あらためて知る、「Windows Mobile」のルーツと生い立ち:「Windowsケータイってなに?」と聞かれて困らないために(1/2 ページ)

» 2008年05月23日 16時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

 最近、マイクロソフトのWindows MobileをOSに採用した、Windowsケータイと呼ばれる携帯端末が増えている。2005年12月にウィルコムが発売した「W-ZERO3」以降、ウィルコムが「W-ZERO3[es]」「Advanced/W-ZERO3[es]」、ソフトバンクモバイルが「X01HT」「X02HT」「X03HT」「X01T」、イー・モバイルが「EMONSTER(S11HT)」、NTTドコモが「hTc Z」「F1100」「HT1100」を発売。国内の主要キャリアがWindows Mobileを採用した製品を提供するようになった。

 また種類は少ないが、HTCから発売されている、特定のキャリアに縛られないSIMロックフリーの端末も存在し、そのバリエーションは増えるばかりだ。現時点で唯一Windows Mobile端末をリリースしていないKDDIも、同社がSaaS分野に関してマイクロソフトと提携していることなどを考えれば、近い将来の製品投入があっても不思議ではない。

PhotoPhoto さまざまな種類のWindowsケータイがNTTドコモ、ソフトバンクモバイル、イー・モバイル、ウィルコムから発売されている。左はウィルコムのW-ZERO3/Advanced[es]、右はソフトバンクモバイルのX03HT
PhotoPhoto 左はイー・モバイルのEM・ONEα、右はNTTドコモのF1100

 というわけで、日本でもすっかりおなじみになった感があるWindowsケータイ/Windows Mobileだが、あらためて「Windowsケータイって何?」「Windows MobileってWindowsなの?」と聞かれると困ってしまう人もいるだろう。名前にWindowsとついていても、ちょっと触ってみれば、Windows MobileがPCでおなじみのWindows XPやWindows Vistaとはかなり様子が異なることは誰にでも分かる。例えばアプリケーションを閉じても終了しないこと、マルチタスクであっても、同時に画面に表示されるアプリケーションが1つに限られることなどが挙げられる。

 その一方でWindowsケータイには、Windows Media Player MobileやOffice Mobile(Word、Excel、PowerPoint、OneNoteのWindows Mobile版)など、PC用のコンテンツやアプリケーションデータを活用する専用アプリケーションが搭載されるなど、Windowsとの親和性が高いという特徴もある。Windowsという名前がついていて、Windowsのようだけど、普通の(PC用の)Windowsとはちょっと違う。そんなWindows Mobileとは何なのか、どうやって誕生したのかについて見ていこう。

Windows Mobileのルーツ

 マイクロソフトによるとWindows Mobileとは、「携帯端末向けに最適化されたOSとアプリケーションのパッケージ」だという。アプリケーションというのは、上で触れたWindows Media Player MobileやOffice Mobileのようなソフトウェアを指す。「携帯端末向けに最適化されたOS」のベースになっているのはWindows CEと呼ばれるOSだ。

Photo Windows CE 1.0を搭載したNECのMobile Gear MC-CS13

 Windows CEは、最初のリリースが1996年11月に発表された、マイクロソフトによる汎用の組み込み機器向けOS。公式にはCEは、特定の言葉の略称ではなく、Compact、Connectable、Compatible、Companion、Efficientなどの意を含むとされている。しかし発表当時は、Consumer Electronics、Compact Editionなどの略ではないかと言われた。要するに、こうした機器に組み込めるよう、サイズを小さくし、省電力の組み込み用ハードウェアでも動作するにしたWindows、という解釈と考えると分かりやすい。

 ただしWindowsといっても、PC用のWindowsと直接的な互換性、バイナリ(アプリケーションあるいはデバイスドライバ)レベルの互換性を持っているわけではない。強いて言えば、当時のマイクロソフトにおけるハイエンド向けOSであったWindows NT(Windows XPやWindows Vistaのルーツ)に近いコンセプトで設計された、ポータビリティ(移植性)の高い組み込みOSというところ。対応するプロセッサは、MIPS、SuperH、x86(発表当時)で、ARMは後に追加されたが、現在はARMが主流となっている。スマートフォンのプロセッサも、ほぼすべてがARMベースだ。Windows NTも、x86以外で最後まで残っていたAlphaのサポートが1999年に打ち切られるまで、MIPSやPowerPCなど、複数アーキテクチャのプロセッサをサポートしていた(現在はx86とIA-64のみ)。さらにWindows NTもWindows CEも、開発のベースとなったオリジナルのプロセッサはMIPSだと言われており、開発チームの人材の重なりが推定される(旧DECシアトル事業所の人材が中心になったとも言われている)。

 加えてアプリケーション開発においても、PC向けWindowsに類似したAPIセット(Win32 APIのサブセット)やライブラリ(MFCおよび.Net Frameworkのサブセット)の提供、共通した開発ツールの利用など、Windowsでの開発経験を持つプログラマが、その経験を生かせるよう配慮されている。Windows PCとのデータのやりとりも、専用の同期ソフト(Windows XPまではActiveSync、Windows VistaはWindows Mobile Data Center)が提供されており、親和性が高い。

 こうした特徴を持ちながらWindows CEは、開発当初、アプリケーションを含むパッケージとして4Mバイトの不揮発メモリ(ストレージ)に収納可能で、2Mバイトのメモリで動作することが目標とされていた。現在ではOS自身の機能拡張やアプリケーションの強化により、パッケージ全体としてはるかにサイズが大きくなってしまったが、それでもOS本体のみの最小構成であれば300Kバイト程度で収まるという。組み込み用に最小構成としたWindows XP Embeddedでさえ40Mバイト(300Kバイトの約133倍)とされていることを考えれば、いかにWindows CEがコンパクトであるかが分かる。

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