Nokiaが9月24日までフィンランド・ヘルシンキ本社で開催した「The Way We Live Next 2008」では、同社のさまざまな開発プロジェクトが紹介された。これらの研究からは、今後のNokiaケータイの進化の方向性がかいま見える。
携帯電話が現実世界と仮想世界の体験をさらにリッチなものにし、その体験の共有をサポートする――。携帯電話が実現するこんな世界を、Nokiaは“ミックスリアリティ”と呼んでいる。
3Gや無線LANなどの高速通信インフラが普及し、どこにいてもインターネットに接続できる環境が整いつつある中、ユーザーと一緒に移動する携帯電話は、リアルな世界と仮想世界をつなぐ存在となる。Nokiaはこうした特性を生かすことで、携帯電話がアナログの上にデジタルレイヤーを重ねる役割を果たせると考えている。
Nokiaが数カ月後に開始する「Point&Find」は、ケータイカメラで画像を“ポイント”し、関連情報をWebから探すというものだ。例えば映画のポスターをポイントすると、予告編のビデオや上映に関する情報を入手できる。
すでに、GPS、ナビゲーション、ジオタグなど地図に関連したものやモブログなど、仮想世界への橋渡し役を担う技術が登場しているが、Point&Findはさらに直感的なサービスを実現できそうだ。
“直感的なナビゲーション”も、Nokiaの開発テーマの1つだ。「Gaze Tracking」は、ユーザーがサングラスのようなディスプレイを装着し、目の動きで操作するもの。この研究では、キー入力操作なしにナビゲーションが可能かどうかを探っていく。
ほかにも、新たな写真共有の形を提案する「Image Space」が披露された。自分や仲間が撮影した写真をメタデータをつけてアップロードして、デジタルコンテンツワールドを作るというもので、地図など他のサービスとマッシュアップも可能だ。
無線分野は、屋内向け位置情報サービスに関する研究が進んでいる。位置情報の取得といえばGPSを利用するのが一般的だが、GPSは衛星電波の届きにくい屋内利用には向いていない。
人は一般的に80%の時間を屋内で過ごすといわれており、携帯電話の場合、音声通話の利用の70%、データ通信の80%が屋内で発生しているという。こうした点からも、屋内向けの位置情報サービスは潜在需要があるとNokiaは見る。
利用シーンとして想定するのは、大型ショッピングモールや屋内の駐車場、駅など。ナビゲーションサービスのほかにも、商品やサービス、友人や家族を探したり、プロモーション活動やSNSと連携したりといった用途も考えられる。法人向けにも、同僚を探す、プリンタを探す、ミーティングルームを探して予約する――といったニーズに対応できるだろう。
屋内の位置情報サービスについてNokiaは、無線LAN利用の可能性を研究している。無線LANはアンテナもアクセスポイントも普及しているからだ。端末側でも、携帯電話のWi-Fi搭載は進んでおり、ハードウェアを追加する必要がない。また、アクセスポイントから階や部屋などが特定できるため、精度の面でも問題ない(写真「indoor」)。
しかし、屋内向け位置情報サービスの実現は、まだ先になりそうだ。Nokiaは課題として、屋内の地図情報の収集や、精度のさらなる改善などを挙げている。
Nokiaはまた、自社の社屋を使って「ILPO」(Indoor Location Positioning Solution)という屋内向け位置情報技術の実験を行っているという。自分の位置の確認や位置情報の共有、サービスの検索などの機能を備え、屋内位置情報を利用するサービスのAPIも公開されている。
このシステムを世界中の40の社屋に実装しているほか、ヘルシンキのショッピングセンターと年内にも実験を開始する計画だ。今後、Nokiaの最新技術ラボ「Nokia Beta Labs」でのリリースも計画しているという。
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