コラム
» 2007年12月30日 23時55分 公開

勝ち負けがはっきり分かれた端末メーカー──iPhoneショック、共通プラットフォームの動向2007年の携帯業界を振り返る(3)(3/4 ページ)

[房野麻子,ITmedia]

Appleの「iPhone」がもたらしたもの

ITmedia 今年の端末に関連するトピックとして、iPhoneショックというものもありました。

神尾 石川さん、日本でiPhoneはどこから出るんですか?(笑)

石川 ドコモでしょう……って、分かるわけないですけど(笑)

神尾 中村(維夫)社長は仕事人ですからね。あんなにソフトバンクモバイルが騒がれていたのに、仕留めるときには速いですよ。

石川 アップルのインサイダーサイトには、もう供給先がドコモに決まった、というような書き方がされていましたね。

神尾 消去法で考えると、まずauはあり得ません。残る2社だったら、まず可能性が高いのはドコモでしょうね。

石川 アップルにしてみれば、大きなところと組むのがいいでしょうし。

神尾 個人的には、条件面での妥協が見つかるかどうかに興味があります。

石川 たぶん、ドコモから出るとしてもiモードは載せないでいいことになるでしょうね。「hTc Z」や「F1100」「HT1100」なんかのスマートフォンにも、moperaは載っているけれどiモードは載せていない。ああいった路線を認めているので、iモードは必須ではないと思います。ドコモとしては、土壌も整っているし、ブランドイメージも上がるでしょう。もしかしたら、リンゴマークが赤い星になっているかもしれないですけど(笑)

神尾 それは持ちたくないなあ(笑) それをやった瞬間に、ドコモは焼き討ちですよ。アップルファンが山王パークタワーを取り囲みます。

石川 個人的な希望としては、iPhoneが入ってくることによって、日本のメーカーにはもっと面白い端末を出してほしい、ということに尽きます。

ITmedia ユーザーインタフェース(UI)見直しの気運が高まったこともありますね。

石川 日本では三菱が2画面の“DSケータイ”(D800iDS)を出しましたが、あまりに売れなかったので、タッチパネルはダメじゃないか、ということになりかけたこともあったわけですが……

神尾 あれはそもそも、UIのコンセプトがあり得ませんでしたよ。タッチパネルのメリットは見たものをそのまま触れられることなのに、なんで情報を出すところと操作するところが分離しているの? ということです。

石川 本来、直感的なものなのに、ってことですね。

神尾 そう。あれは、たぶんニンテンドーDSに“インスパイア”されちゃったんだと思うんです。ゲームは本来、情報が出る場所と操作する場所が“分離”しているものなんですよ。

 しかし、ケータイやカーナビ、ATMなどのタッチパネルで考えますと、“情報”と“操作”は分けてはいけないんですよ。一体であるからこそ、分かりやすさが生まれるわけですから。

石川 ということもあって、日本でタッチパネル端末は悪い過去になりそうだったところへ、iPhoneが出たことによって、タッチパネルもありじゃないかということになったわけですね。また盛り上がってくるかな、と思います。

神尾 ドコモの立場からすると、iPhoneはゼロから彼らの責任で開発させているわけではないので、実はリスクが少ないですよね。外のものを持ってくるだけだし、売れなきゃ売れないで1回でやめちゃえばいいだけの話。

石川 普通の端末に比べてリスクはかなり少ないですよね。

神尾 moperaだけに縛らないでほしいな、という気はしますけどね。できれば、.Macメールをプッシュ配信してほしい。

石川 それができればいいですね。

ITmedia iPhoneが果たした役割、という部分は、どうご覧になっていますか?

神尾 ケータイのデザインやコンセプトで、まだまだ“新境地が作れる”いうことを示したのが大きいと思います。物理的キーをなくすという発想は、今まで主流の発想ではあり得なませんでした。電話屋はまじめに考えないものなんです。それを、真剣に出そうという方向性を作ったことはメリットですよ。でも、そう考えると、J-フォン時代のパイオニアの全画面ケータイ(J-PE01など)はすごかったですね。

 あと、UIで一番大事なことは“統一感”だということを示してくれたのは良かったと思います。

石川 個人的に興味深く思ったのは、最近業界では、水平分業(が必要)、っていわれていますけど、iPhoneはガチガチの垂直統合なわけですよ。垂直統合であるからこそ、あのビジネスモデルでも成り立つし、iPhoneのような端末も出る。そういったことから、垂直統合がいいのか水平分業がいいのかということを考える上で、いい機会になった端末だと思います。

神尾 もう一歩踏み込んで考えると、あれは“水平統合”なんですよね。iPodと同じなんです。個々の要素を見ると水平分業型を組み合わせているんですけど、アップルがコンセプトで垂直にくくっているんですよ。例えば、iPodの中身は汎用品の集まりで、iTunesも基本的にはインターネットという汎用的なインフラの上で展開しています。でも、アップルのiTunes、iPodという1つのコンセプトで垂直統合しているんです。つまり、実質的な水平分業型のものを、コンセプトとプロダクトで垂直統合するという、水平統合型モデルがケータイでもできる、ということが新しい。この水平統合型は、実は日本市場で折り合いをつけるのにいいモデルではないかと考えています。

 あと、アップルという会社は、新しいものを指し示してくれます。スポットライトを当てるのが彼らの仕事なので、そこに向かって他社がどういうアプローチをしていくのかが興味深いですね。

石川 そうですね。

神尾 iPhone、出たら買うでしょ?

石川 買いますね。

ITmedia ケータイとiPodを2つ持つよりは、1個で済む方がいいと。

石川 電話はできたほうがいいですよ。

ITmedia 手のひらでSafariが使えるだけでもうれしいですよね。

神尾 確かに。私がiPhoneで一番評価したのはSafariです。私はフルブラウザに対して「こんなもの使えるかっ」という固定概念を持っていたのですが、それを見事に崩してくれましたから。

石川 今のケータイで使いやすいフルブラウザってほとんどないですね。N905iなどに搭載されているピクセルブラウザくらいかな。でも、全体的に使い勝手がよくないわけですよ。その点、iPhoneのSafariはすごく使いやすくできているし、あれなら外出先でも(Webサイトを)見ようという気になりますね。あと、写真にしても何にしても、あの画面サイズと直感的に使える操作感がいい。ノートPCを持ち歩かなくていいと思わせる端末になっていますね。

神尾 あと、iPhoneショックは、「Windows Mobileがいかに使いにくいものか」ということを実証してくれた点でも評価したいですね。マイクロソフトはアップルよりも開発リソースがあるはずなのに、なぜ「これほど使いにくいものしか作れないのか?」と強く聞きたい。逆にいうと、iPhoneはスマートフォンにかすかな光明を見せてくれた。iPhoneくらいのクオリティだったら、スマートフォンにも未来があるかもしれないと思います。

 でも、iPhoneはスマートフォンではないかもしれない。すごく汎用的で新しいネット端末ですよね。

石川 iPhoneはネット端末版のらくらくホンなのかな、という気がしていますね。

神尾 私の中ではiPhoneをスマートフォンというくくりにはしたくなくて、iPhoneはiPhoneというカテゴリになっちゃったな、という感じです。iPhoneには、これで何か生産性の高いことをしなきゃいけないとか、バリバリに仕事をしている雰囲気をかもし出さなきゃいけない、みたいな脅迫観念はないですからね。持っていて、素直にうれしいんです。

石川 そうですね(笑) 今後、ラインアップに何が出てくるのか楽しみですね。いろんな端末が出てくると面白いですね。

神尾 あと、iPhoneが出たことでシャープへの期待が高まっているような気がします。シャープだったら匹敵するものを作れるだろうと。接触ポイントを複数認識する新型の光センサ内蔵システム液晶を出しましたので、期待したいですね。

石川 あとは、それが格好いいか、ですね。

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