「Pixel 10 Pro XL」のコンピューテショナルカメラはどのくらい進化した? 撮ってみて分かったこと荻窪圭の携帯カメラでこう遊べ(1/3 ページ)

» 2025年12月18日 18時00分 公開
[荻窪圭ITmedia]
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 各社共に、フラグシップスマートフォンはそのブランド(メーカー)の特徴、あるいは個性をガンガンに押し出してくるようになってるから面白い。

 個性的なのはXiaomiのLeica(ライカ)との協業っぷりだったり、ソニーがXperiaで一眼カメラ「αシリーズ」の技術やテイストを盛り込んだカメラらしさだったりするのだけど、「じゃあGoogleのPixelはどうなの?」というと、初期の頃からコンピュテーショナルフォトグラフィーを標榜してたわけで、その先にあったのがAIの活用だったと思っていいのである。Pixelカメラの特徴は“AI大活用”にあるのだ。

Pixel 10 Pro XL Pixel 10 Pro XLでいろいろ撮ってみるのだ

「超解像ズームPro」で月食中の月を撮ってみる

 皆既月食が各地で観測されたとき、たまたま手元に「Pixel 10 Pro XL」があったので、ベランダから欠けかけた月を撮ってみたのである。

 何しろ、今回は「超解像ズームPro」を搭載したおかげで最高で「100倍ズーム」まで可能なのだ。さすがに100倍(2400mm相当!)ともなると、月を真ん中に捉えるのがめちゃ難しいのだけど、何とか撮影に成功。

月 何と“100倍”で撮った月食中の月。ノートリミングなのでリアルにこのサイズで撮れるのだ。月の模様もくっきり。月が影に食われている様子もバッチリだ

 「超解像ズームPro」をかけてない状態だと、以下の写真のように「普通にデジタルズームで撮った、モヤっとした月」になってしまうのだ。

月 こちらは普通(?)の100倍ズームで撮った月食中の月。普通にデジタルズームをかけただけのもやもやの月である

 素晴らしいことに、超解像ズームProではオリジナル(未処理の)写真と超解像ズームProをかけた写真の両方を保存してくれるので、こうして比較できるのである。

 流れとしては、まずオリジナルを撮ってから、バックグラウンドでAI処理をかけて超解像ズームProの映像を生成するので、画像を得るまでちょっと時間がかかる(&真夏にやりまくるとボディーが熱くなる)。でも、これはすごい。今までのデジタルズームとは全然違う

 なにをしているかというと、もやもやの画像を元に生成AIが仕事して補完してるのである。

望遠に強くなった「Pixel 10 Pro」

 というわけで、いきなり100倍ズームの話からはじめてしまったけど、もうちょっと続くのでご勘弁あれ。

 超解像ズームProを使う場合、オンデバイス処理に使うためのAIモデルを事前にダウンロードしておく必要がある。この仕組みからすると、超解像ズームProに次ぐ、生成AIを活用した別のモデルも用意されるかも……だ。

撮影中 Pixel 10 Pro XLで撮影中。画面は10x(10倍)の状態だけど、これでもかなり遠くまで撮れる
カメラアプリ カメラアプリを立ち上げると、4つの機能のオンオフをセットできる。超解像ズームProはここでオンにすると、自動的に必要なAIモデルがダウンロードされる
ダウンロード中 超解像ズームProをで使うAIモデルをダウンロード中。けっこうデータ量が多いのと、「生成AIを使うよ」って趣旨の注意事項も書かれている

 超解像ズームProは、どの時点で働き始めるか?

 Pixel 10 Pro/Pro XL(以下まとめた「Pixel 10 Pro」)のアウトカメラはトリプル構成なのだが、望遠カメラは広角(標準)カメラ比で5倍(5x)ズームとなっていて、センサーは約5000万画素だ。35mm判換算だと110mmとなる。

 中央部の2500万画素分を切り出せば10倍(10x)相当になるので、カメラアプリ上は標準で「10x」まで表示されている。

カメラアプリ Pixel 10 Proのカメラアプリ。アウトカメラのズーム倍率は5つがプリセットされており、「10x」まで用意されている

 ここからさらに倍率を上げると、「30x」を超えた時点で超解像ズームProがスタンバイする。ということで、30x〜100xが超解像ズームProの“出番”なのだ。

 「生成AIは使いたくない」という人は、超解像ズームProのモデルをダウンロードしないか、常に30x未満の倍率で使えばいい。

まず動物と文字を撮ってみよう

 次は「月」のような生成AIの効果を発揮しやすそうな被写体ではなく、動物で試してみたい。

 ちょっと遠くにネコがいたので、50xの望遠で顔のアップを狙ってみたのだ(さすがに100倍だと強力すぎた)。超解像ズームProの前(オリジナル)と後を続けてどうぞ。

オリジナル こちらは処理前のネコの顔のアップ
AI処理 こちらは超解像ズームPro処理をしたネコの顔のアップ。見比べると格段の違いがあり、しかも超解像ズームProで処理をしてもほとんど破綻していない

 オリジナルの方は「いかにもデジタルズームしました!」って写りだけど、超解像ズームProの方はしっかりネコの顔になってる。モヤっと潰れてる白い毛の部分も、それっぽくなってる。これは予想以上なのだった。

 その他いろいろ試してみたけど、建物や風景は秀逸。人物は……無理しない方向のようだ。めっちゃ遠くにいる人の顔を、生成AIが勝手に作るようなことはしないのである。

 文字は……かなり頑張ってる。以下の例はかなりうまく行ったパターンだけど、部分的には失敗することもある。下がいかにもデジタルズームかけたっぽい元の画像で、上が超解像ズームProの画像。細かい所まで見るとあやしかったりするけど、ちゃんと読める文字にはなってる。

100x文字 100xで撮った文字。下がオリジナル、上が超解像ズームProだ。よく見ると、超解像ズームProは濁点や漢字のディテールがあやしいものの、かなり頑張っている

いつものガスタンクも撮ってみる

 で、次はお約束のガスタンクを撮ってみるのである。超解像ズームProから離れて、0.5xから100xまで一気にいく。

 アウトカメラユニットの基本性能自体は、原則として前モデルと同じだ。

 0.5xの超広角カメラは約4800万画素センサーを採用し、35mm換算で12mm相当でF値はF1,7となる。等倍(1x)の広角カメラは先述の通り約5000万画素のセンサーで、35mm判換算で24mm相当、F値はF1.7となる。そして5xの望遠カメラは約4800万画素センサーを採用し、35mm判換算で110mm相当、F値はF2.8となる。

 全て四捨五入すると、センサーは全て「5000万画素」だけど、センサーのサイズは広角カメラだけ大きめ。これは昨今のハイエンドスマホのトレンドでもある。

アウトカメラ Pixel 10 Proのアウトカメラユニットは、原則として前モデルと同じと思っていい。3つとも約5000万画素のハイエンド仕様だ。
超広角 超広角でガスタンク。爽やかでよい映りだ。12mm相当というのはスマホでは最も広角な部類に入る
メイン メインの広角カメラ(24m相当)の広角でガスタンク。超広角と色や階調が同じで、統一感があるのがポイント。ディテール描写もよし。
2x望遠 「2x」2xでガスタンク。斜めの線がちょーっとがたついてるけど、細いワイヤーもちゃんと描写されていてよい。

 ちなみに、さっきの超解像ズームProで撮った文字は、このガスタンク手前にあるユニットに書いてある注意事項である。

 さらに5xと10xでも撮ってみよう。

5x 110mm相当の「5x」でガスタンク。やはり色や階調が他のカメラと統一されているのがいい。ディテール描写もよし
10x 220mm相当の「10x」でガスタンク

 さらにズーム倍率を上げるていくと、30xで超解像ズームProが働くようになる。ギリギリ29xだと働かない。

 両者を撮り比べてみたけど、違いは微妙だ。ただ、小さな文字があるとAIに休んでもらった方が自然な写りになることもある。

 そして2400mm相当になる100xまで一気に撮っていこう。オリジナルと超解像ズームProを続けてどうぞ。ボルトとかケーブルとか、元画像ではもやもやしててナニガナンダカって部分も、ちゃんとAIが判断して作ってる。

オリジナル 2400mm相当の超望遠でガスタンクの上の部分。こっちは元画像だけど、ディテールがかなり怪しい
超解像ズームPro こちらは、超解像ズームProで処理したもの。かなり本物っぽい

 すごいよね。あくまでも生成AIが元のもやもやっとした画像をベースにAIが生成してるので、うまくいかないこともあるし、生成AIが作った画像をどこまで許容するかという問題もあるけど、かなりの“でき”だ。

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2025年12月19日 更新
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