携帯のユーザーインタフェースに高まる関心――MotorolaがSymbian OSのUIに投資する理由Symbian Smartphone Show 2007

» 2007年10月18日 01時00分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 Symbian OS向けのインタフェース技術、「UIQ」を巡る動きが活発になってきた。2007年2月、英SymbianがUIQ Technologyを英Sony Ericssonに売却、今度は米Motorolaが出資すると発表したのだ。MotorolaはUIQの50%の株式を取得し、同UIの開発を支援する。

 Symbianが10月16日に英ロンドンで開催した「Smartphone Show 2007」では、Sony EricssonとMotorolaが基調講演を行い、ユーザーインタフェースの重要性に言及した。

Photo Sony EricssonのCTO、マッツ・リンドフ(Mats Lindoff)氏(左)。「携帯電話は2010年、現在のPCと同じぐらいパワフルになっている」と予測する。中はSony Ericssonのウルフ・レトリング(Ulf Wretling)氏「Sony EricssonはソニーとEricssonから筋肉をもらった。われわれとMotorolaはUIQに筋肉を与える」(レトリング氏)。右はMotorolaのロン・シェーファー(Ron Schaeffer)氏。Motorolaが買収した英Sendo出身

携帯電話の次の課題はユーザーインタフェース

 基調講演を行ったSony EricssonのCTO、マッツ・リンドフ(Mats Lindoff)氏は前日の発表について、Motorolaが50%の株式を取得し、今後共同で技術開発を行っていくと説明。今後は2社共同で、ミッドレンジからハイエンドのスマートフォンについて量産体制をとるとした。Sony EricssonはUIQの買収当初から、オープンで公正なモデルによる展開を目指してパートナーを募ると表明しており、今後も他社に参加を呼びかける。

 Sony EricssonはUIQ買収時に、「UIQはすばらしい技術を保有しているが、リソースが不足している」と述べていたが、買収後にUIQは、Sony Ericssonのてこ入れを受けて急速に足場を固めている。現在、社員数は買収当時の160人から10カ月足らずで350人体制に拡大したという。

 リンドフ氏は、「小型化が一段落した携帯電話の次なる課題は、ユーザーインタフェース」だと明言。Sony EricssonとMotorolaが、UIQに出資した理由はここにあるといえるだろう。

 Symbian OSのインタフェース技術といえば、端末メーカー最大手Nokiaの「S60」が有名だが、UIQも実は、「たくさんの“世界初”を実現してきた」とSony Ericssonコンテンツプランニング・マネジメント担当ゼネラルマネージャ、Ulf Wretling氏は自信を見せる。米Appleの「iPhone」でタッチUIが話題になったが、UIQは2002年に発表した「P800」ですでにタッチUIを実現している。また、GPSを搭載したのもUIQが初となる(2003年の「A920」)。ほかにも、手書き文字認識機能(2002年の「P800」)、Wi-Fiを搭載したデュアルモード(2004年「M1000」「A1000」)などを他社にさきがけて実現し、初の3GスマートフォンもUIQベース(2003年の「A920」)だとアピールした。

 「UIQの長所は、柔軟性とイノベーション」(レトリング氏)――。これがMotorolaとSony Ericssonが戦略的に重要視する点だ。

 Motorolaのモバイルデバイス事業部プラットフォーム・ポートフォリオ担当ディレクター、ロン・シェーファー氏は、“ジェネレーションC”という新たな世代のユーザーが必要とする端末としてのスマートフォンを分析。「この世代は、メディアを消費する方法がわれわれとは異なり、パーソナライズされたメディアを要求している」(シェーファー氏)と指摘した。

 「新しいライフスタイルを実現するのがスマートフォンであり、UIQを共同で開発できるのは、Motorolaにとって大きなチャンス」(シェーファー氏)

 Symbianへの資本参加から撤退した後、Linuxに傾倒していたMotorolaだが、モバイルLinuxは分断化している。シェーファー氏もスピーチの中で認めたように、スマートフォン市場は急速に拡大している。今回の決断は、“スマートフォンの離陸に追いつくには、Linuxの成熟を待っていられない”という事情もありそうだ。また本国では、iPhoneという新しいライバルも現れている。UIQへの資本参加は、MotorolaがUIを重視し始めたことを意味し、Nokia連合に対抗する施策というだけでなく、UIQが得意とするタッチ技術を獲得することも狙いと見られる。

 UIQはSony Ericssonの支援を受けて、開発者向けの取り組みを進めている。この日、レトリング氏は遠隔地からリモートで実際の端末を使ったテストを行える「Virtual Lab」などの取り組みを紹介するとともに、11月にハンガリーでデベロッパーカンファレンス「UIQ Developer Fast Track」をMotorolaと開催することを発表した。

 レトリング氏によると、最新の「UIQ 3」向けのアプリケーションは、現在約580にのぼるとし、中でも人気があるのはジュークボックス、メディアコンバーターなどのマルチメディア関連、IMや電子メールなどのメッセージング、旅行、ナビゲーションなどの情報、それにゲームだという。地域別で見ると、多くがEMEA(欧州、中近東、アフリカ)向けだが、中国の急成長も見逃せないとした。

 2社はそれぞれ、アプリケーションの互換性を重視する姿勢も見せた。「Motorola Z8」などMotorolaのUIQベース端末向けのアプリケーションがSony EricssonのUIQベース携帯電話でも動くよう、サポートする計画だ。

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