「iPhone」とはターゲットも開発思想も異なる――Samsungの「OMNIA」が生まれるまでCommunicAsia 2008(1/2 ページ)

» 2008年06月19日 00時00分 公開
[山根康宏,ITmedia]
Photo Samsung グローバルマーケティンググループ・モバイルコミュニケーション部門の部長、ヨンヒー・リー(Younghee Lee)氏

 AppleのiPhoneと同じ日に発表され、形状が似ていることから、“対抗製品”と見られがちなSamsungの「OMNIA」。しかし開発陣は、iPhoneとは開発コンセプトもターゲットも異なり、ターゲットとするユーザー層に最適な形を追求した結果がOMNIAだと話す。

 OMNIAはどんなユーザーのどんな利用シーンを想定して開発された端末なのか。今後の海外戦略と合わせてSamsung グローバルマーケティンググループ・モバイルコミュニケーション部門の部長、ヨンヒー・リー(Younghee Lee)氏に聞いた。

なぜ、Windows Mobileなのか

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ITmedia Samsungはこれまでにも“タッチUI”を搭載した端末をいくつか発売しており、いずれも独自OSを採用していました。しかしOMNIAにはWindows Mobile 6.1 Professionalを採用しています。どうしてOMNIAにWindows Mobileを採用したのでしょう。

ヨンヒー・リー氏 Samsungには、“どのOSを使うか”とか“どのOSと手を組むか”といった「はじめにOSありき」という発想はありません。OSの採用にはオープンな思想を持っています。それぞれの製品にはターゲットとするユーザー層があり、ユーザーに最もベストなものを提供するにはどうすればよいのかという考えに基づいてOSを選定しています。今回OMNIAにWindows Mobileを採用したのは、OMNIAを「より使いやすく、マルチメディア機能を強化したスマートフォン」にするためです。

 Windows Mobileはビジネス用途に適したOSの1つといえるでしょう。しかし、まだまだスマートフォンそのものは一般ユーザーに使いやすいものとはいえず、ビジネスユーザーなど一部の層が使うにとどまっています。OMNIAはビジネス用途だけではなく、インターネットサービスの利用やマルチメディア対応など、あらゆる機能を詰め込んだ「All in One」を目指しました。こうした端末にはどのOSを採用し、どんなUIを搭載するのがベストなのか――。その答えがWindows Mobile OSであり、その上にTouchWiz UIを搭載することだったのです。

ITmedia OMNIAの開発コンセプトを教えてください。

リー氏 当社は75カ国の消費者に対するマーケットリサーチを行い、それに基づいて製品ポートフォリオを6つのカテゴリーに分類しています。OMNIAはその中で“Infotainment”(インフォテインメント)いうカテゴリーに属する製品です。このカテゴリーの製品は名前のとおり「インフォメーション」と「エンタテインメント」に特化した端末がラインアップされています。OMNIAはそれに「ビジネス」という用途を加え、さらにハイスペック、ハイバリュー、ハイフィーチャーという、当社のフラッグシップモデルとなる製品を目指して開発しました。

ITmedia Samsungはこれまで、デザインをユーザーにアピールしていましたが、OMNIAはスタイルよりも機能を強くアピールしているように感じます。これはSamsungが端末の展開や開発方針を変更したということでしょうか。

リー氏 おっしゃるとおり、これまで当社は「スタイル」に最も注力してきました。もちろん機能の強化も図ってきましたが、ユーザーには「スタイルのSamsung」というメッセージを最重要テーマとして伝えてきました。そのため、ここ数年は厚さ10ミリ前後の超薄型端末“Ultra Edition”シリーズを主力製品としてきたのです。2007年には、その2世代目となる“Ultra Edition 2”も各国でヒットし、「スタイル」は当社の最大の強みになったと考えています。

 2008年も、上半期はUltra Editionシリーズを強化し、さらにデザインを洗練させたSoulシリーズを市場に投入しました。しかし、スタイルが受け入れられる一方で「より高い機能が欲しい」というユーザーの声も高まっています。そこで究極の機能を搭載し、さらにデザインにもすぐれたOMNIAの投入を決めました。今後は「フィーチャー」、機能や使い勝手に優れた商品にも力をいれ、ユーザーに強くアピールしていきたいと考えています。

ITmedia OMNIAはタッチUIを採用しています。これはタッチUIが最も使いやすいインタフェースだと判断したからでしょうか。

リー氏 最近は指先でも操作できるタッチUIが1つのトレンドになっています。このタッチUIはマルチメディアやビジネス用途には向いている面があるかもしれませんが、ユーザーの中には片手の指先だけで操作できるシンプルな操作体系を求める層もいます。文字入力をするならQWERTYキーボードやスタイラスペンの利用も優れているでしょう。

 UIとはユーザーごとに好みがあるだけではなく、用途によっても求められる機能は変わってくるものであり、“最も優れたUIは1つではない”ということなのです。今回、OMNIAの機能を最大限に引き出せるUIを考えた結果がタッチUIだったわけですが、文字入力時にはスタイラスペンも利用できます。つまり、“どのUIが優れているか”と考えて採用したのではないということです。

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