進化した「T9」がケータイUIを変える――「XT9」「T9NAV」とは何か文字入力システムからケータイUIの世界へ(2/2 ページ)

» 2008年07月02日 07時00分 公開
[田中聡(至楽社),ITmedia]
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端末内外のあらゆる情報を検索――「T9NAV」

 XT9のほかにも、新たな小型デバイス向けプラットフォーム「T9NAV」の開発が進んでいる。T9NAVは文字入力システムではなく、アドレス帳、メール、スケジュール、ブックマーク、音楽ファイル、画像、動画など、端末に保存された情報や端末の持つ各種機能、インターネット上の情報を横断的に検索できるものだ。

 ドコモの富士通製端末「F906i」にも、iモードやメールなどを検索できる「クイック検索」機能が搭載されているが、これがさらに拡張されたものと考えると分かりやすいだろう。

 「T9NAVは、T9のあいまい入力をベースに、1つのキーを押すだけでデバイス上やデバイスから離れたオンライン上のデータにアクセスできます。また、外部メモリに保存されたデータも呼び出せます」(ジェンキンス氏)

 T9NAVの検索画面では、アドレス帳のように、1文字を入力しただけで、その文字に関連する機能やデータが表示される。検索時にはT9の技術が反映されるので、例えば「1(あ)」と入力すると、「1」「あ」「い」「う」「え」「お」の文字が含まれる機能やデータを探してくれる。

 「T9NAVのメリットは、呼び出したい機能やデータを素早く検索できることです。今まではメニュー画面から呼び出していたものを、タイプ入力するだけで呼び出すことができるようになります。日本のケータイには非常に多くの機能が搭載されており、T9NAVを使うことで時間をかけずに使いたい機能を呼び出せるようになるでしょう」(ブライト氏)

 もう1つ、T9NAVの大きな利点として、先頭の文字でなくても“入力した文字の一部”が含まれてさえいれば、該当する機能やメニューを呼び出せることが挙げられる。例えばアドレス帳では「あ」と入力して「阿部」が表示されるなど、先頭の文字から順に検索するのが基本だが、T9NAVの場合、「32(さか)」と入力すると、「富田真幸(トミタマサキ)」という人名も検索できる。これは「トミタマサキ」の「サキ」がヒットしたためだ。したがって、“フルネームでアドレス帳に登録した人物を、ラストネームで探す”といったフレキシブルな検索が可能になる。また、アドレス帳は人名のみならず、電話番号の一部を入力しても検索できる。

 同様に、音楽ファイルは「アーティスト名」と「楽曲名」のどちらを入力しても検索できる。メールについては、12月までにSMSとEメールに対応し、連絡先やメールの件名などを検索できるようになるという。

Photo T9NAV上で「32(さか)」と入力すると、「スケジュール」「赤外線」といった機能や、「関沢潤(セキザワジュン)」「浅川晴(アサカワハル)」といった(アドレス帳に登録した)名前、「SAKURA〜花霞〜」「そばにいるね」といった曲名など、T9の変換にもとづき、さまざまなデータの候補が表示される(左)。「112(ああか)」と入力すると、アドレス帳の「青木」さんのデータ、「aiko」の楽曲、「112」が含まれる電話番号などが表示される(右)

 T9NAVは、端末内部のデータのほかに、Webページの検索にも対応するが、GoogleやYahoo!などの検索エンジンを導入するのではなく、あくまでキャリアが提供する公式コンテンツが検索対象となる。

 「通常はメニューからブラウザを立ち上げてニュースサイトにアクセスするところを、T9NAVでは『ニュース』という言葉を入力することで、通信キャリアが提供しているニュースサイトにジャンプでき、動画などのダウンロードコンテンツも案内できます。通信キャリアと協力することで、入力したキーワードに関する特定のカテゴリーで、キャリアがユーザーをうまく誘導してアクセスしてもらえるような仕組みも考えています」(ブライト氏)

 T9NAVには、頻繁に使う機能やデータを上位に表示する学習機能も搭載しており、“使えば使うほど”個人の利用に最適化した形に進化する。「『(T9NAV上で表示されるデータに)タブを設定したい』という要望も挙がっているので、検討したい」(ブライト氏)。T9NAVの検索機能も画期的だが、T9NAVの検索表示をカスタマイズできるようになれば、“メインメニューから目的の機能にアクセスする”というケータイのUIを根本から変えるプラットフォームになりうるといっても過言ではない。

 T9NAVが市場に登場する時期については、「現在はさまざまな評価をしている段階で、日本では12月にプレリリースする予定。OEMに向けた出荷は2009年の第1四半期(4〜6月)を予定している」(ジェンキンス氏)という。

 T9NAVはメーカーの組み込み型のソリューションとして出荷されるのが基本だが、ダウンロード版も用意されている。現在はポルトガル語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語のベータ版をダウンロードでき、9から10月にかけて正式版がリリースされる予定。対応するのはNokiaのソフトウェアプラットフォームの「S60」や、Windows Mobileを採用した端末だ。

日本のメーカーからも好感触

 XT9とT9NAVは、すでに日本のメーカーなど数社にデモンストレーションを行っているそうで、「いくつかのパートナーからは、“幅広いターゲットに使ってもらえる機能”だと、よい評価をいただいている」(ブライト氏)という。

 スペル訂正やあいまい入力機能が加わったことで、より素早く文字入力できる「XT9」、端末やWeb上のデータを瞬時に検索できる「T9NAV」。これらの2つのシステムに共通するのは、今までの日本のケータイにはないフレキシブルな文字入力と検索が可能になることだ。そして、この2つのシステムが実現したのは、ベースである「T9」があったからこそといえる。

 これまで、T9はあくまで入力システムの1つだったが、XT9とT9NAVの登場により、日本のケータイの文字入力とUIの世界に新風を吹き込む存在になるかもしれない。おりしも、キャリアやメーカーはUIに対する取り組みを強化しつつあり、まさに時流にかなったアップデートといえる。XT9とT9NAVがキャリアやメーカー、そして市場でどのように受け入れられるのか。その動向に注目したい。

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