“ホワイトオセロ”戦略で逆転を狙う――ソフトバンクモバイル、法人市場への自信神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)

» 2008年05月12日 15時01分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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 「(ドコモやKDDIなど)他社は法人顧客向けに複雑な料金プランや割引サービスを用意していますが、我々の基本は『ホワイトプラン』です。そこに『Wホワイト』や『ホワイト法人24』などを用意していますが、法人向けだからといって他社のように料金プランや割引を複雑にしていません。お客様に分かりやすく、なおかつお得であるというのが、我々のポリシーになっています」(平野氏)

 法人市場では顧客企業に相対で割安な料金プランや割引を提示することが多いが、ソフトバンクモバイルでは、そういった特殊な割引が適用されるケースはほとんどないという。シンプルに安い料金をきちんと“見せる”ことで、「(顧客に差をつける)不公平なやり方はしない。フェアにいきたい」(平野氏)という。

 「お客様にとっても、料金プランや割引が複雑で(適用)条件が多いというのは、導入検討の手間や運用を考えると、(管理が)煩雑になってあまりメリットはないのですよ。ですから、シンプルな提案を心がけています」(平野氏)

 これはソフトバンクモバイルにとって、副次的なメリットもある。料金プランや割引が多く、顧客ごとに最適となる組み合わせが膨大になると、営業担当者が“顧客企業にとって最適な提案を作る”ための労力や負担が増える。また、顧客企業の携帯電話の利用パターンが変化すれば“最適な解”も変わるので、定期的な見直しも必要になる。

 しかし、ソフトバンクモバイルのように料金プランをはじめから安くして数を絞れば、顧客企業ごとに最適となる組み合わせも減るので、「(法人契約を獲得する)販売サイドが売りやすい」(平野氏)のだ。営業担当者の負担や手間は小さく、あらかじめ顧客獲得がしやすい仕組みになっているのである。

 そして、もう1つ大きな武器が、ソフトバンクモバイル同士の「音声定額」である。

 「他の携帯電話会社でも、法人顧客向けの音声定額は始まっていますが、それらは同じ会社の社員同士のみです。しかし、我々の音声定額は、ソフトバンクモバイルユーザーならば誰でも音声定額になる。この違いはとても大きい。

 法人のお客様もこの点は理解していただいていまして、ソフトバンクモバイルに加入したお客様は、取引先など他の法人様にソフトバンクモバイルを勧めてくださる。お互いに(音声定額で)安くなるからです。

 我々はこういった状況を『ホワイトオセロ』と呼んでいます。ビジネスユーザーの間で次々とソフトバンクモバイルユーザーが増えれば、ホワイト(で音声定額の)仲間が増えていく。みんながハッピーになれるのです」(平野氏)

 5月8日には、平野氏がいう“ホワイトオセロ”に、ソフトバンクテレコムの固定電話とも音声定額という「ホワイトライン24」が加わった。ビジネスシーンにおけるソフトバンクのホワイトシリーズの浸食と拡大は、予想以上のスピードで進展している。

「使いやすさ」を重視して、データ通信需要を底上げ

 法人市場ではコンシューマー市場以上に「音声定額の環」が拡がりやすい。これはソフトバンクモバイルより先に、ウィルコムが実証していた事実である。だが、逆説的にいえば、そうした連鎖的な音声定額ネットワークの拡大は、通話料収入を漸減させてしまう。法人市場はいまだ「音声通話が需要の中心」(キャリア幹部)であり、そこでの音声定額の推進は将来の収益性に禍根を残さないのだろうか。

 「法人市場での収益に関しては、データ通信という付加価値の開拓で十分に拡大できると考えています。法人でのデータ通信サービスというと、他社は高度なサービスやソリューションばかり提供していますが、それだけでは多くのお客様にサービスが拡がりません。そこで我々は『Bizフェイス』というASPサービスを作りました」(平野氏)

 Bizフェイスでは、携帯電話の待ち受け画面やキーの機能設定を顧客企業が自由にカスタマイズし、社員が“普通のケータイを使う感覚で”業務システムやグループウェアを利用できるようにしたものだ。Windows Mobileなどのオープン系OSを活用したものと異なり、一般的な携帯電話の待ち受け画面やテロップ表示機能を使うことで、一般的なケータイと違和感のないUIを実現しているのが特徴だ。さらにASPサービスなので管理者の負担も少ない。

 「専門のシステム部門がなくても導入できて、(エンドユーザーである)社員も使いやすい。それでいて業務に必要なことはすべてできる」(平野氏)。この「Bizフェイス」はソフトバンクモバイル内部でも日常的な業務で使用されているという。

 「我々は『パカッとアプリ』と呼んでいるのですけど、Bizフェイスはとにかく、簡単さと使いやすさにこだわって作りました。データ通信サービスを使いやすくして提供する。我々の基本はインターネット企業ですから、こういった取り組みには自信があります」(平野氏)

ソフトバンクモバイルは王道を行く

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 法人市場は2007年の半ばから急速に立ち上がり、冒頭で述べたように今年3月の段階で「市場に火がついた」状況に入った。各キャリアは詳細な法人契約数や比率を公開していないが、ソフトバンクモバイルで「(2007年の)1年を通じて急速に法人の販売比率があがってきているのは間違いない」と平野氏は言う。

 「さらに今後を展望しますと、法人市場は引き続き2ケタ成長を続けていくでしょう。(法人の)契約数はさらに伸ばせますし、ARPUもかなり伸ばせると考えています。

 我々としては、この法人市場において王道を行きたい。オープンかつフェアな姿勢で、お客様にとってメリットのある料金やサービスを提供し、ビジネスユーザーにとって本当に価値があって使いやすいインターネットサービスも提供していきます」(平野氏)

 さらに法人市場は新興市場であるため、ソフトバンクモバイルの優位や勢いがシェア拡大という結果に結びつきやすい。同社は「10年後には業界1位」という目標を掲げているが、今の勢いならば法人市場におけるトップはそう遠からず射程に入るというのだ。

 「今の法人市場はとにかく動きが速い。ここならば、コンシューマー市場より早く(業界1位という)結果が出せるかもしれませんね」(平野氏)

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