モバイルテレビで重要なのは“携帯ならでは”の番組編成──米Verizonのダーキン氏MediaFLO Day 2007

» 2007年05月10日 17時06分 公開
[林信行,ITmedia]

 MediaFLOを推進する米QUALCOMMが4月末に開催した「MediaFLO Day 2007」。MediaFLOを採用して映像配信サービス「V CAST Mobile TV」を開始したVerizon Wirelessのショーン・ダーキン氏と、モバイルテレビ向けのテレビ番組を手がけるJamba/Fox Mobile Entertainmentのミッチ・ファインマン上級副社長が、モバイルテレビを成功させるための重要なポイントを解説した。

モバイルテレビで重要なのは使いやすさ──ダーキン氏

Photo 「何よりも使いやすさが大事」と話すダーキン氏。テレビは気軽にスイッチを入れ、チャンネルを切り替えられなければならないと強調する

 ダーキン氏は、携帯で映像コンテンツを視聴する際に何よりも大事なのは「使いやすさ」だという。「ユーザーはテレビを見ようとするとき、ビューワプログラムを選択して起動して……というような煩雑な操作をしたくはない。自宅で観るのと同じように、ボタンを押してすぐに番組を見たいのだ」

 こうした要望に応えるように、Verizonの新端末には専用のテレビボタンが用意され、これを押すとすぐテレビが起動する。

 「チャンネル切り替えもリビングと同じ。EPGで見たい番組を選ぶこともあれば、テレビをつけた状態でチャンネルをザッピングすることも多い。だから、チャンネルはボタンを押したらすぐに切り替わらなければならない」(V CAST Mobile TVでは約2秒間隔でチャンネルを切り替えられる)。

 番組の編成も重要だ。V CAST Mobile TVが提供している8チャンネルの内訳は、CBS、Comedy Central、ESPN、Fox、MTV、NBC Entertainment、NBC NewsそしてNickelodeonと、日本でも有料テレビ放送に詳しい人にはおなじみのメジャーチャンネルばかりだ。

 エンタテインメント系、スポーツ系、音楽系、キッズ系と位置付けがはっきりしたチャンネルばかりなので、EPGを見なくてもだいたいどのチャンネルで自分の観たい番組を放送しているかの見当がつく。

 そして、V CAST Mobile TVが本当にすごいのはここからだ。日本のワンセグを知っている人なら、当然、ケーブルテレビのFOXをつけても、V CAST Mobile TVのFOXをつけても同じ番組を放送していると思うだろう。ところがぜんぜん違うのである。

今のワンセグのように普通のテレビと同じではダメ

 ダーキン氏はモバイル向けテレビの視聴傾向について、ラスベガスなどで行ったグループテストの結果を元に次のように説明する。「一般のテレビとモバイル向けのテレビでは、そもそもの視聴パターンが異なる。一般のテレビでは、夕食の準備が始まる午後6時半くらいからがプライムタイム(ゴールデンアワー)となるが、モバイルテレビでは基本的に1日中プライムタイムだ。視聴者がまず増えるのは昼食が始まる午前11時前後からで、その後、昼食時の1時から2時の間も視聴者が多く、続いて帰宅が始まる夕方頃からまた視聴者が増え始める」

 そのため、いずれのチャンネルもV CAST Mobile TV専用の特別編成で番組を流している。例えばFoxはドラマ「24」や「プリズン・ブレイク」といった人気ドラマと人気ニュース番組2本、そしてスポーツ番組からなる特別編成だ。

 ちなみにFoxにしても他社にしても、実際の携帯電話向け放送に関わっているのは、モバイル専業の子会社だ。例えばFoxはFox Mobile Entertainmentという子会社を設立、後にVeriSignの子会社、Jambaと合併しJamba/Fox Mobile Entertainmentとなった。

Photo MediaFLO Day初日にはJamba/Fox Mobile Entertainmentの上級副社長、ミッチ・ファインマン氏も講演。新しいモバイル映像市場を生み出し、世界規模で展開していきたいという意気込みを語った

 Jambaは現在、世界35カ所で推定10億人を対象にしたモバイル放送市場を視野に、コンテンツの制作やマーケティング、新規ビジネスの開発などを行っている。テレビで放映しているのとまったく同じコンテンツを流すのではなく、テレビ放送用に用意した素材を生かしつつ、より携帯電話での視聴に適した番組を制作しているのだ。

 Jambaがこれまでに開発したコンテンツの中でも好評なのが「モビソード」(モバイルとエピソードをかけ合わせた造語)と呼ばれる番組形態だ。これは「24」や「プリズン・ブレイク」といった人気テレビドラマと併せて見るようにつくられたコンテンツで、内容はドラマの総集編やカットされたシーン、あるいはテレビ放送と並行して制作されるサイドストーリーなどで構成される。

 例えばプリズン・ブレイクでは、1回2分のモビソードが26本制作され、米Sprintのストリーミング放送サービスで供給されている。

Photo Jamba/Fox Mobile Entertainmentの人気コンテンツ「モビソード」は、携帯電話向けにデザインしたテレビ番組。テレビ番組と同じ素材を携帯電話で視聴しやすい尺(時間)、カット割、そして色合いで編集しなおしている

 実はJambaが製作するコンテンツは、V CAST Mobile TV専用につくられたものではない。Jamba/Fox Mobile Entertainmentの上級副社長、ミッチ・ファインマン氏によれば、ドラマ「24」用のモビソードは、以前、日本の旧ボーダフォン用コンテンツとして配信されたこともある(2005年9月の記事参照)

 また、ファインマン氏は、小さな画面の携帯電話でも楽しめるように、人物などのクローズアップを多くし、暗いシーンが多いドラマではコントラスト比を上げるなどの映像加工も行っているのだという。

 つまりVerizon陣営や提携コンテンツ会社が手がけようとしているのは、従来の放送コンテンツの二次利用ではなく、まったく新しい映像コンテンツ市場の形成なのだ。

Photo ロサンゼルス、ビバリー・ヒルズ近くのVerizon直営店では携帯電話でテレビが見れることの楽しさを強調した販促グッズを使って新端末の登場を大々的に宣伝していた。ただし、まだサービスの認知度は低いようだ。今後、Verizonはコンテンツを提供する放送局の親会社などとも協力して、従来のテレビ放送を補完する映像サービスとして、大々的に同サービスをアピールしていくという

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