インタビュー
» 2007年11月28日 10時00分 公開

「ファミコン世代」へ向けた最強──P905iはかくして“VIERAケータイ”になった開発陣に聞く「P905i」(後編)(2/4 ページ)

[岩城俊介,ITmedia]

「例えば“VIERA”画質の条件とは何ですか?」

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 同社が掲げたVIERAケータイの条件の1つに「VIERAの高画質化技術を搭載」とある。P905iは、VIERAテレビの高画質化回路 PEAKSプロセッサーを携帯用に調整した「モバイルPEAKSプロセッサー」を搭載する。単にこれを搭載すればよいのだろうか。

 「いえ。これは概念として当社が掲げたことで、“VIERAの絵”は、これこれこういうスペックだからだというものではありません」(映像・ディスプレイデバイス担当の久保田孝介氏 以下、久保田氏)

 ディスプレイデバイス担当の久保田氏は、P903iTVの開発時と同様に、大阪・門真の液晶VIERA開発チーム(松下電器産業 パナソニックAVCネットワークス社)のもとへ何度も足を運び、“VIERAの絵”についてのアドバイスを受けた。

 「そこで“例えば、VIERAの条件とは何ですか”と聞いてみました。“VIERAの概念はデジタル的なことではない。例えばこういうスペックだからVIERA、というものではない”と言われました」(久保田氏)

 映像の画質は、ディスプレイデバイスと信号処理の“かけ算”で決まる。どんなにいいディスプレイを使っても信号処理がよくないと“まったくだめ”。その逆もしかり。VIERAの絵とは、人が見て“よい”と思わせなければならない心理的なものだという。久保田氏らディスプレイデバイス開発担当チームは今回のフルワイドVGA表示対応3インチディスプレイを採用するにあたり、液晶デバイスの設計を最初から見直した。

 まず、液晶パネル単体で最初から「白と黒」をどう出力するか。どういう色調の“白”を出すか、“黒”をどこまでつぶさずに表現するか。液晶メーカーともかなり時間をかけて協力し合いながら煮詰めた。

 例えば通常は、パネルメーカーに数値的スペックを提示して発注するというが、VIERAケータイ用には「こんなものにしたいんだ」と“VIERAの絵”を実現するための設計思想的なことも含めて注文。紆余曲折もあったがパネルメーカーも理解を示してくれ、要望通りのものができあがった。モバイルPEAKSプロセッサーをより効果的に生かすようにする、大変重要な取り組みだった久保田氏は述べる。

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 モバイルPEAKSプロセッサーは記憶色補正(人間の記憶する色に近づけて美しく発色する技術)や拡大・縮小処理、ノイズリダクションなどの映像高画質化のための信号処理を行う。その言葉だけを並べるとP903iTVと大きく変わらないように思えるが、1つ1つの処理方法は大きく進化している。

 ノイズリダクションや拡大(引き延ばし)処理は、フルワイドVGAのディスプレイを採用するP905iでは、特に高度なチューニングが必要になる(ワンセグ映像は320×240または320×180ピクセルであるため、ディスプレイいっぱいに表示するために拡大処理が必要)。引き延ばし方法は各社それぞれで、調整の仕方により出力される“絵”も異なることになる。

 「P905iは、どんな“絵”が来ても大丈夫。入ってくる映像の傾向によって随時補正します。例えばドラマや時代劇などで暗めのシーンが来ても、きちんとした階調で表現できるようになっています」(久保田氏)

 空の青やフルーツの赤といった人間の記憶色に基づく色補正や、同社独自の統合LSI「UniPhier」と光センサー(本体受話スピーカーの上部に設置)で周囲の明るさを検知してバックライトの明るさを自動調整する「液晶AI」を応用し、入力映像のシーンに応じて画質を自動補正する技術が盛り込まれている。ディスプレイは動画再生時で最大2000:1という高コントラストを実現する。

photophotophoto スタンダード/スポーツ/シネマ/ダイナミック、4種類の画質モードを設定可能。エッジを強調させるとともにノイズを軽減し、なめらかな映像に補正する
photophoto イヤフォン使用時に、圧縮で失われた高音域を補完する“リ.マスター”や音場設定など、高音質への取り組みも忘れていない。リ.マスターは音楽プレーヤーのほか、ワンセグ視聴時も有効になる。これらを設定すると“音、意外に、いやかなり違うぞ”と感じることができる
photo リ.マスター再生時の補間イメージ

 映像の調整は膨大な数の一般テレビ番組に加えて、液晶VIERAなどのテレビ開発部隊が用いる“いわゆる厳しい絵”の評価用映像も駆使して行った。

 そして最後は人の目。液晶VIERA開発チームがプロの目でチェックした。「その映像チェックのために、大阪に何度も通いました。液晶VIERA開発チームにも認められるほどのものが完成しました」(久保田氏)。

 「“VIERAケータイ”の概念はAVC社から言われた条件というより、当社が当初からかなり高く設定したハードルでした」(福田氏)というが、やはりそれをクリアするのは並大抵のことではなかったようだ。

 「中途半端なものを持っていっても、“だめ”と言われるのは分かっていましたがね(笑)」(久保田氏)


photo ワンセグアンテナは、約45度で“かこっ”と保持できるようになっている。直立させるより、よく受信できるのだという

 なおP905iTVに載る、15fpsのワンセグ映像を2倍の30fpsに変換して表示する「なめらかフレーム補間」機能は、「技術的には載せられるものなのですが、開発時期の違いから“間に合わなかった”というのが正直なところです」(久保田氏)とのことだ。

 ちなみに、P905iの内蔵メモリは約100Mバイト。ワンセグを内蔵メモリに保存できないのは、その容量ではそれほど長い時間録画できず、結果、存分に楽しめないという考えからだ。その分microSHDCに正式対応し、大容量の外部メモリを存分に活用してもらうことを想定している。

 P905iは、4GバイトのmicroSDHCの利用で最大約26時間のワンセグ録画が行えるほか、「設計的には、(発売された場合は)SDHCの最大容量である32Gバイトのものまで使えると思われる」(福田氏)という。

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