MediaFLOとワンセグを1台の端末で──オープンな姿勢で臨むクアルコムのMediaFLO戦略(1/2 ページ)

» 2008年05月29日 17時25分 公開
[神尾寿,ITmedia]
Photo QUALCOMM MediaFLO技術開発部門 バイスプレジデントのマイク・コード氏

 米QUALCOMMが5月28日(現地時間)、米国サンディエゴで報道関係者向けに技術紹介イベントを実施。その中で、「MediaFLO」における最新の取り組みやQUALCOMMの姿勢、商用化で先行した北米市場の動向などについて話した。

 プレゼンテーションの冒頭、QUALCOMM MediaFLO技術開発部門のバイスプレジデント、マイク・コード氏は、モバイル向けマルチメディア放送に向けた取り組みが世界各地で活発化していると紹介。日本のワンセグや韓国の地上波DMBのような無料型から、衛星DMBやMediaFLOのような有料型までさまざまなモデルが登場している様子を解説した。

 「非常に面白い部分として、現時点では(ビジネスモデルが確立した)市場の数よりも、モバイル向け放送の技術方式の方が数が多いという状況にあることが挙げられます。これから技術とマーケット、ビジネスモデルを定義していく段階にあるわけですが、MediaFLOという技術はこれに答えが出せるものになっています」(コード氏)

 次世代のモバイル向け放送において、いかにビジネスモデルを確立するか。ここでQUALCOMMが重視するのが、1つの半導体チップで複数の放送規格に対応し、メーカーやキャリアなどがスムーズにビジネス化を図れるようにするという点である。これは日本のワンセグのように、すでに無料型のモバイル向け放送サービスが普及し始めている地域においては特に重要だ。

 「わたしたちは(MediaFLOをはじめ)複数の方式に対応したマルチモードの半導体チップが重要だと考えています。端末の設計において、1つの半導体チップを採用・導入するだけで複数方式に対応できますから、これは端末メーカーにとって大きなメリットになります。

 またユーザーの利便性を考えましても、無料モデルと有料モデルという2つのモバイル向け放送に対応できることは、(無料放送と有料放送が)互いを補完できるのでメリットが大きいのです」(コード氏)

Photo QUALCOMMのMediaFLOチップのラインアップ。MBP1600がMediaFLOだけでなく、ISDB-T(ワンセグ)やDVB-Hに対応したマルチモード版。現在はUHFバンドにしか対応していないが、今後、VHFバンドやLバンドなどマルチバンド対応を進める

 QUALCOMMでは、このマルチモードに対応したチップ「MBP1600」をすでに開発している。MBP1600は、1つのチップでMediaFLOと日本のワンセグが使うISDB-T、そして欧州で拡大しているDVB-Hの3方式に対応している。MBP1600を使うことで、「1つの携帯電話で、無料放送のワンセグと、有料放送のMediaFLOに対応できる。これはビジネスモデルの選択肢を広げることにもつながる」(コード氏)という。

 「またQUALCOMMでは、複数方式に対応した半導体チップを提供するだけでなく、ソフトウェアの部分もきちんと提供します。例えば、日本市場にはMediaFLOだけでなく、ISDB-T(ワンセグ)の部分の基本ソフトウェアも提供します。これにより、端末メーカーは短いサイクルで、(複数の)モバイル放送への対応が可能になるでしょう」(コード氏)

 今後のMediaFLOチップのロードマップとしては、複数方式に対応したMBP1600以外に、北米市場での市場規模拡大と低コスト化要求に応えるものとして、MediaFLOのみに対応したシンプルな構成のチップ「MBP1610」も開発中だ。一方、グローバル展開を前提とするMBP1600の進化では、マルチモードだけでなくマルチバンド化を行い、現状のUHFだけでなく、VHFバンド(30MHz〜300MHz)やLバンド(500MHz〜1.5GHz)にも対応していくもようだ。

MediaFLOとワンセグが1台の端末で見られる「MBP1600」

Photo MBP1600を搭載した試験用端末では、MediaFLOの電波と、日本のワンセグ(ISDB-T)の電波の両方が受信できる。MediaFLOとワンセグのデュアル対応は、半導体チップレベルではすでに実現している

 QUALCOMMは今回のプレゼンテーションにおいて、MBP1600を搭載し、MediaFLOとワンセグ(ISDB-T)の両方を1台で見られる実験用端末を公開。試験用のMediaFLOとワンセグ放送を受信するという形で、デモンストレーションを行った。

 実際の受信状況を見てみると、すでに北米で商用化されているMediaFLOがスムーズに映るのはもちろんだが、ワンセグもきちんと受信し表示されていた。一部、映像にブロックノイズが生じる場面もあったが、これは「あくまで実験用設備からの放送を受信しているため。ワンセグの商用放送が行われている日本で視聴すれば、一般的なワンセグ対応携帯電話と同じように見られる」(コード氏)という。

 また、現在はソフトウェアも試験段階のものであるため、MediaFLOとワンセグの受信を切り替えるためにはアプリケーション自体を切り替えなければならないが、実際に製品化する段階で、MediaFLOとワンセグの切り替えがシームレスにできるようにユーザーインタフェースの改良も行う。「今後はMediaFLOとワンセグが、1つのサービスに見えるように開発を進めていきます」(コード氏)

PhotoPhoto 左がMediaFLOを視聴中の画面、右がワンセグ(実験用電波を受信中)の画面。現状は、MediaFLOからワンセグに表示を変えるためには視聴アプリを切り替える必要があるが、商用端末ではユーザーインタフェースやEPGなどをシームレスに表示できるようにする
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