東京・ビッグサイトで開催中のイベント「COLOR SESSION 2008」のNECブースに展示された6枚のプレート――。これが“N”のケータイデザインの新たな方向性を示している。
プレートにはそれぞれ、異なるデザイン処理が施されている。クリアなパネルの奥に模様が浮かび上がるもの、異なる柄を異なる奥行きで組み合わせたもの、メタリックな輝きを持つもの、革のような手触りを持つもの、ミラー表現とグラフィックを組み合わせたもの、新たな加色表現で色味の変化を表現したもの――といった具合だ。ケータイといえば、フォームファクターに注目が集まることが多いが、NEC モバイルターミナル事業本部 クリエイティブスタジオの由野まどか氏は「形だけではなく、色やグラフィックで表現できることも多い」と話す。「今後の新モデルには、このプレートのイメージを思い出すようなものがあるかもしれない」(同)。
ブースで配布している資料によれば、2008年のNECケータイのコンセプトは「シンクロニシティ」(Synchronicity)。膨大な情報が駆けめぐり、さまざまな価値が生まれては形を変えていくネット社会にフィットしたケータイデザインを目指すという。NECがその答えの1つとして見出したのが“曖昧さ”だ。それは、異なるものが1つに融けあい、響き合うことで生まれる新しい“美”であるとし、曖昧で豊かな美しさを、色と素材、仕上げの三位一体で表現することを目指す。
ブースには、これまでの“N”ケータイのデザインの転換期に登場した端末も展示されている。2005年に登場した「N901iC」は、弧を描く美しいラインで人気を博した“アークラインケータイ”シリーズの1モデルで、アシンメトリーな背面デザインと、質感にこだわったテクスチャーを採用した端末。ユーザーが携帯電話に“新しい何か”を求め始めた時期と一致したことから、大ヒット端末となった。
その後登場したのが、印刷の色表現の元になる4原色をボディカラーに採用した「N702iD」(2006年)と「N703iD」(2007年)。ヴィヴィッドな4色のカラーバリエーションで展開し、製品の色が持つパワーを生かしたメディア展開で注目を集めたのも記憶に新しい。「グラフィカルな雰囲気がそのまま製品になった。ビビッドな色の組み合わせが新しいチャレンジ」(由野氏)
そして2008年には、素材の質感に目を向けた端末として「N705i」(amadanaケータイ)と「N705iμ」が発売された。この端末が登場した時期には、“携帯をファッションの一部としてとらえる”ことが普通になり、NECでは端末デザインに“素材を五感で楽しむ”要素を取り入れた。
amadanaケータイではソファーや木などのインテリアが持つ質感を携帯に取り入れ、N705iμにはボディにステンレス素材を採用することで、“本物の持つ高級感”を携帯電話に反映させている。
こうしたチャレンジを経てたどりついた「シンクロニシティ」というテーマを、NECはどうデザインに取り込むのか。今後の新モデルに注目したい。
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