaFLOを使った携帯電話向け放送では、エンターテインメントコンテンツの提供や広告の配信、商取引、情報の提供といったさまざまなビジネスが考えられるが、ジョンソン氏は「MediaFLOのビジネスは、数年後にはこうした枠を超えてさらに広がるだろう」と予想する。

 「今は思いもよらない、まったく新しいチャンスがたくさん生まれてくるでしょう。これをきっかけに4年後、5年後に、今は想像すらしていない新しい機能やサービスが生まれてくることもあるかもしれません」(ジョンソン氏)

 さらに先を見通せば、AV機器や家電との融合といった、さらに新しいチャンスもあるかもしれないと同氏は話す。「私は既にケーブルテレビ代を支払って、優良なコンテンツを見ています。昨日リビングルームのTiVo(HDDレコーダー)で録画した“American Idol”(米国でダントツな視聴率を持つスターの登竜門的番組)を、私のコンテンツに対する権利共々、携帯電話に移して、会社の昼休みに見られるようにしたい。それを実現するには追加のコストはかかるかもしれませんが、視聴者の側はそうした追加料金を支払うことに慣れつつあります。今後はこうした議論が活発化していくでしょうし、メーカーもそれに応えなければならなくなるでしょう」(ジョンソン氏)

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