次世代PHSは10年越しの夢、なんとしても実現させたい──ウィルコム 近副社長石川温が聞く(1/2 ページ)

» 2007年12月04日 18時22分 公開
[石川温,ITmedia]

 次世代ワイヤレスブロードバンドの実現に向け、2.5GHz帯の周波数の割り当て先が間もなく決まろうとしている。総務省では2545MHzから2575MHz(ただし2545MHzから2555MHzは制限バンド)と2595MHzから2625MHzの2つの枠を用意しているが、そこにウィルコム、オープンワイヤレスネットワーク(OpenWin)、ワイヤレスブロードバンド企画、アッカ・ワイヤレスの4社が名乗りを上げている。

 オープンワイヤレスネットワーク陣営は、11月22日に総務省が開催した公開カンファレンスをはじめ、最近各所で「ウィルコムはアイピーモバイルが撤退した2GHz帯に行くべき」と提案しており、矢面に立たされているウィルコムだが、同社の考えや次世代PHSのメリットについて、同社副社長の近義起氏に話を聞いた。

ワイヤレスブロードバンドはマイクロセルでこそ実現できる

Photo ウィルコム取締役 執行役員副社長の近義起氏

石川温(以下石川) 2.5GHz帯の周波数獲得に向けた議論が白熱しています。改めて、次世代PHSの利点と特徴を教えてください。

近義起氏 ワイヤレスブロードバンドで超大容量を実現するのは、マイクロセルをおいてほかにはない。それは誰しも認めていることだと思います。しかし、マイクロセルを実現するには基地局の設置に相当な時間が必要で、なかなか実現が難しいのです。

 (モバイルWiMAXなどの)他の方式を作っている人たちは、(マイクロセルでの展開が難しいために)組み合わせを提案しています。モバイルWiMAXとWi-Fi、3G携帯電話をソフトウェア無線で組み合わせると言っています。

 我々には、幸運にも12年をかけて培ってきたマイクロセルネットワークがあります。これの次世代版ができれば、みんながほしくて仕方ないワイヤレスブロードバンドができるようになります。ワイヤレスブロードバンドに最適なマイクロセルシステムが、我々の持つPHSだったというわけです。

石川 現行のPHSから次世代PHSへの移行というのは、短期間にできるものなのでしょうか。

近氏 全国にある16万基地局は、すんなりと次世代に移行することが可能です。PHSを設計した15年前、マクロセルでは契約数が2000万を超えたら周波数は一杯になる、これからはマイクロセルを作らなくてはならない――と話していました。そのために我々はマイクロセルでPHSを作ったのです。予想に反してマクロセル陣営が頑張って、周波数利用効率を上げてきたのですが(笑)

 マクロセルがひっ迫する時代が来るかと思ったら、なかなか来なかった。しかし、ついにワイヤレスブロードバンドの時代がきた。PHSの設計思想はワイヤレスブロードバンドの要求条件とまったく一緒です。

 ワイヤレスブロードバンドを実現する要件はマイクロセルだし、基地局の位置をきれいに配置できないので、自律分散にならざるを得ない。PHSにはこうした設計条件が15年前から備わっており、OFDMを入れて速度を速くするだけで、いままで培ったノウハウを生かし、すんなりと現行PHSから次世代に移行できると考えています。

 ついに我々の時代がきたと思っています。まさに“Dreams come ture”です。

石川 仮に2.5GHz帯が割り当てられた場合、サービス開始のタイミングや製品はどうなるのでしょうか。

近氏 最初のサービスは2009年度中に開始できると思っています。端末は、まずは次世代PHSのみに対応したデータ通信カードから始まっていくでしょう。しかし、弊社はW-SIMというモジュールがありますから、次世代PHSの通信カードにW-SIMのスロットを用意してしまえば、デュアル対応というのも可能だと思います。モジュール化が進んでいるので、その辺はやりやすいですね。

 モジュール化を進めたことは、今の我々の強みになっています。次世代PHSとしても、モジュールづくりに専念しておくと、最新のジャケットと組み合わせていいサービスができるんでしょうね。

 その後は、かねてからのモジュール戦略のように、新しいジャケットを使っていくようなイメージです。モジュールによって、最高のものができるかと思います。

「2GHzへ行け」は議論にならない

石川 他のキャリアからは「ウィルコムは2GHzに行けばいい」と言われていますが、どのようにお考えですか。

近氏 周波数開発は昨日今日でできるものではありません。4年ごとに、世界的な会議で、次の周波数を決めている。そういう中、“2.5GHzでワイヤレスブロードバンドの開発をやりましょう”ということが決まっている。我々はそこに向かって開発をしているのです。それはモバイルWiMAXに限ったことでなく、UMBやIEEE802.20、次世代PHSもそう。世界的な流れがあって、我々がやっていたITUでの標準化があるわけです。他の周波数に移れというのは議論になりません。

 今回の免許申請のプロセスも、その世界的な流れの中にあるはずです。2つの枠組みを全国免許として出して、4つの方式が技術としてはいいのではないか――。というパブリックコメントがあって、それに賛成した人が免許を申請している。その枠組みの中で議論すべきではないでしょうか。“2枠ともモバイルWiMAXなら、ガードバンドがいらない”という議論も間違っています。そこまで議論を蒸し返すのなら、免許の申請をしなければいいのです。

少なくとも、2GHz帯がどうなるかは何も決まっていません。家が建ちそうなって、基礎だけできて壊れて、更地にもなっていない。それがそもそもワイヤレスブロードバンドに使えるかも定かではない。現時点であっちに行けと言われても困ってしまいます。

石川 オープンワイヤレスネットワーク陣営は、モバイルWiMAXと次世代PHSの2つに2枠を割り当てた場合、独占企業が2つになってしまい、2.5GHz帯で競争関係を促進することができないと指摘しています。例えば、モバイルWiMAXを提供する会社が2つあれば、ユーザーはどちらかを選ぶことができる。モバイルWiMAXと次世代PHSであれば、ユーザーは乗り換えもできなくなってしまうという意見です。このあたりはどうお考えでしょうか。

近氏 通信方式が1つしかないということが独占に当たるのでしょうか。例えばKDDIさんは日本で唯一CDMA方式で携帯電話事業を行っていますが、これも独占なのでしょうか。

 イー・モバイルさんは、テクノロジーが1つでいいという議論なのでしょうか。それも議論の対象ではないような気がします。技術間競争に賛成するとおっしゃって免許申請しているはずなのに。技術間の競争があったほうがいい側面もあるかと思います。

 しかも、オープンワイヤレスネットワーク陣営は孫さんが(アッカ陣営と合併して)会社がTつになってもいいと、いっているのに、その一方で(イー・アクセスは)モバイルWiMAXが2つでなければいけないと言っているのは、一貫性がないように感じます

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