半分根性・半分ノウハウで完成した“ハイエンドなベーシック”「SO905i」開発陣に聞く「SO905i」(2/2 ページ)

» 2007年12月28日 14時55分 公開
[田中聡(至楽社), (聞き手:平賀洋一),ITmedia]
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 またSO905iは、ドコモのソニー・エリクソン端末として初めてフルブラウザを搭載した。アプリケーション開発担当の藤山氏は、「ケータイでストレスなく見せるにはどうすればいいか」を考えて開発を進めたと話す。SO905iのフルブラウザには、使い勝手を向上させる新機能が数多く採用された。

 「例えばPagePilot機能を使うと、ページ全体を俯瞰して、その中から見たい部分に素早く移動できます。また、ブックマークや履歴はサムネイル表示が可能です。これは記録したWebページを視覚的に見せることで、ユーザーがきちんと選べるようにするためです。サムネイルは+JOGでスクロールできますので、親和性があります」(藤山氏)

photophoto ブックマーク一覧では、登録したWebサイトのサムネイル表示ができる(左)。Webページ全体を縮小表示し、目的の場所へ移動できる「PagePilot」機能(右)

 フルブラウザを起動したままディスプレイを表にして閉じると、ビューイングタッチキーで縦横にスクロールできる機能は実は後付けだったという。「内側のタッチキーはあくまでワンセグの操作用でした。しかし、横スタイルではフルブラウザを見ることもある。そこで、ビューイングタッチキーで操作できるようにしました」(藤山氏)

 そのほかの細かい点も、数多く改善された。キーレスポンスは、設定するきせかえツールによって反応速度が若干違うが「SO903iより遅いと感じることはほとんどない」(安達氏)という。

 さらに、メニュー画面の各項目に数字を振り、ダイヤルキーから各種機能にアクセスできるショートカットにも対応した。「アイコンに数字を入れても格好悪くならず、かつ見やすいようデザインしてもらいました」(安達氏)。そして、“キーの長押し”が従来よりも短くなっている。「長押しを検出するまでの時間を短くしています」(増田氏)

 「ちょうど丸2年くらい前のソニー・エリクソン端末、そうですね『SO902i』からFOMAを愛用いただいた方がSO905iを使うと一番びっくりするでしょう。ドコモの他機種から移った人には驚きが少ないかもしれませんが、自然にソニー・エリクソンのよさを体感していただけるはずです」(安達氏)というほど、UIの使いやすさ向上には徹底して取り組んだ。

 「とにかく、すごく細かいところにこだわりました。アイコンもVGA用に作り直していますが、その数は数千個に及びます。1つ1つに細かくグラデーションを入れたりしています。誰も見てないようなところにまで気合いを入れました。ソフトウェアの改善項目を挙げると3ケタもの数になります。ユーザーの声を聞いて改善したので、今後にも期待していただきたいですね」(安達氏)

 「今回はデバイス、デザイン、UI、すべてを変えました。いろいろ多機能になって、すべてを利用する方はいないかもしれません。しかし、ディスプレイやUIを利用しないユーザーさんはいない。この点の改善には、絶対的な自信を持っています。フルワイドVGA液晶やHSDPA対応など、ドコモ端末全体が変わっているタイミングで、我々としても生まれ変わって再スタートを切れたと思っています」(千葉氏)

モバイルBRAVIAエンジン非採用の理由、音楽機能へのこだわりとは

 SO905iのワンセグ仕様は、SO903iTVをほぼ継承している。だが、画像処理エンジンはSO903iTVで採用された「モバイルBRAVIAエンジン」ではなく、SO903iと同じ「RealityMAX」だ。「エンジンの違いは目で見てもほぼ分からない」と安達氏はいうが、なぜあえて差を付けたのだろうか。

 「このケータイは『BRAVIAケータイ』でも『ウォークマンケータイ』でも『Cyber-shotケータイ』でもありません。バランスよく過去の機能が全部入っている“ハイエンドなベーシック”を目指したので、ブランドが前面に出る商品にしたくなかったのです。モバイルBRAVIAエンジンは、BRAVIAというブランドを冠するにあたって、より最適なチューニングを行っていますが、RealityMAXも、BRAVIAの高画質エンジンを使っているので、根本のところで採用している高画質技術は共通です」(安達氏)

 「画質は液晶デバイス、画素技術、映像の加工技術など、いろいろな部分の組み合わせと積み重ねで完成します。デバイスから出た絵をいかに見せるかが重要なので、1つのデバイスだけでどちらがいいとは一概にいえません」(千葉氏)

 音楽機能の完成度も高く、「ほかの機能に埋もれがちですが、FOMA最強でしょう」と安達氏は胸を張る。主な特徴は、WMA再生への対応と、公称はしていないがVBR(可変ビットレート)のMP3ファイルを再生できる点だ。

 「SO903iではMP3を長時間再生できることが評価されているので、その点は継承しました。UIについては、外部メモリに保存した曲と内蔵メモリに保存した曲をシームレスに検索できるようにすることにこだわりました。内蔵メモリに保存した着うたフルと、外部メモリに保存した曲の入り口が違ってしまうのはおかしいですよね。当たり前のことですが、実際に使ってみるとその便利さを実感していただけると思います」(安達氏)

 ソニー独自の低消費電力技術「Virtual Mobile Engine」や高音質技術もSO903iから継承している。しかし、SO903i相当の量の本体内蔵メモリ(約750Mバイト)は見送られ、着うたフルを保存できる内蔵メモリとして約202.7Mバイトが割り当てられた。このほか、SO903iでは外部メモリにメモリースティック Duo/PRO DuoとminiSDを併用できたが、SO905iはmicroSDのみに一本化されている。

 「SO903iでやり残したこととして、メモリースティックかminiSDか、どちらに楽曲を保存するのか分かりづらいという声がありました。今回は、PCから転送する楽曲はmicroSDに、着うたフルは内蔵メモリに、という形にしています」(千葉氏)

 「(PCからSO905iへの転送時に?)ドラッグ&ドロップでMP3を転送できる仕様は、ソニー本体のオーディオプレーヤーでも採用していません。また、USB2.0に対応したことで、楽曲の転送速度が数倍に上がりました。SO903iを使っていた方はびっくりすると思いますよ」(安達氏)

 ここまで音楽機能が充実していると、Bluetoothに非対応なのが唯一惜しまれるが、その必要性はもちろん認識しているという。「Bluetoothについては毎回要望が出ています。もともと親会社のエリクソンが中心となって提唱した規格で、エリクソンはBluetooth製品を数多くリリースしています。Bluetoothの搭載は、今後の機種に向けての検討課題です」(安達氏)

 カメラはSO903iと同様の320万画素CMOSで、基本仕様や画質もSO903iと同等だという。ただしディスプレイを反転して閉じてデジカメスタイルで使えたり、ビューイングタッチキーでズームイン・アウトができるなど、操作性が改善されている。

 「フルワイドVGA液晶なので、写真のクッキリ感が全然違います。また、画像の表示や保存速度もアップしています」(安達氏)

デザインは「ホーム機器に近いシンプルなたたずまい」

photo デザイナー(本体)の竹井氏

 ソニー・エリクソン端末のデザインといえば、SO902iの「FOMA STICK」、SO903iの「音楽スタイル」、SO903iTVの「ワンセグスタイル」など、同時期に発売された他メーカーのモデルとは一線を画するオリジナリティを持っていた。しかしSO905iは、一見すると“とがっていない”落ち着いた印象を受ける。いったい、どのような意図でデザインされたのだろうか? 本体デザインを担当した竹井氏は、「ユーザーの間口を広げることが狙い」と話す。

 「ドコモ端末は905iシリーズで機能やサービス、買い方が新しいフェーズに入りました。これまでのソニー・エリクソンファンだけでなく、新しいユーザーを向いたデザインにすべきか悩みました。最終的には“おとなしい”“シンプル”という表現が当てはまるデザインになりましたが、これはデジカメやテレビなど特定の機能に特化したわけではなく、フルワイドVGAサイズのディスプレイが主役になるよう成立させた結果です」(竹井氏)

 SO903iは音楽、SO903iTVはワンセグ、SO905iCSはカメラに特化したデザインだが、「SO905iは機能が多いので何かに特化すると、必然的に使いにくい面が出てくる」(竹井氏)という。

 「ジョグダイヤルの復活でケータイの基本的な使いやすさが向上するので、それに伴ったダイヤルキーのレイアウトや凹凸感も見直しました。また、ミュージックタッチキーの上にある帯は、着信時に光ります。デザイン要素からなるべく“ノイズ”を減らし、すべてのパーツに必然性が出るようにしています」(竹井氏)

 SO905iの新しいデバイスとして注目したいのが、ワンセグ視聴時に使う「ビューイングタッチキー」と音楽再生時に使う「ミュージックタッチキー」だ。いずれも静電パッド?を用いたものだが、ハードキーではなく静電キーを採用したのも、デザインに「溶け込ませる」ことが狙いだという。

メインディスプレイの横にある「ビューイングタッチキー」(左)。背面パネルにある「ミュージックタッチキー」(右)。どちらも、使用時に浮かび上がるように点灯して、タッチするとフォースリアクタが振動する

 「ワンセグにタッチキーを搭載することは最初から決まっていましたが、問題は場所。SO903iTVはアンテナの下にワンセグの操作キーを収めていましたが、SO905iはディスプレイ側ボディの先端にあります。横画面にしてこのアンテナを伸ばした後、自然に操作できる場所ということで、ディスプレイ横にビューイングタッチキーを配置しました」(千葉氏)

 「ワンセグアンテナですが、一見すると分かりづらいかもしれません。ただ、一度分かれば問題はないと考えました。ならば目立たないほうがいいということで、アンテナはデザインに溶け込むよう、ディスプレイ側に搭載しています」(安達氏)

 「SO903iのように音楽プレーヤーに寄ったデザインも考えたのですが、SO903iの背面デザインがケータイとして使うときにちょっとうるさい、恥ずかしいという声がありました。そこでタッチセンサーを使ってボディに溶け込ませました。ただ、そのままでは押した時のフィーリングが分からないので、キーに触れると振動する『フォースリアクタ』を採用しました」(竹井氏)

 ハードキーではなくタッチキーを搭載したからといって、「機能的に決して見劣りしているわけではない」(安達氏)という。「ミュージックタッチキーは、SO903iと同等の操作をできるようにしています。SO903iTVで採用した、本体を傾けて置いてワンセグを見られるスタイルをなくしてしまうのもまずいので、デザインに溶け込むようスタンドを付けました」(安達氏)

 竹井氏によると、SO905iのデザインは「ホーム機器に近いようなシンプルなたたずまい」を第一に考えたという。ケータイはユーザー層が広いので、より多くの人に使ってもらうためにはバランスの良いデザインが求められる。

 「さり気ない、一見してそれが何か分からない形がデザインの1つの流れになりつつあります。ソニー・エリクソンがバランスというと“らしくない”“もっと尖がったものを”という声が出てきそうですが、今回はSO905i、SO905iCS、SO705iの3機種が出るので、SO905iは、905iというスタンダードラインの中で使いやすさを重視しました」(竹井氏)

0.1ミリ単位でテトリスがぎっしり詰まっている

 SO905iのサイズは、110(高さ)×49(幅)×19.7(厚さ)ミリで、重さは約134グラム。SO903iTVのサイズは高さ111×幅50×厚さ19.9ミリ、重さ約138グラムなので、SO903iTVよりも薄型軽量化が図られていることが分かる。SO905iのサイズは開発当初からほぼ決定しており、「自社比では相当頑張った」と千葉氏はその苦労を話した。

 「タッチキーが2つ入ることで、それぞれ1ミリ以上厚さが増します。タッチキーは静電式のため、使える部品の制約もありました。フォースリアクターの位置によって、センサーの大きさや割ける面積も違ってきます。センサーを覆う塗装の影響も考えなければなりません。設計、デザイン、センサーユニットを作っているメーカーと最後まで調整を続けました」(千葉氏)

 SO905iには3つのスピーカーが本体前面に搭載されているが、通常のステレオスピーカーよりもユニットが1つ増える分、コストも重さも増してしまう。それにもかかわらず搭載したのは、開発陣が音にこだわったからだ。横向きでは右側面の2つのスピーカーが稼働し、縦向きでは左側面と右側面(ヒンジ付近)の2つのスピーカーが稼働する。

 「ケータイで音楽やワンセグを楽しむとき、イヤフォンだけでなくスピーカーを使う場合もあります。ケータイをどう使っても、スピーカーは常に前に向けておきたい。後方に配置するのはもったいないので、表に出すことにしました」(千葉氏)

 タッチセンサー、3ユニットスピーカー、ジョグダイヤル、GSM、GPS、ワンセグ用アンテナ、FeliCaチップ――あらためて、これだけのデバイスや部品を搭載しながらSO903iTV以下のサイズを実現したことに驚かされる。

 「部品同士の隙間は従来の機種よりもかなり少なく、0.1ミリ単位のテトリスがぎっしり詰まっている感じです。ここまで来ると、半分根性、半分ノウハウですね(笑)。ジョグダイヤルをなくせばもう少し薄くなることは分かっていましたが、ジョグダイヤルは我々としては外せないデバイスでした。ジョグダイヤルのために基板に穴を開けて、レイアウトをやり直すことも多々ありました。また、カメラ部分を出っ張らせるとだいぶ楽になるのですが、出っ張りもなくし、機能特化したところを極力目立たせないようにしています」(千葉氏)

 「幅、長さ、厚さは数値だけを見ると他社さんの機種と比べてあまり目立つものではありませんが、ホールド感が全然違います。数字そのものも頑張ってもらいましたが、全体の面の取り方もすごく時間をかけて調整しました。ケータイの基本である持ちやすさも、ほかの機種に負けてはいません」(安達氏)

欲しいものが全部入った、使うほどに味の出るケータイ

 ワンセグ、カメラ、音楽プレーヤー、UI、そして+JOG――。SO905iには、そのシンプルな外観からは想像もつかないほど、ソニーグループが持つさまざまなテクノロジーが詰め込まれた。そして大事なことは、多機能を望まない人も快適に使えるデザインであることだ。

 「SO903iのミュージック、SO903iTVのワンセグ、そして他社に負けないスペックとしてHDSPA、GSMローミング、フルワイドVGA液晶、そしてソニー・エリクソンならではのジョグダイヤル。SO905iには、これまで言われてきた“欲しいもの”がすべて入っています。年配の方にも、ジョグダイヤルを知らない若い方にも、いい商品だと心から勧められます」(安達氏)

 ドコモの共通機能としては音声アプリ非対応なのが残念だが、これは「今回はほかの機能を優先させたため」(安達氏)だという。「翻訳アプリは海外でも使えるので、音声入力はキーになるでしょう。他社の動向を見ながら必要なインタフェースとして前向きに検討すべき項目と考えています」(安達氏)

 「これだけ機能が詰まっているのに、それらがいらないという人にとってもうるさくないよう配慮しています。+JOGもメーカーの押し付けではなく、カスタマイズしたり機能をオフにすることで、ユーザーの好みに合わせられる選択肢を持たせています。もちろん、われわれの考えるベストな設定をデフォルト設定にしていますが。使うほどに味の出るケータイなので、まずは触っていただきたいですね」(千葉氏)

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