スライドケータイの開発で知られる三菱電機が、携帯端末事業からの撤退を発表してから5カ月。ドコモからはその後、906iシリーズ、706iシリーズが登場し、“D”のスライドモデルは店頭から姿を消しつつある。
そうなると、これまでDのスライドモデルを使っていたユーザーは、当然のことながら、いずれ他メーカーの端末への乗り換えを余儀なくされる。ドコモ向けにはシャープやLG電子がスライドモデルをリリースしており、ドコモのスライドモデルにこだわるなら、現状ではこれらのモデルを選択することになるだろう。
他メーカーのスライドモデルを選ぶとき、やはり気になるのが“どこまでDと同じように使えるか”。設定次第で同じように使えるなら、他メーカーのスライドモデルに乗り換えても安心だ。そこで、ドコモの最新スライドモデルとして登場したシャープ製の「SH706i」が“Dライクに使えるか”を試してみた。この端末は、さまよえる“D”ユーザーを救ってくれるだろうか。
筆者が“Dのスライド”から離れられなかった理由の1つが、「待受カスタマイズ」機能の存在だ。これは、待受画面上にカレンダーや直近の予定、メールや通話の着信を表示する機能で、いつもメインディスプレイが表に出ているスライドモデルとの相性が抜群にいい。しかも、表示された予定や着信には待受画面からアクセスできるなど、使い勝手も良好だ。この機能は富士通端末にもあるが、端末を開かないと確認できないところがスライド派にはもどかしかったりする。
SH706iは、待受画面上にカレンダーを表示する機能はあるものの、そこから予定にアクセスすることはできない。その代わりになりそうなのは、「光TOUCH CRUISERでショートカットを呼び出して予定表にアクセスする」という方法だ。
SH706iは閉じた状態でもさまざまな操作ができるよう、メインディスプレイ下部に3つのキーを用意する。中央にあるのが決定キーと十字キーの機能を兼ねた「光TOUCH CRUISER」、その左に[CLR]キー(クリアキー)、右に[SUB/MUL]キーがレイアウトされる。
光TOUCH CRUISERはセンサーを搭載しており、上になぞるとよく使う10の機能を表示する「ショートカット」にアクセスできる(センサーロックがかかっている場合は、なぞる前に[SUB/MUL]キーを単押しして解除する)。初期状態ではここに「スケジュール」が登録されており、「待受画面で光TOUCH CRUISERを上になぞる」→「光TOUCH CRUISERの十字キー操作でスケジュールを選択」→「光TOUCH CRUISERを押す」という操作でスケジュールを確認できる。
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なおSH706iの光TOUCH CRUISERは長押しに任意の機能を割り当てられ、スケジュールも割り当てることが可能だ。待受画面で決定キーを押して基本メニューを表示し、「LifeKit」→「スケジュール」を呼び出して、ディスプレイ下部の[SUB/MUL]キーを長押しすると設定できる。なお、メニューを呼び出す際、「カスタムメニュー」に設定していると機能を割り当てられない点には注意が必要だ(カスタム/基本メニューは、右下ソフトキーの単押しで切り替えられる)。
※初出時に、光TOUCH CRUISERの長押しにスケジュールを割り当てられないと記載されていました。お詫びし、訂正いたします。
D905iは、ディスプレイ下部に十字キーや決定キー、6つのソフトキー、クリアキーがレイアウトされ、文字入力以外の多くの操作を閉じた状態で行える。SH706iも、決定キーと十字キーの機能を兼ねる光TOUCH CRUISER、[CLR]キー(クリアキー)、[SUB/MUL]キーが表に出ているので、着信メールの確認やWebの閲覧、ワンセグの視聴、音楽プレーヤーの操作など、文字入力を伴わない多くの操作が行える。光TOUCH CRUISERの操作は少しクセがあるが、慣れればなかなか快適に操作できる。
ただSH706iは、閉じた状態では(1)終話キーがないため、即座に機能を終了できない (2)マルチタスクキーが動作しない といったところがD905iと異なり、操作していて違和感を覚えてしまった。
例えばスライドを閉じたままWebを閲覧していてメールの閲覧に切り替える場合、D905iは(1)閉じた状態で終話キーを押してWebを終わらせ、メールキーを押す (2)側面のマルチキーを押してメールを選択 といった操作で済むが、SH706iでは(1)スライドを開いて[SUB/MUL]キーを押してメールを起動 (2)スライドを開いて終話キーを押してWebを終了させ、メールキーを押す というように、いったんスライドを開く必要がある。もちろんこれは小さなことで、スライドを開いて操作すれば済む話ではあるが、閉じたままの操作に慣れていると気になってしまうのだ。
Dのスライドで便利な機能の1つが、スライドの開閉に連動した各種機能だ。例えば閉じた状態でメールを閲覧している際に、スライドを開くと返信画面に移行し、スケジュール画面の利用時にスライドを開くと入力画面に切り替わる――といった具合だ。
SH706iのスライド連動機能は(1)スライドオープンで通話開始とクローズで終話 (2)新着メールの着信時にスライドを開くと当該フォルダがオープンする機能の2つで、スケジュール入力やメールの返信には対応していない。
なお、初期状態では(2)の機能はオフになっており、「メニュー」→「設定」→「通話・通信機能設定」→「オープン動作設定」で「メール」を選び「オン」に設定すれば動作する。
D905iはキーロックを設定しておくと、各種機能を一時中断したいときに端末を閉じるだけでロックがかかり、再び端末を開くと中断前の機能に戻れる。電車の中でメールを書いている際に、駅についてしまった時などに便利な機能だ。
SH706iでも同様のことは可能で、ディスプレイ下部の[CLR]キー(クリアキー)を長押ししてキーロックを設定すれば、ワンセグやメール、Webなど、ほとんどの機能が端末を閉じると一時中断でき、開いたときに再開できる。
端末にはそれぞれ設計思想があり、各メーカーはそれに基づいて端末を開発している。そのため、Dに搭載されているスライド周りの便利な機能がSH706iに載っていないのも、やむを得ない。しかし、これらの機能はスライド端末を利用する上で便利な機能でもあり、搭載することで“D”ユーザーを巻き取れる可能性もある。
“D”を使い続けた筆者としては、どこかのメーカーが“D”スライドの便利な機能を引き継いで、さまよえる“D”ユーザーを救ってくれないかと、あてどなく妄想してみたりするわけだ。
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