「写メール」のように「ポケットフィルム」のカルチャーを広めたい──藤幡正樹氏「ポケットフィルム・フェスティバル」ってなに?(2/2 ページ)

» 2007年09月18日 23時28分 公開
[房野麻子,ITmedia]
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ケータイ文化の進んだアジアで生まれる、欧州とは違う作品

ITmedia ポケットフィルム・フェスティバルを日本で開催する狙いはどのあたりにあるのでしょうか。

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藤幡 日本でポケットフィルム・フェスティバルを開催することは、フランスのメディアからものすごく注目を集めています。その背後には、ハイテクノロジーのイメージや、携帯電話でヨーロッパよりはるかに進化している日本で、いったいどんな作品が出てくるかという期待があると思います。ケータイの機能という点では、韓国もとても進んでいますよね。また中国人も何をするかわからない(笑)。アジアとヨーロッパとでは、作品に文化的な差異が出てくるので、そこが面白くなると思います。また日本で開催することで、アジアの人たちが応募しやすくなるのでは、という狙いもあります。

 昔の映画、例えばインド映画だったら、インドの人たちってこういう生活をしているんだとか、こういうことを考えているんだということを、映画を通して知ることができましたよね。それは映画による国際交流だったわけです。でも今は、機材のレベルがほとんど一緒で、生活レベルも一緒ですよね。中国人も韓国人も洋服を着ています。ただ映像を撮っても映っているのが日本人か韓国人か分からない。そうすると、何に興味を持っているか、という点が作品の大きなポイントになってくるでしょう。

 何に興味を持ち、何を重要だと思っているか、といった部分が、ケータイの動画だともっとストレートに出てくるんじゃないかと思っています。実際、私たちも学生と一緒に10本くらい作品を作って6月のフェスティバルに送ったんですが、フランスの彼らが今まで見てきたポケットフィルムと全く違うものが来たので驚いたといっていました。

ソフトバンクグループがポケットフィルム・フェスティバルをバックアップ

ITmedia 日本のポケットフィルム・フェスティバルはソフトバンクグループが協賛するということですが、そのいきさつと一緒にやることのメリットは何でしょうか。

長束康孝氏 接点は、先ほど話に出た、今年1月に行われた東京藝術大学の講座です。そこに私たちも案内されて、コンセプトを共有したんです。非常に面白いと感じました。我々は携帯電話事業者ですから、ケータイをいい意味で使いこなしていただくということは大事です。

 例えば「写メール」があります。あのとき、世間的にはケータイでカメラなんて使われないんじゃないか、なんて言われたりもしたわけですが、実際にやってみたら、ご存じのとおりブレイクしたわけですね。その後、カメラの解像度が上がり、機能も増えてきていますが、なぜか静止画と動画には大きな差があります。

 何かが広まっていけばいいなというときに、優れた作品を集めるとか、世の中に知らしめていくということは、我々だけではなかなかできません。ですが例えば藝大と一緒にイベントをやれば、大きく押し出していけます。そして、それがケータイを使いこなすことにつながっていけば、どこかで我々の売り上げに還元されるだろうという期待も企業の大前提としてあります(笑)。もちろん、今日明日の売り上げではなくて、こういうことがきっかけになって使い方が変わっていく、ということが大事なんだろうと思います。

藤幡 大学と企業の“産学連携”はずっと叫ばれていて、いろいろなことをやっています。その点、研究開発を行う工学部系の学部は昔からよく連携しているわけですが、文学部系で産学連携の例ってあまりないんですよ。ですから、企業の中だけではできない、学校だけでもできないような場所を作って、そこで実験できるようなものにするということで、今回のフェスティバルは新しい試みとして価値があると思っています。

ITmedia 藝大にとって、ソフトバンクと一緒にやるメリットはどんな点ですか?

藤幡 ソフトバンクモバイルさんは、すごく具体的な携帯電話の“現場”を持っていらっしゃるわけですよ。僕らが夢想するものとはだいぶ違うので、どこで燃える(萌える?)のかな、みたいな部分が面白いですね(笑)。アカデミックに分析したり研究したりすることとかなり違う視点・観点を持っていらっしゃって、すごく勉強させてもらっています。

新カテゴリ「モバイル・ディスプレイ作品」枠は新たな可能性をもたらす取り組み

ITmedia 今回、初めての試みとして、ケータイをスクリーンにする作品枠が設けられましたが、その狙いはなんでしょうか。

藤幡 まだ本当に可能性を掘り出した作品に出会っていないので、うまく言えないんですが……。テレビがなかった時代は、映画館という場所に行かないと映像が見られませんでした。テレビが普及してからも、それはお茶の間など1つの場所にありました。映像は必ずどこかに留まっているものだったわけです。ただ、ここ1〜2年で、写真のようにいつでもどこでも手にとって映像が見られるようになってきました。

 そうすると「持ち歩きながら映像を見る」ということを最大限生かした何かがあっていいはずです。例えば、その映像はある特定の場所で見ることで、ほかの場所で見るのとは違った意味を持つ、といったことができる可能性があるわけですね。それは一体なんだろうと考えているんですが、なかなか明確な答えは出ません。それで、誰か面白いものを作ってくれないかな、と思っているんです。

ITmedia 今のケータイで見る動画は、テレビや映画など、大きな画面で見ることが前提のものを、小さい画面に無理やりはめ込んでいるようなイメージですが、小さい画面に特化することで、何か新しいものが生まれる、という可能性もありますね。

藤幡 そうですね。学生にもそういう課題を出して作ってもらうことがあるんですが、なかなかズバッといったものがないんです。

ポケットフィルム・カルチャーの広まりに期待

ITmedia 集まった作品は、すべて上映するんですか?

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藤幡 まずは事前審査をして、コンペにかかるもの、かからないものを分けていきます。コンペにかかったものは全部上映して、それを審査員が見て選びます。同時に観客も見ていますから、観客賞も設けます。実際のフェスティバルでは、400人くらい入るスペースで、1万ルーメンの非常に明るいプロジェクターで上映しますので、すごいと思いますよ。

ITmedia まさしく映画ですね。でも、一発勝負みたいなものでもいいわけですよね。

藤幡 そうです。時間制限もありませんから、3秒の作品だっていいですよ。モバイル・ディスプレイ作品部門には、待受画面なんかを作っている人たちにも応募してほしいですね。待受画面を作っていて、ボツになって悔しいと思った作品でもいいですから、ぜひ応募してください(笑)。

 実はフェスティバルでは小学生とワークショップもするんですよ。90人以上の小学生に、3人1組でケータイを持ってもらって、作品を作ってもらいます。オープニングやエンディングなどの演出は芸大がフォーマットを作ってサポートします。

 実際、僕はおかしいと思っているんですが、日本には高性能なカメラやビデオを作っているメーカーがあんなにあるのに、写真もビデオも小学校で教えていないんですよ。小学生がビデオを撮ったら、絶対面白いと思いますね。親が撮っているばかりじゃなくて。

ITmedia 未来のクリエイターがでてくるかもしれませんね。フェスティバルでも、日本ならではの面白い作品がたくさん出てくるといいですね。

藤幡 今回のフェスティバルでは、パリのフォーラム・ド・イマージュと大学と企業で、ポケットフィルムという考え方をシェアして広めようとしています。ポケットフィルムという概念が世界的に広まって、最終的にケータイで撮った映像のことをポケットフィルムというのが普通になるといいなと思っています。写メールという言葉ができたように、「ポケフィる」みたいに言えるようになればいい(笑)。写メールは、最後は「写メ」ですからね。ポケッフィルムも「ポフィ」みたいになったら面白いですね。

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