「あまりに急」「検閲では」――携帯フィルタリングに事業者から不満続出(2/2 ページ)

» 2008年01月22日 16時40分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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フィルタリングの実効性は

 「フィルタリングは“魔法の杖”ではない」と、岸原事務局長は言う。「フィルタリングサービスは、サイトをカテゴリーに分類するだけ。どんなサイトを閲覧可能にするかは本来、ユーザーが家庭で決めるものだ」(岸原事務局長)

 だがキャリア各社が発表してるサービスは、アクセス可能なサイトカテゴリーなどをキャリア側が指定して一律でブロックする仕様。問題ないサイトだけ見られるようにする「ホワイトリスト方式」、問題のあるサイトへのアクセスをブロックする「ブラックリスト」方式など手法はキャリアによって異なるが、アダルトサイトや自殺サイト、出会い系・コミュニティーサイトなどのカテゴリーは丸ごとアクセス制限の対象。サイトの中身を個別に判断してアクセスの可否を決めたり、ユーザーや親権者がアクセス先を選ぶこともできない。

画像 道具社長

 南場社長は「モバゲーはリアルでの出会いを禁止し、問題のある書き込みがないかパトロールするなど、月に数億円をかけてトラブルを防ぎ、ユーザー保護への努力を続けている。それでも『ユーザーが書き込む機能があるから』とアダルトサイトや自殺サイトと同列に『有害』とされる。サービス運営者として屈辱」と不満をもらす。

 モバゲーと同様、10代に人気の投稿小説コミュニティー「魔法のiらんど」担当者も会場から発言し、ユーザー間のトラブルを防ぐ仕組みについて説明した。魔法のiらんどは「アイポリス」という独自の仕組みで書き込みなどを監視。「サービスを8年間運用してきたが、最近はクレームも減り、警察から捜査協力を依頼されることも減った」と有効性を強調する。

 PC向けフィルタリングソフト「iフィルター」を開発するデジタルアーツの道具登志夫社長は、サイトを属性別に一律ブロックするのは間違いで、各家庭で親子で話し合い、見ていいサイトとそうでないサイトのルールを決められるようにすべきと話す。「当社のPC向けフィルタリングは、保護者がホワイトリスト・ブラックリストを管理できる。携帯でもそういう仕組みを取り入れるべきだろう」(道具社長)

 MCFでは、健全なサイトを認定する第三者機関を設置。4月から認定を始める予定だ。

「サイトがきっかけで出会って殺人事件」、誰の責任?

画像 岸原事務局長

 「モバゲーではリアルの出会いは一切禁止しているが、『事故』も皆無ではない」と南場社長は認める。モバゲーがきっかけで知り合った30歳の男に女子高生が殺害される――昨年起きた事件以降、モバゲーは未成年のメール制限や監視体制強化を発表し、未成年者保護策を強化してきた。

 「そもそも、事件が起きたらそのサイトの責任なのか」と、岸原事務局長は疑問を投げかける。「事件は、学校などリアルな場でも起きるが、それは『学校のせい』なのか。サイトが人を殺せるわけではない。問題の所在や責任が誰にあるのか、考える必要がある」(岸原事務局長)

「検閲では」という指摘も

画像 中村教授

 キャリア各社は、未成年者の携帯には原則、フィルタリングを導入する予定。親権者がショップに出向くなどして不要の意思表示をしない限り、早ければ6月から、未成年者の携帯電話にアクセス制限がかかることになる。

 「フィルタリングがデフォルトで入るとなると、検閲にきわめて近い。契約上の問題や法律問題に発展し、キャリアが訴訟を抱えることにもなり得るのでは」と岸原事務局長は指摘する。

 南場社長は「現在のフィルタリングの申し込み票には、どんなサイトが対象になるか書かれていない。『モバゲーが急に見られなくなって困っている』という問い合わせも当社に来ている。せめてどういうサイトがフィルタリング対象で見られなくなるか、キャリアは親権者に説明してほしい」と注文を付ける。

 菊池准教授は「キャリア側も携帯ネットがこんなスピードで広がるとは想定していなかったため、場当たり的な対応になったのだろう」と推測。「キャリアがフィルタリングを導入するには設備投資が必要で、ARPU(契約者1人当たりの収入)も下がり、訴訟リスクも抱える可能性があるため、やたらにはやりたくないはず。ただ『子どもが心配』という親の気持ちも分かる――という状況だろう」

 司会を務めた中村伊知哉・慶応大教授は「ネットの安全と表現の自由の狭間のデリケートな問題で、本来は時間をかけて教育し、親・教師・子どものリテラシーを高めていく必要があるが、今は迅速な対応も必要。携帯電話のネット機能が他国に先駆けて発展した“世界チャンピオン”の日本が、産みの苦しみを今味わっている」と話した。

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