法人ビジネスのドコモ2.0は“No”と言わないこと──NTTドコモ 三木茂氏ワイヤレスジャパン2007 キーパーソンインタビュー(1/2 ページ)

» 2007年07月10日 18時13分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 コンシューマー向けの携帯電話市場が拡大し、新規契約の獲得が頭打ちになる中で、新たな市場として注目されているのが「法人市場」だ。日本の法人契約市場は、契約総数のおよそ1割強という状況であり、携帯電話のビジネスニーズを法人契約に結びつけられれば、さらなる契約数の上積みが可能と見られている。

 この新たな激戦区「法人市場」において、携帯電話業界のリーダーであるNTTドコモはどう戦うのか。NTTドコモ法人ビジネス戦略部長の三木茂氏に話を聞いた。

Photo NTTドコモ法人ビジネス戦略部長の三木茂氏

法人の占める割合を質量ともに「2割」にする

ITmedia 昨年の注目は、世間一般的には番号ポータビリティ制度でしたが、携帯電話業界内では「法人市場」が注目されていました。特に2006年後半から、法人市場の競争は激しくなってきましたね。

三木茂氏(以下敬称略) ええ、法人は熱いですよ。ドコモでも、(ドコモ本社の入る)山王パークタワーよりも、法人営業本部のある国際赤坂ビルの方が熱いです。社員が燃えていますから(笑)

 実際のところ、今の状況は市場構造を見れば明らかです。現在、携帯電話契約の総数は約9800万強ですが(7月6日の記事参照)、そのうち約900万契約弱が法人契約になっています。つまり、携帯電話市場の1割未満という状況です。

ITmedia ビジネスで携帯電話が欠かせないツールになっている割には、法人契約の契約数は少なすぎますね。

三木 そうです。ですから今後どうなるかと言いますと、コンシューマー市場の新規契約数の伸びよりも、法人契約の純増数の伸びは明らかに高くなる。だから法人市場はホットなんです。

ITmedia これからも着実な純増数の上積みが見込めるのが法人市場である、ということですね。

三木 しかも、その伸びが(前年比)10〜20%程度とは限りません。市場開拓のやり方によっては、(前年比で)2倍の伸びを実現する可能性もあるのではないかと思っています。

 例えば、現在のドコモの契約総数は5300万弱で、法人契約数は約600万弱です。つまり、1割強が法人契約です。これが2割強までは成長すると考えています。また売り上げベースで見ても、全体収益の2割以上を法人契約が占めるようになるでしょう。

ITmedia 契約数という量的拡大と、収益への貢献率向上という質的拡大を同時に行っていくわけですね。

法人市場のセキュリティニーズは「定着」した

ITmedia 昨年から法人市場の成長は注目されていますが、その成長の原動力になっている法人顧客のニーズはどういったものなのでしょうか。

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三木 大きなものが「セキュリティ」です。企業にとって、情報漏洩のリスクが高くなっていますから、企業の(法人契約に対する)関心はまずここからスタートする傾向があります。

 現在、法人契約は携帯電話契約総数の約1割ですが、就労人口で考えますと、携帯電話を仕事で使う人は3500万〜4000万人は存在します。つまり、多くのビジネスパーソンが個人用の携帯電話を仕事でも使っているわけですね。しかし、これはセキュリティという観点では明らかに問題があります。

ITmedia きちんと管理されていないからですね。

三木 そうです。企業内で、携帯電話のセキュリティポリシーが統一できてない。そこで今、多くの企業が(セキュリティポリシーが統一できる)法人契約への切り替えを検討しているのです。

 また、法人契約で携帯電話を導入することは、セキュリティポリシーの統一以外のメリットもあります。法人契約で、同じキャリアと端末をそろえることで、さまざまな業務用のアプリケーションを積み上げることができる。社員の持ち込んだ携帯電話では、キャリアや端末の統一が取れませんから、ソフトウェアやサービスの「基盤」になり得ない。

ITmedia しかし、現在の法人需要は、その大半が音声通話のニーズです。今後、音声以外のアプリケーションにおいても、ニーズが拡大するのでしょうか。

三木 (音声以外のニーズの拡大には)携帯電話を活用して生産性を上げるという考え方が広がる必要があるのですが、そこはだいぶ認知されてきています。ドコモではさまざまな法人向けモバイルソリューションを用意していますが、これらが受け入れられる下地は徐々に整いつつあると感じています。

法人市場における“ドコモの強さ”とは

ITmedia 現在、ドコモだけでなく多くのキャリアが法人市場の獲得に力を入れているわけですが、その中でドコモの競争優位性になるポイントはどういったところにあるのでしょうか。

三木 ドコモの優位性は、「お得な料金」「安心のネットワーク」「便利な商品サービス」「充実したアフターサービス」の大きく4つが挙げられます。

 これらの優位性はコンシューマー市場での評価とやや異なるものもあります。例えば、料金などは巷では(KDDIの)auの方が安いというイメージもあるようですが、特に法人向けで見ますと、私ども(ドコモ)の方が価格競争で勝っている場合が大半です。ドコモの方が、(auよりも)お得になっています。実際、我々が料金シミュレーションしますと、納得していただける法人のお客様は多い。

ITmedia ドコモの法人営業担当は、足繁く通ってきてくれて料金シミュレーションをしっかりしてくれる。そういう話を、携帯電話を法人契約で導入した企業の取材でよく耳にしました。顧客に合わせた料金のシミュレーションや提案は力を入れているようですね。

三木 そこは力を入れています。お客様にもよりますが、必要であれば1カ月に1回、四半期に1回というペースで、料金シミュレーションとプランの見直しを行っています。

 これはドコモの法人営業の方針なのですが、しっかりとお客様の会社にお伺いし、現状を把握させていただく。その上で最適な料金やサービスを提案させていただくことが重要だと考えています。

ITmedia 単なる安さを押しつけるのではなく、さまざまな業種業態にある個々の企業のニーズに、きめ細かく対応し、きちんとケアしていく。それがドコモの考える「お得な料金」というわけですね。

三木 ええ。それにはお客様とのコミュニケーションが欠かせません。ドコモの営業担当が足繁くお客様のオフィスにお伺いするのは当然のことです。法人市場では、それぞれの業種業態の事情に合わせて料金やサービスを提案しなければなりません。

ITmedia なるほど。ところで、もう1つの優位性として挙げられた「安心のネットワーク」ですが、サービスエリアのイメージでは、つながりにくかった初期のFOMAの印象が今も払拭しきれていないと感じます。

三木 携帯電話は「つながって当然」の世界ですから、FOMAのエリア拡充、すなわちドコモのネットワークへの信頼向上には会社を挙げて取り組んでいます。

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