半分根性・半分ノウハウで完成した“ハイエンドなベーシック”「SO905i」開発陣に聞く「SO905i」(1/2 ページ)

» 2007年12月28日 14時55分 公開
[田中聡(至楽社), (聞き手:平賀洋一),ITmedia]

 ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズは、音楽機能に注力した「SO903i」、ワンセグ機能に注力した「SO903iTV」など、同時期にリリースされるドコモ端末の中でも特に“とがった”モデルを開発してきた。しかし一方で、“他社端末に比べて非対応の機能やサービスが多い”“日本語変換時の操作性がいまひとつ”など、操作性や機能、サービスにおいてやや見劣りする部分があったのも事実だ。

 2007年冬モデルの「SO905i」では、こうした不満点を徹底的に改善するとともに、一部のソニー・エリクソンファンが待ち望んでいたジョグダイヤルを、進化した「+JOG」という形で復活させた。さらにSO903iTV相当のワンセグ機能、SO903i相当の音楽プレーヤーを搭載し、国際ローミング(3G+GMS)、FOMAハイスピード、GPS、2in1、うた・ホーダイ、直感ゲーム、WMA再生、きせかえツール、フルブラウザにも対応するなど、まさに“ソニー・エリクソンの全部入り端末”といえるほどの進化を遂げた。

 復活のジョグダイヤルにかける意気込み、目標サイズを実現するための苦労、UIやAV機能へのこだわりなど、SO905iが生まれるまでの過程を開発スタッフに聞いた。

photophoto 回転2軸型ボディの「SO905i」。カラーバリエーションはブラック、シャンパンベージュ、ホワイト、レッドの4色

+JOG関連の操作性を改善

photophoto 商品企画担当の安達氏(左)、プロジェクトマネジャーの千葉氏(右)

 SO905iは、新開発の小型ジョグダイヤル「+JOG」を搭載する。ジョグダイヤルの採用は、ソニー・エリクソンのFOMA端末としては初、ムーバを含めると「SO505i」から約4年半ぶりとなる。

 この+JOGはauの「W53S」と同様、ジョグダイヤルの周囲に十字キーを備えており、好みやシーンに応じて2つのデバイスを使い分けられるのが大きな特徴だ。なぜ、ジョグダイヤルは“+JOG”として復活するに至ったのだろうか。

 「従来のジョグダイヤルは、上下方向の連続操作を簡単に行うためのものでした。例えば、電話帳やメール一覧画面をスクロールして目的の電話番号やメールを探すといった操作です。しかし、ケータイゲームやiモードなどの用途では十字キーのほうが使いやすく、コンテンツの性質が変わることで使われなくなりました」。プロジェクトマネジャーの千葉氏は、ジョグダイヤルの搭載が中断した理由をこう説明する。また、ジョグダイヤルを搭載するには、本体にそれなりの厚さが必要になってしまうことも懸念材料だった。

 しかし、携帯電話の操作デバイスとして、上下スクロールがしやすいジョグダイヤルを求める声がなくなったわけではない。「ジョグダイヤルに対するユーザーからの強い要望がありました。十字キーと機能を兼ね備えた形でジョグダイヤルを再現できないか、2006年の夏くらいから+JOGの搭載を検討してきました」と千葉氏は振り返る。

photo 「SO905i」の+JOG

 開発陣は“ジョグ”を復活させ、さらに快適に使えるよう新たな要素を追加することにした。その1つがカスタマイズ性だ。SO905iでは待受時に+JOGを回すと、上下回転それぞれで、電話帳、データBOX、受信メール、送信メール、Bookmark、画面メモ、外部メモリ(microSD)などのメニューを呼び出せるよう設定できる。

 「+JOGに期待を寄せるユーザーは非常に多く、裏切るわけにはいきません。昔の(ジョグダイヤルの)操作性と、使っていないときの操作性をどう両立させていくかが課題でした。例えば、待受時に上キーを押す場合、昔のUIだとアドレス帳が呼び出されますが、今の機種だとデータBOXが呼び出されます。アドレス帳を呼び出せたほうが便利という意見もあり、人によって違います。そこで、+JOGから呼び出せる機能をカスタマイズできるようにしました」(千葉氏)

 また、iモード、メール、フルブラウザでのスクロール速度を大/中/小の3段階で設定する項目も用意した。

photophoto 機構設計担当の増田氏(左)、ソフト開発(UI)担当の田代氏(右)

 「過去の端末では、もっとサクサク感を出してほしいという要望がありました。ただし単に速ければいいというわけではありません。そこで、それぞれの機能でカスタマイズでき、さらに使いやすい速度を選べるよう3つの設定を用意しました」とソフト開発(+JOG)担当の田代氏は話す。

 「SO905iでは、ジョグダイヤルをクルッと回してピッピッと2回押すと(クルクルピッピッで)発信できます。SO903iだと発信までに決定キーを5回押さないといけない。SO905iでは、できるだけ操作ステップを減らすようにしました」(田代氏)

 企画担当の安達氏は「Webの世界が浸透したので、スクロール関連の操作性が向上することが大きい」と話す。auのW53Sのように、ジョグダイヤルを回し続けると高速でスクロールする機能はないが、SO905iにもスクロール操作を楽にするための工夫が散りばめられている。

 例えば、これまで電話帳を呼び出すときは、「あ行」の場合「あ」「い」「う」「え」「お」の先頭の名前しか呼び出せなかったが、例えば「あた」と入力して「安達」を呼びだすインクリメンタルサーチが可能になった。また、従来のソニー・エリクソン機種では[マナー/メモ]キーがページ送りキーに割り当てられていたが、SO905iではソフトキーからもページ送りが可能だ。+JOGの操作性だけでなく、+JOGを使わないときの操作性も向上している。

 +JOGの構造や操作性について機構設計担当の増田氏は、「決定キーのフィーリング的なところは試行錯誤しながら調整を重ねました。+JOGの操作感が、ソフトキーと比べて違なっていてはいけないので、キーのフィーリングも+JOGに合わせて調整しています」と話す。

 従来のジョグダイヤルとは異なり、磁石を用いた非接点構造を採用しているのも特徴だ。「今回の+JOGは、『SO505iS』で採用していた『ディスクジョグダイヤル』を縦にしたような構造で、メカ的な接点構造を持たず、磁石の反発を使って耐久性を確保しています。また、汗などの水分に強い対策もしています」(千葉氏)

「SO902i」ユーザーが一番びっくりする?――刷新されたUI

photophoto デザイナー(GUI)の山浦氏、アプリケーション開発担当の藤山氏

 SO905iはメインディスプレイがフルワイドVGA液晶(864×480ピクセル)に進化したことに伴い、VGA用フォントが全面採用された。デザイナー(GUI)の山浦氏によると、文字の行間を変えることでフォントを見やすくしているという。

 「SO905iでは、ディスプレイの解像度が上がってフォントを精細に表示できるようになりました。字を細かくできる分、字間や行間を詰めてしまいがちなのですが、QVGAのころと同じ行数にすることでゆとりを持たせ、フォントを見やすくしています」(山浦氏)

 「細かいところでは、“0”(ゼロ)と“O”(オー)の区別がつかないという声もありました。そこで“0”(ゼロ)には斜線を入れることで区別できるようにしました」(田代氏)

 ドコモのソニー・エリクソン端末として、初めて「きせかえツール」に対応したほか、メインメニューは従来のリストタイプに加え、4×3のタイルタイプも用意する。幅広いユーザーに使ってもらうことを想定し、デフォルトでタイルメニューを設定した。

 「メニューのテイストは、本体カラーの世界観に合わせて作っています。毎日見てもらうものなので、アイコン自体を大きくし、行間も広く取るなど、クオリティにはとことんこだわっています。幅広い層を狙えるように、ポップなものからコンテンポラリーなもの、キュートなものなど、広く押さえています」(山浦氏)

 きせかえツールには、ソニー・エリクソンのオリジナルキャラクター「エリクル」が登場する。「エリクルにはストーリーがあり、SO905iではエリクルたちの村でのんびり暮らしているという設定。次機種以降ではそこから旅立つ」(山浦氏)という構想だ。

 メインキャラクターは3匹で、青い熊が「エリクル」、ピンクの熊は「ソニエル」、オレンジのペリカンが「ルンドル」。これらのキャラクターは見たいときに見られるのではなく、時間などの条件によってランダムに登場するという。月ごとのイベントもあり、クリスマスやお正月などのイベントと連動したアニメーションも用意される。ちなみに、「エリクル」と「ソニエル」は「ソニー・エリクソン」から取った名前で、「ルンドル」は、ソニー・エリクソンのスウェーデンの拠点がある「ルンド」という都市から取った名前だという。

 そして、知る人ぞ知るソニー・エリクソンの待受キャラクター「頑張れサラリーマン」も用意された。「au端末では非常に人気の高い、『頑張れサラリーマン』(通称『頑サラ』)も、SO905iのきせかえツールとして登場しました。こちらはメーカーサイトで配信中です」(安達氏)

 文字変換エンジンは、従来の「POBox」から「POBox Pro2.0」に改善された。主な改善点は下記のとおりだ。

  • 予測変換の候補を縦と横方向の両方で選べるようになった。
  • 変換候補選択時に、ジョグダイヤルと十字キーそれぞれで縦、横方向にカーソル移動するかをカスタマイズできる
  • 長文を変換できる自動連文節変換が可能になった
  • 変換候補の文字種ごとにタブ化し、英数カナもダイレクトに変換できるようになった
  • 自動カーソル移動が可能になった
  • インライン入力が可能になった
  • 語彙数と学習辞書の容量が飛躍的に向上した

 「POBoxから“POBox Pro”を飛び越して、POBox pro2.0にジャンプしたので、さまざまな改善を盛り込むことができました。これまでの日本語環境に関する不満はだいたい一掃できると思います。特にインライン入力は、文字入力の手間を1ステップ減らせるので、力を入れました。そのほか、辞書学習の能力が向上しています」(安達氏)

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