── 改めて、N-01Aはどんなターゲットユーザーを想定して開発したのでしょう
石塚由香利氏(以下、石塚氏) 主なターゲットユーザーは20代の男性ですが、それ以外の層にも訴求できるカラーテーマを盛り込みました。
ボディカラーはブラック(ファインブラック)とホワイト(プレシャスホワイト)は定番で外せません。さらにピンク(パッションピンク)とラベンダー(ミスティラベンダー)も用意しました。
ピンクは濃淡の加減で受ける印象ががらりと変わります。N-01Aは淡いものよりビビッドな色を求めるアクティブなユーザー層向けの端末ですので、とびきり鮮やかな赤色がかったピンクに仕上げました。こちらは男性が持っていてもまったくおかしくない自信の色です。
ミスティラベンダーは新しいデザインへの挑戦というテーマで、携帯に今までなかった色を入れたい思いから採用しました。N-01Aは、ディスプレイがなめらかに回転する動きや持ちやすいように角を落としたラウンド形状のボディを採用することから、“フロー”というコンセプトでパネル表面にグラデーションを施してあります。
── 横向きスタイルは回転2軸ボディを採用した「N905i」や「N906i」でも実現していましたが、これではだめだったのでしょうか。
田丸氏 確かに、N905iはデザインや機能を含めて“変革”する大きな一歩になりました。ただ、ユーザーが携帯を使用するシーンは大きく変わってきています。今までの横画面に向くシーンは主にワンセグへフォーカスしていましたが、もうそれだけではありません。
例えば動画共有サイト。YouTubeなどの動画コンテンツを楽しむだけでなく、コメントを投稿できるニコニコ動画のように、動画コンテンツを視聴する以外にそれをコミュニケーションツールとしても利用するようなシーンも増えています。
つまり、「ただ見る(観る)」だけでなく、横画面と文字入力を連携して「使う」を想定しないと乗り遅れることになります。特に、ニコニコ動画のような“今までとは違う”利用シーンが、開発メンバーが思うより早いタイミングで携帯にも浸透していることもN-01Aの初期開発段階で見えてきました。
そのため、折りたたみスタイルの延長線上では難しい──。「徹底的に変えなければ」と判断しました。
── なるほど。それが“3Wayスタイル”の採用に至ったのですね。
田丸氏 “N”ケータイは折りたたみボディで高い評価を得ました。ストレートボディの端末しかなかった時代に折りたたみボディを提案した理由は「大きい画面で便利に使ってもらいたかった」ためです。その折りたたみボディに搭載するディスプレイは、N-02Aでついに3.2インチにまで達しました。
ただ、折りたたみボディでこれ以上ディスプレイサイズを大きくするのはそろそろ限界。これと連動するように、携帯電話は「画面を大きく使ってもらう」から「ユーザー自身が自由に使いこなす」シーンに変わりつつあります。
その第二の大きな変革として実行したのがN-01Aの形状です。携帯を自由に使いこなしたいユーザーに向けて「大画面を使いこなす」ための1つの提案をしたいと思いました。ディスプレイが表に出ていればそれを自然に表現できますし、タッチパネルも流行ありきではなく、この考えから自然に採用に至ったことになります。
そして「これをユーザーさんにどう使ってもらいたいのか。逆にユーザーさんはどう使うのか」について、長期に渡り徹底して議論しました。
そのポイントの1つに据えたのが「まず“横”に開く」です。
── まず横に開く……。確かにシャープのサイクロイドや富士通のヨコモーションは、縦に開いてからディスプレイを横に傾けますね。ただ、それは何が違うのでしょう。
田丸氏 携帯が横画面になる「理由」のためです。
ケータイの横画面は、ただの「見る・観る」から「使う」に利用シーンが変わり、横画面がどんどん主流になりつつあると考えます。そのコンセプトを先んじて明確に示すため、「まず横」にこだわりたかったのです。
ただ、この概念を開発チームで共有するに至るまでに大激論がありました。「なんで分からないんですか」「以前からこう言っているでしょう」「それでは、“変わらない”」などと(笑)。
タッチパネルや横画面のUIを含めて「今までとは違う」ことを体現してもらう利用シーンの提案、さらに2年後も想定した使い方もふまえて最終的に仕様にするのか。今思うと、これを決めるのも苦労しましたね。
「N-01A」はタッチ、ヨコ、タテ、いずれでも使える3Wayスタイルが特徴。ディスプレイはこのように開く (ムービーはこちらからでも参照できます) |
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