前機種は勝てなかった部分もあった、だからこの“VIERAケータイ”に込めた──「P905iTV」開発陣に聞く「P905iTV」(3/3 ページ)

» 2008年04月03日 20時30分 公開
[岩城俊介,ITmedia]
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「されど“ケータイ”である」

 正面から見ると画面だけ。フルスライドスタイルを採用したP905iTVは、やはり“テレビ”としての印象を強く受けるデザインを特徴としている。

photophoto “VIERA”と“Panasonic”のロゴ効果も含め、正面から見るとまるでテレビ。卓上ホルダが本体に付属することもそうだが、ドコモ以外のロゴが正面に入るのもドコモ端末には珍しいこと。なお、卓上ホルダを付属する交渉と同様に、このロゴの位置やサイズを決める社内・グループ内の作業も難航したとか。大きいディスプレイを搭載するが、手に取ると意外に薄く軽量。ダイヤルキーや十字キーの配置にも窮屈な印象はそれほどない。「“つけ爪”して操作感を試したりもしました」(山下氏)とのこと

 「3.5インチというワンセグ携帯最大の画面サイズを聞いた時、“テレビになるな”と直感しました。まずテレビになるのであれば、テレビ以外の視覚的ノイズを消していくことを考えました。また、テレビは映像だけでなく音もきちんと出なければなりませんし、さらに“ケータイ”なので持ちやすさも絶対必要です」(デザイン担当の山下氏。以下、山下氏)

 ディスプレイ面はぴしっとフラットで画面だけ。ステレオスピーカー付きの卓上ホルダにセットすると、おそらくだれもが「あぁ、テレビだね」と思える存在感がある。

 一方“ケータイ”として使うために手に取ると、3.5インチの巨大ディスプレイを搭載する外観からは意外と思えるほど持ちやすいことに気がつく。裏面に施したテーパー加工により指に“角”を感じず、薄く軽量、ディスプレイを開いた時の重量バランスもよく練られている。厚さ17.9ミリ、重量約129グラムという数値は、実はP905iより薄くて軽い。

 「ただ、実はデザインで細かく定義したところはなく、むしろ“手を入れないことに手を入れた”という感じです。P905iTVは当初、3インチ、3.2インチ、3.5インチの画面サイズで比較しながらデザインイメージを考えましたが、3.5インチに映像が映るとそのインパクトが格段に違いました。本当にテレビみたいだと。そのためにしたことは“余計なことはしない”。とにかくストイックなくらい余分な細工をせず、映像と音の出口だけがあるような、誰が見ても“これはテレビだね”と思ってくれるようなデザインにしたいと思いました」(山下氏)

 P905iTVは“ケータイ”である。ケータイであるからには、ファッション性や持ちやすさ、使いやすさなども両立させなければならない。音の要素もテレビには重要だが、大きい音を鳴らせるスピーカーを載せるならどうしてもサイズの制限を超える。それはステレオスピーカー付きの卓上ホルダが解決した。通常は別売りオプション扱いのドコモ端末で卓上ホルダが付属するのはかなり珍しい。

 「当然、いろいろな経緯はありましたが(笑)、商品の特徴をとがらせようとしたとき、買っていただいた人にもっとそれをより体感していただきたいと常に思っていましたので、これはこだわりました。大画面と高画質と高音質で“VIERAケータイ”というわけですね」(野中氏)

 この卓上ホルダは、出力0.5ワット(瞬間最大1ワット)/音圧94dBSPLのスペックを実現する直径9センチのスピーカーを2つ搭載。スピーカーボックスの容積も本体に内蔵するスピーカーとは比べものにならないほど確保され、低音も伸びやかに再現する。「いわゆるポータブルオーディオ用の外部スピーカーキットなどと比べても遜色ない」(野中氏)ほどのアンプ回路も内蔵し、音量を上げても“音割れ”なく、ワンセグ視聴はもちろん、オーディオプレーヤーとして十分活用できる性能を備える。

 卓上ホルダに設置すると、かなりの音量で音を出力できる。これだけの音量が出るなら、例えばプライベートルームやベッドサイド、キッチンなどで、家事中や仕事中などに使うポータブルテレビ兼オーディオプレーヤーとしても十分使えるだろう。サラウンドや失われた高音域部を補正するリ.マスターといったサウンド効果設定も行える。

photophoto プライベートルームなどに設置し、ポータブルテレビあるいは音楽プレーヤーとして活用できるほどしっかりと音が鳴るステレオスピーカー付き卓上ホルダ(左)。もちろん、本体にもディスプレイの裏に2つスピーカーが備わる。ボディがななめにカットされ、ディスプレイの裏から出た音が正面へ回り込むようなデザインがなされている(右)
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 ボディカラーに、いわゆるAV機器っぽいイメージのブラックに加えてホワイトを用意したのも家庭で使うシーンも必要と考えたためだ。

 「P905iTVを望むユーザーは、携帯に高い性能を求める30代から40代の男性が中心になるとは思います。ただ、テレビは家庭の中でベッドサイドやキッチンなどで使うイメージもありますよね。そうなると、いかにもAVテイストのブラック&シルバーでないものもあるべきと考え、住空間にマッチするホワイトも用意しました」(山下氏)

 最近のケータイは多色展開が盛んで、折りたたみスタイルの端末には特にその傾向が強い。これは、ある程度市場が成熟した製品がたどる道だという。家庭用のテレビもライフスタイルに合わせたカラーフレームモデルが人気商品の1つになってきている。

 「ただ、P905iTVのように“そもそもケータイなのになぜこのような形なのか”というような、新しいコンセプトでまだカテゴリとして認知されていないものはあまりに飛躍しすぎると受け入れにくい傾向もあります」(山下氏)

 「検討という意味では多くの色の議論はしました。じつは作りました、キンキラキンやどピンクの試作機も。ただ、早々にボツになってしまいましたね(笑)。P905iTVの製品コンセプトは視覚的なノイズが少なく、画面や音声に集中できること。カラーに過度に目が行ってしまうと本来のこのコンセプトから少し外れてしまうという結論になりました」(野中氏)

「スマートフォンの仲間入り」……してはだめ?

photo 兄弟機の「P905i」とP905iTV

 「P905iTVは3.5インチの大型ディスプレイを軸に“テレビとしての映像・音声”を特化した端末ですが、ケータイとしての範疇に収まる範囲にあることもポイントです。Windows Mobile搭載のスマートフォンのような、いろいろ機能があり大きくなっていくカテゴリもありますが“そちらの仲間入りをしてはだめだ”という考えはありました」(山下氏)

 3.5インチの大画面で、表面が全てディスプレイのフルスライドボディ。P905iTVを操作した第一印象として、iPhoneやWindows Mobile搭載のスマートフォン製品のようにタッチパネルで操作できればと思った。ディスプレイが縦だけでなく横にも開き、QWERTYキーボードが出現すればな、とも思った。こんなスマートフォン化は、パナソニック モバイルとしてはどうなのだろうか。

 「うーん、そうですね(笑)。我々はまだケータイでがんばりたいと思います。今回は画質の追求が大きなテーマでした。タッチパネルやタッチセンサーの操作性や可能性は否定しませんが、皮脂の付着や感圧式のタッチパネルを採用した際の画質低下などを勘案した経緯もあります」(野中氏)

 「目新しさで採用するのか、本当に便利なのか、という評価結果が実際のところあまりそろっていないのも現状です。もちろん検討というか開発におけるネタには上がっていますので、今後のユーザーニーズなどを見て決めていきたいですね」(山口氏)

 では、スマートフォンを出すのであれば……?

 「やはり“Let'sケータイ”……になるのでしょうかね。それ、言わせたかったんではないですか(笑)。ともあれ、そういう方向性で仕上げるなら、もっと違う性能、機能が必要になりますね」(野中氏)

卓上ホルダの中身を見てみた

 P905iTVには「スピーカー付き卓上ホルダP01(AAP39395)」が付属するが、もちろんオプション品として購入も可能だ。単体購入時の価格は1995円(税込み)ほど。一方、P905iの卓上ホルダはそもそも別売りで価格は630円ほど。2008年4月現在、それぞれの端末購入価格がそれほど変わらないことを考えると、P905iTVはちょっとお得かもと思えてくるがどうだろうか。ちょっと中身を見てみた。

photophoto スピーカーカバー(ネットというほどのものではない)を外すと、直径9センチのスピーカーある
photophoto アンプ基板はこのような感じ。基板左にあるコネクタはFOMA ACアダプタ用端子(左)。スピーカーユニットは1つずつ“箱”に入り、密閉型っぽい様相(ただ、樹脂素材のガワにはめてあるだけなのですき間はある)
※注意:製品を分解/改造すると、メーカー保証は受けられなくなります

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