KDDIは7月23日、2008年3月期第1四半期の決算を発表した(7月23日の記事参照)。決算の内容は売上高が前年同期比5.7%増の8441億円、営業利益が同15.6%増の1409億円で増収増益と、2007年度3月期に引き続き良好なスタートを切った。
決算発表の席上で小野寺正社長兼会長は5月、6月と契約数の純増トップを獲得したソフトバンクモバイルについて質問を受け、「我々に対する影響としては、そう大きなものは出ていない」と話した。
KDDでは、2008年3月末の目標契約数を3000万に設定しており、これを達成するためには2007年3月末の2818万8000から181万2000の純増を上積みする必要がある。第1四半期の純増数を見てみると52万1000件を獲得しており、進捗率は28.8%程度。シェアという観点ではソフトバンクモバイルに抜かれたが、「“獲得純増数の絶対数”という観点では、大枠は間違っていないと思う」と小野寺氏は話し、契約数の伸び自体は予想通りに推移しているという見解を示した。
「ソフトバンクモバイルの躍進にともなって、番号ポータビリティでauの負けが込んでくるとか、auの解約率が上がってきているということになると影響は大きいが、今のところそういった影響は出ていない。純増で2位になったからといって、あわてて何かをする必要はないと考えている」(小野寺氏)
小野寺氏はソフトバンクモバイルが躍進している原因として、「純増数を見ていると、我々が今までターゲットにしていなかった、十分手を付けられていない市場を狙っているのかな、という気がしている。特に法人向けの市場で、音声利用が中心の中小企業などを獲得する動きが見られる」と話し、auのユーザーを奪っているというよりは、まったく異なるセグメントのユーザーを獲得していると分析した。
KDDIでは、大企業から中堅企業までを中心に営業をかけ、データ通信なども含めたソリューションの提供を主眼に法人ビジネスを展開してきており、小企業向けに、単純に安価な音声通話用のパッケージなどは提供してこなかった。しかしソフトバンクモバイルが、音声通話が主体の小企業や零細企業などをターゲットに契約獲得に動いていることから、「この部分は強化しなくてはならない」(小野寺氏)という考えも示す。
なお、同社が7月19日に発表した、2年契約をすると基本料金が初年度から半額になる「誰でも割」はドコモが先日「ファミ割MAX」「ひとりでも割」という新たな割引サービスを発表したことに対抗したもので、「ソフトバンクモバイルを意識した料金プランや割引サービスは考えてない」と小野寺氏は明言。
従来から同氏は「単純な料金の値下げはしない」と話しており、今回発表した誰でも割は値下げではなく“利用年数にかかわらず半額”という分かりやすい料金にしたものだと説明した。誰でも割の導入で純増数が急激に増えるといったことはそれほど期待しておらず、むしろ2年間の契約を約束するユーザーが増えることで、auの契約者が減ることを防止できると見ている。
電気通信事業者協会(TCA)が毎月発表する、携帯およびPHSの契約数についても、小野寺氏は「単純に純増数ばかりを追う時代ではないのではないか、という気はしている」と話し、携帯電話が音声だけの利用からデータなどを含んだ利用に変化してきていることを踏まえ、実態に即した指標があった方がいいという考えを示した。
「例えばKDDIは四半期ごとのARPUなども開示している。単純に純増数を比較するよりも、“契約数×ARPU”で金額を比較するなどした方がいいのではないか」(小野寺氏)
また同氏は、TCAから発表されている数字には、ソフトバンクモバイルがプリペイド契約の数を公表していなかったり(2007年6月分から公表)するなどちぐはぐな点があると指摘し、2in1の契約数をどう数えるべきかといった問題も含め「横並びの比較をするなら、きちんと比べられるよう、そのあたりの意思統一をしておくべきだ」と話した。
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