ソニー「FeliCa Plug」「FeliCa Lite」が目指すもの:神尾寿の時事日想

» 2008年12月17日 11時34分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 ソニーが12月16日、非接触IC技術「FeliCa (フェリカ)」の新しい製品群として、電子機器組み込み用の無線インタフェースモジュール「FeliCa Plug」と、低コストのFeliCaチップとなる「FeliCa Lite」を発表した。FeliCa Plugは2009年春、FeliCa Liteは2009年夏の製品化を予定しているという。

“FeliCa Plug”『RC-S801』(左)、「FeliCa Lite」のカードイメージ(中)、「FeliCa Lite」のシールイメージ(右)

 FeliCa Plugは“有線端子付き無線インタフェースモジュール”という位置づけで、従来のFeliCaチップのようにメモリやCPUを搭載しない。ポータブルゲーム機などの電子玩具や、ヘルスケア機器など、“すでにCPUとメモリを搭載する電子機器”に内蔵し、FeliCaによる非接触通信機能を付加する目的の製品だ。待機電源は0.1μA以下に抑えたほか、単独で磁界探知機能を有するため、リーダー/ライターが発生する磁界を検知して本体側CPUに通知。FeliCa Plug内蔵機器をリーダー/ライターにかざすと、自動的に電源が入り、通信が始まるといった使い方もできる。

 一方、FeliCa Liteは既存のFeliCaカードを簡易化した低コストバージョンだ。これまでのFeliCaカードよりもアプリケーションの柔軟性はやや制限されるが、用途別に簡易化されたセキュリティ機能とファイルシステムの最適化により、従来品よりも小型・省電力・低コストを実現したという。

ラインアップ拡充で、FeliCaは「普及の第2ステージ」へ

 ソニーのFeliCaは、その「レスポンス(反応速度)の速さ」と、これまで一度もハッキングされた事件・事故を起こしたことのない「高いセキュリティ性能」(参照記事)、そして「マルチアプリケーションの柔軟性」によって、日本を筆頭とするアジア諸国の電子マネーや交通IC分野で広く普及している。

 また日本では、NTTドコモの支援もあり、携帯電話向けの「モバイルFeliCa IC」がおサイフケータイという名称で普及しており、携帯電話の“リアル連携”の重要な要素技術を担っている。FeliCaとモバイルFeliCaが、電子マネー決済や交通分野を中心に、“日本の社会インフラ/生活インフラ”となっていることは間違いないだろう。すでに日本人の大半が、何らかのFeliCaカードか、モバイルFeliCa内蔵のおサイフケータイを所有しているところまで普及は進んでいる。

モバイルFeliCa IC、通称「おサイフケータイ」のロゴ。各キャリア共通で利用している(左)。左からNTTドコモ、au、ソフトバンクモバイルのおサイフケータイ。端末によってロゴの位置は異なる(右)

 しかしその半面、これまでのFeliCaのラインアップがやや高性能・高コスト指向に偏っていたのも事実だ。これがFeliCaを活用したアプリケーションやソリューションの展開にとって、高いハードルになっていた。筆者はこれまで数多くのFeliCa事例を取材しているが、その先々でよく聞いた言葉が、「FeliCaカードは高性能な分、発行コストが高い」、「モバイルFeliCaだと、携帯電話以外で使えないのが難点」というものだった。今回のFeliCa PlugとFeliCa Liteは、現在のFeliCaラインアップが持つ課題を解消し、FeliCaの活用範囲を広げる「起爆剤」になりえる。

 特に筆者が注目しているのが、FeliCa Plugだ。これは従来のモバイルFeliCaが適用できなかった携帯電話以外の電子機器にFeliCaの通信インタフェースを実装するためのものであるが、すでに約700万台まで普及しているPC用のFeliCaポートや、既存のFeliCaリーダー/ライターがそのまま「インフラ」として利用できるので、登場当初からデータ連携の柔軟性や応用性がとても高い。例えば、ニンテンドーDSやPSPなどポータブルゲーム機の拡張通信ユニットや、デジタルカメラなどに搭載されれば、携帯電話とは異なる形のリアル連携サービスが実現できる。また、現行のおサイフケータイが搭載する「モバイルFeliCa Ver.2」ではリーダー/ライター機能も用意しているため、FeliCa Plugを搭載した電子機器とおサイフケータイが、FeliCa通信を通じて連携するサービスやビジネスの登場も考えられるだろう。FeliCa Plugの登場・普及は、様々な電子機器同士がリアル連携サービスを実現するカギになる可能性がある。

 一方、FeliCa Liteでの期待は、これまで需要はあると見られながらFeliCaカードのコスト高さで実現しなかった、小規模なポイントカードや会員証の磁気式からの代替だ。以前はこういった小規模な利用ニーズは、FeliCaポケット(参照記事)やピットモット(参照記事)のような「1枚のカードやおサイフケータイに複数サービスをまとめる」汎用パッケージソリューションだけで吸収できると考えられていたが、事業者の間には“自社ブランドの刻印されたカードを消費者に持たせたい”という根強いニーズがある。また店舗のオペレーション面でも、カードとサービスが1対1の関係が好ましいとする声は少なくない。こういった簡易で分かりやすい会員管理のニーズに、低コストで応えられそうなのがFeliCa Liteの可能性だろう。

 今回のラインアップ拡充で、FeliCaの裾野は広がり、さらに導入のハードルも低くなった。まだ製品群が発表された段階ではあるが、ソニーがこれらの新FeliCaラインアップを適切な価格で市場投入し、多くのプレーヤーがその発展的なアプリケーションを開発すれば、FeliCaを取り巻くビジネスは「普及の第2フェーズ」に入ると筆者は見ている。今後の展開に期待したい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年09月29日 更新
  1. 20万円超のXperiaを「買い」に変えた3週間 ソニーが「モニタープログラム」を実施した理由 (2026年09月26日)
  2. 「SuicaでJR東海エリアをまたげない」問題、ついに解消か JR東海社長「勉強している」【訂正】 (2026年09月27日)
  3. なぜドコモはahamoの大幅値上げを避けたのか? 段階制で安くなるケースと「アップセル戦略」の狙い (2026年09月26日)
  4. ドコモ値上げの背景は? 副社長が語るahamoの競争力と、「楽天モバイル意識」の本音 (2026年09月25日)
  5. ソフトバンクとLINEヤフーが「Yahoo!スマホ買取」を始めた理由 スマホ高騰時代に目指す「中古の循環」 (2026年09月28日)
  6. ドコモが低容量プラン「ドコモ mini2」発表 6GB/12GBの2段階で月額3278円/4598円 (2026年09月25日)
  7. 高額な「iPhone Duo」を横目にどう選ぶ? Androidフォルダブルスマホをお得に買う方法【2026年9月版】 (2026年09月27日)
  8. “iPhone 18難民”の買い替え先は? 最新「iPhone 18 Pro」と型落ち「17/17e/16」から最適解を考える (2026年09月25日)
  9. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  10. パナの電動アシスト自転車、スマホ連携が可能に バッテリーの盗難防止や残量通知など 12月発売 (2026年09月28日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー