次世代PHSは10年越しの夢、なんとしても実現させたい──ウィルコム 近副社長石川温が聞く(2/2 ページ)

» 2007年12月04日 18時22分 公開
[石川温,ITmedia]
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モバイルWiMAXに圧勝することで国際競争力を実証する

石川 次世代PHSの国際競争力はどうでしょうか。モバイルWiMAXは世界的な普及が強みとされています。

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近氏 そのためにも日本でぜひやらせてほしいです。技術間競争をして、実証して見せましょう。もし、我々が免許をいただけて、技術間競争をして我々が圧勝したとします。すると、それこそが国際競争力があるということになると思います。システムや会社を作る人は、誰しもみんな「自分はすごい」というわけです。しかし、市場はそれを冷静に見て判断する。是非日本で、次世代PHSを実証させてもらって、世界展開に弾みをつけたいと願っています。

石川 「圧勝」というのは、どういったイメージなのでしょうか

近氏 マイクロセルの強みとしては、速度が安定して速いということが挙げられます。それがワイヤレスブロードバンドの価値ではないでしょうか。そういった部分が実証されれば、みなさんに次世代PHSに振り向いてもらえると思います。

石川 モバイルWiMAXには国際的なフォーラムがあり、さまざまな企業が多数参画しています。その点に関してはどのようにお考えですか。

近氏 いろんな人が集まった規格が、技術的に優れたものになるかといえば、必ずしもそうではありません。標準化の時には、多くの企業がみんな自分の技術を持って来たがります。必ずしも多くの人が集まる規格が優れているとは言えません。

 例えば、米QUALCOMMが提唱したIEEE802.20は、とても完成度が高いように思えます。いろんな人のIPR(知的財産権)や思惑がなく、議論をせずに自分だけで作るから、思想が統一されていいシステムになっているようです。

 今回の次世代PHSは、割と少ないメンバーで作っています。だからこそ、一本芯の通った、哲学のあるシステムができたと思っています。

石川 次世代PHSとモバイルWiMAXというのは、どちらもOFDMを使っていたり、MIMOやビームフォーミングといった技術を応用していたりと、技術的にはかなり近いものとも言われています。

近氏 結局、2.5GHzの周波数を使い、同じような帯域でOFDMAでTDDという仕様ですから、ほとんど一緒なんですよ。メーカーもモバイルWiMAXのためにチップをつくっているわけではなく、何年も前にこういうものをつくると世界中で合意しているだけのことです。IEEE802.20もUMBのチップもほとんど一緒です。対応する周波数の違いはありますが、モバイルWiMAX専用のチップがあるというわけではありません。

 昔に比べたら、システム依存という部分が減っており、メーカーが他の規格に参入するのも容易になっています。

石川 そうなってくると、もしかしたら、モバイルWiMAXと次世代PHSのデュアル通信カードという可能性もあり得るのでしょうか。

近氏 周波数が一緒で、方式もあまり違いはありませんから、ハードルは低いでしょうね

石川 孫氏は「ウィルコムは純減をしており、PHSの需要が先細りだ」といった指摘もしていました。

近氏 ワイヤレスブロードバンドの技術と現行PHSの需要という話題が、特段リンクしているとは思えません。いまのウィルコムが純減しているという議論に意味があるのでしょうか。それはそれで大変な課題なので、取り組んでいる最中ではあります。しかし純減の話と新しいビジネスの話との関連性はないと思います

石川 事業の継続性の面で不安はないかという指摘がありますが。

近氏 ウィルコムの状況はどうなのかという質問であれば、純減に対して、みなさんから心配してもらうこともあるが、おかげさまで、顧客基盤が増え、キャッシュフローも潤沢にあり、利益が出ているので、心配する必要はありません。ユーザーが1.5倍になったので、経営基盤に厚みが出てします。一時的に純減しているから不安、という議論はよくわかりません。そこはご心配なく。次世代や投資に関しては不安は全くありません

MVNOには2001年から取り組んでいる

石川 今回、総務省は割り当ての条件として、オープン性を掲げています。「MVNOは他社に先駆けてやっている」と喜久川社長もおっしゃっていた、MVNOについての取り組みをお聞かせ下さい。

近氏 MVNOに関しては2001年から手がけています。昨日今日始めたというものではありません。

最初に始めた日本通信のように、すべて自社で決められるようになっており、ネットワークを借りた人が、料金やQoSを自分で決め、自分のブランドで端末を調達できるところまで実現しています。

 それからというもの、いろいろなバリエーションを手がけてきました。ここまで幅広くMVNOを提供しているのは我々だけです。オープンネットワークに関して言えば、かなりの自負があります。

 モジュールを使えば、何でも実現できます。料金も無制限定額も実現しています。これ以上オープンにできないくらいになっている訳です。この経験を生かして、ウィルコムもMVNO事業者も成長してきています。

 出資を募ったからといって、オープンだというのもおかしい。じゃあ、出資していない会社にはネットワークを貸し出さないの? という疑問がわきます。何十社も出資しているという陣営もありますが、それ以外の人には差別をするのでしょうか。

次世代PHSは“補完”ではなく“本流”──他社との大きな違い

石川 最後に、次世代PHSの意気込みをお聞かせ下さい。

近氏 非難するつもりはありませんが、3.5Gや3.9Gと呼ばれている携帯電話の進化系とWiMAXのスペックには、あまり違いがないように思えます。仕様は違うかもしれませんが、現実の速度はあまり変わらないと、誰も指摘していません。

 3G事業者はLTEに向かうのが本筋なのではないですか。それに800MHz帯や700MHz帯が空いてくるので、そちらに注力するのが本来の姿なのではないでしょうか。テクノロジーの潮流を見るとそのように思えます。2.5GHz帯は補完的に使うのでしょうけれど、あくまで「補完」な訳ですよね。

 我々の次世代PHSは、本流が別にあって、それを補完するという位置づけのものではありません。うちはこれでやっていくと決めています。迷いは全くありません。いろいろ持っている人は迷うでしょうね。

 ネットワークのIP化が流行る前、固定電話の世界は垂直統合の世界でした。しかし今はネットワーク、メール、インターネットのアプリはすべて分離されつつあります。無線の世界もIP化を進めていくと、テクノロジーのパワーによって水平分離になっていくでしょう。その流れに耐えられるビジネスモデルを、ウィルコムは先取りしていると自負しています。

 日本全国、ワイヤレスブロードバンドが実現され、音声の発着信ができるようになったら4000円以上のARPUは取れなくなって来ます。

 それを現実的に考えているのは、我々しかいません。私たちは十分な覚悟を持ってやっています。その点を是非認めていただいて、次世代PHSを実現させたいですね。なんせ開業以来、10年以上待ったのですから。

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