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» 2007年06月13日 21時10分 公開

石川温・神尾寿の「モバイル業界の向かう先」:第4回 NTTドコモ 辻村清行氏──「ドコモ2.0」はWeb3.0のドコモ版 (1/2)

ジャーナリストの石川温氏、神尾寿氏が、キーパーソンを招いて業界の行く末について語る鼎談企画。今回はNTTドコモ 取締役常務執行役員 プロダクト&サービス本部長 辻村清行氏にこれからの携帯向けサービスについて聞いた。

[房野麻子(聞き手:石川温、神尾寿),ITmedia]

 さまざまな可能性を秘め、トレンドも激しく移り変わっていくモバイル業界の行く末を占うべく、通信ジャーナリストの石川温氏、神尾寿氏がキーパーソンを招いてざっくばらんに未来を語る「モバイル業界鼎談」。第4回は、NTTドコモ 取締役常務執行役員 プロダクト&サービス本部長辻村清行氏に、これからの携帯サービスについて聞いた。

PhotoPhotoPhoto 左からジャーナリストの神尾寿氏、石川温氏、NTTドコモ 取締役常務執行役員 プロダクト&サービス本部長の辻村清行氏

革新は垂直統合型モデルから生まれる

神尾 最近、携帯電話業界は垂直統合で閉鎖的だという批判があります。私は携帯電話業界は垂直統合から水平統合型に緩やかにシフトしている途上という認識なんですが、過激な論者の中には「完全な水平分業型が正しい」と主張する人もいる。ドコモとしては将来、ある種の水平分業型のビジョンを考えていらっしゃいますか?

辻村 iPodiTunesの関係なんて、ものすごい垂直統合モデルじゃないですか。サービスというものは、最初に垂直統合じゃないと革新が起こらないんですよ。同じく、ネットワークと端末が最適にチューニングされていないと、革新的なことなんて起こるわけがない。それが普及していく段階になって、水平的にオープンソースでやっていくべき時代が来るんだと思うんです。1つのサービスの寿命の中で、垂直統合から水平分業に移っていく時期があるのであって、個別に起こっていいと思うんです。それを1か0かで、全てのものは垂直統合じゃまずくて、水平分業じゃなくちゃいけないと考える必要もないし、すべてが垂直統合であるべきだと考える必要もない

神尾 垂直統合と水平分業モデルを、そのときそのときのタイミングや市場特性に応じて組み合わせていくべきだということですね。

辻村 それが今までの歴史じゃないですか。みんなそうやって新しいものを作り上げてきているんでしょう。

神尾 個人的には、携帯電話事業のベーシックな部分の大きな変革として、今後のスーパー3Gや4Gにはやはり期待しているんですが、このあたりは辻村さんの眼から見ても大きな変革を呼び起こすような土台の変化になるでしょうか。

辻村 そうですね。トランスミッションのスピードだけではなくて、メモリも変革しなくてはいけないし、I/Oというか画面、それからダイヤルキー、そういうもの全体が上がっていかないとダメだと思います。弊社の研究開発にもお願いしているんですが、ドコモはもともとネットワーク屋というか電気通信出身なので、トランスミッションのところは非常にがんばってチューニングするんです。でも、それだけじゃないだろうと。お客さんはトータルで使っていくわけですから、トータルに発展していかなきゃいけない。スーパー3Gや4Gになって、100Mビットとか1Gビットに相対になるようなメモリサイズがあり、バッテリーもそれに対応するような寿命を持ち、快適に大きな画面を使えるようになったら、それはまた画期的なことが起こりますよ。それこそ自分の横に常にPCがあるのと同じわけですから。リアルとサイバーとの行き来がもっと自由になるんじゃないでしょうか。

携帯はオンデマンド的なもの

石川 将来的に、KDDIは放送、つまりFMBCに力を入れていくといっていますし、ソフトバンクの場合は自社のコンテンツを流していくというようなことをいっていますが、ドコモの場合はどうなのでしょう。どこと組んでどんなことをしたいのか、というビジョンはありますか?

辻村 放送は1対nで、n対nの場合と比べると非常に低価格で同じ情報を流せます。1対nの情報通信というのは、それなりにメリットがあると思うんです。だけど、具体的にどういう風に使われていくのかがよくわからない。僕はワンセグに対して、やや懐疑的なんです。北京オリンピックみたいなものに向けては一定の需要はあるでしょう。だけど、やっぱり携帯って自分の見たいときに見たいというもので、オンデマンド的なんですよ。

神尾 個人的には、放送と映像配信、ストレージの映像コンテンツなどに線引きをする意味があるのか、と思っているんです。そういう意味ではMediaFLOの「クリップキャスト」みたいなものにも期待や興味は持っています

辻村 ただ、例えば「松井が2000本安打を打つかもしれない瞬間を見たい」あるいは「マスターズの18番ホールの最後のパットを見たい」というような人間の欲求はあって、それはやっぱり放送に適していると思います。したがって、オリンピックとか、ある瞬間を見たいというようなものは放送的な方がコストがはるかに安い。けれど、例えばCNN.comみたいなもの、5分遅れてもこの情報でいいですよ、と思えるものは、オンデマンド的なもので十分じゃないかと思うんです。

神尾 スーパー3Gになって、IPマルチキャストで一斉に配信してしまえば、放送じゃなくても放送的なことができる気がするんですが。

辻村 それはできますね。技術的にはおっしゃるとおりです。ただ、1対nで流す場合と、n対nでのコミュニケーションというのは本質的に違っていますよ。私と神尾さんがビデオで話しているという1対1と、松井の2000本安打の瞬間を放送で流しているというのとは、本質的に違いますよね。

神尾 映像コンテンツそのものの需要はこれから立ち上がってくるとお考えですか?

辻村 ええ、出てくると思います。でも、いろいろな部分で革新しなくてはいけないところがいっぱいある。今の携帯のビデオは音の処理がうまくいってないんですよ。ゲームにチューニングしてスピーカーが横に向いているでしょう。それに、自分がビデオを見ているときに周りの人たちには聞かせたくない場合もあるじゃないですか。だから自分に向かってくる音にしたい。それが場合によってはBluetoothかもしれないし、イヤフォンかもしれないけれど、どういう形が一番いいのかというのを、もうちょっと工夫していかなくてはいけない。

神尾 最近、携帯にイヤフォンを付けて音楽を聴いている人をだいぶ見かけるようになってきましたよね。あれがBluetoothヘッドセットになるのか、もしくはスピーカー技術が発達して、超指向性スピーカーみたいなものができるのか、というところですね。

辻村 そうです。それにはもう少し技術革新しなくてはいけないです。

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