マンガ家デビューの手段は“紙のコミック誌”だけじゃない――スパイシーソフトの山田氏ケータイコミックでデビューを目指せ

» 2008年07月07日 20時06分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
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 スパイシーソフトは、ケータイ向けアプリを個人で開発するクリエイターに、作品発表の場を提供する「アプリ★ゲット」の運営で知られる会社。空き時間で気軽に遊べるゲームからじっくり遊べるRPGゲームまで、さまざまなジャンルの個人開発のゲームを無料で配信し、10代の若者を中心に人気を博している。

 そんな同社が新たに手がけるのが、電子コミックだ。7月7日にコミック投稿サイト「マンガ★ゲット」のクローズドβ版テストをオープンし、個人のマンガ家支援に乗り出した。

 「マンガの世界は、個人のアプリ開発者を支援してきたノウハウが生かせる分野」だと自信を見せる同社代表取締役社長の山田元康氏に、サイトオープンの経緯と今後の展開について聞いた。

休刊相次ぐ紙のマンガ誌、マンガの火を消さないために

 ケータイコミックの市場は年々拡大傾向にあり、その市場規模は200億円とする調査結果が発表されるなど好調に推移。紙のマンガ雑誌に掲載された作品は次々と電子コミック化され、新たな読者層を獲得している。

 一方で、有名マンガ雑誌の休刊が相次ぐなど、紙の世界ではその売れ行きは必ずしも好調とはいえない。マンガ雑誌が減れば、電子コミックとして供給される作品も減ることになり、こうした状態が続けば「今のような価格でケータイコミックを配信することが難しくなるのではないか」と山田氏は懸念する。

 「紙のマンガ雑誌が減っていくと、作品にブランド価値を感じてそれなりのお金を払っていたユーザーも減ってしまう。(紙のマンガ雑誌で)このような状態が続くと、モバイル配信時の価格にも影響する可能性があり、現状の価格帯で配信するのが難しくなるかもしれない。(紙のマンガ雑誌になじみのある)20代、30代の読者は、多少高くなっても購入するかもしれないが、10代は買わなくなるのではないか」(山田氏)

 こうした状況に歯止めをかけるためには、作家に作品を発表する場を提供し、才能が発掘されるような環境を提供すればいい――というのが山田氏の考え。アプリやFlash動画の世界では、多くのユーザーに支持されて有名になった無名作家も多数現れており、マンガの世界でも“それが可能なのではないか”というわけだ。「例えば、紙のマンガ雑誌の編集者に認められなかった作品が、読者の支持を集めて救われるようなことがあるかもしれない。これまで手がけてきた個人クリエーターのケータイアプリでも、一般から人気に火がついて、公式サイトに採用された例がある」(山田氏)

 もう1つは、“初めてマンガを読んだのもケータイ、初めてマンガを発表したのもケータイ”という、“ケータイマンガチルドレン”への期待だ。マンガ★ゲットでは、デジタルデータ化したコミックをPCからアップロードするだけで、ケータイコミックのフォーマットに自動変換するシステムを無料で提供するなど、作品を発表するまでに複雑な手順が必要ない。手軽に発表できる環境を用意することで、新世代を含むマンガ家人口のすそ野を広げたいという。

 「“若い漫画家を育てたい”という、コミック作家の協力を得られたら、面白くなる。コミックを描き始めた小学生にマンガの描き方を教えたり、コンテストの批評をしてくれるような人を探しているところ。このサイトで育っていくマンガ家をサポートするような体制もつくっていきたい」(山田氏)

Photo 自作のマンガを投稿するには、「新規作家登録」が必要。登録すると、マンガをケータイコミックに変換するシステムを利用できる

海外向け配信も視野に

 まだβ版のテストを開始したばかりのマンガ★ゲットだが、「将来的には海外配信も目指す」(山田氏)と、その夢は大きい。「日本で描かれたマンガが、海外のケータイでもそのまま読めるようなサイトが目標。例えば日本語が分かるアメリカ人が、英語しか分からない読者向けに翻訳するようなUGM(User Generated Media)的な要素も採り入れて、日本で描いたマンガを世界で読んでもらえる、50億人をターゲットに作品を発表できるようなポータルに育てたい」(同)

 こうした世界を実現するためにも、さまざまなマンガを投稿してほしいと山田氏は呼びかける。「マンガを描く人もいろいろで、本気でデビューを目指す人もいれば、連載で追い立てられるように描くのではなく自分のペースで描きたい人、紙のマンガ雑誌に投稿したものの掲載には至らなかった作品を持っている人もいる。マンガ★ゲットは、“発表の場”というだけでなく、多くの読者に認められればそれなりの広告収入を得られるというメリットもあり、紙のマンガ雑誌でデビューする以外にも“マンガ家”としてやっていける手段を提供できる」(山田氏)

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