タッチだからこそ“親指文化”にもこだわった――「AQUOSケータイ FULLTOUCH 931SH」誕生秘話開発陣に聞く「AQUOSケータイ FULLTOUCH 931SH」(2/3 ページ)

» 2008年12月20日 01時20分 公開
[田中聡,ITmedia]

タッチパネルの課題は動作の“もっさり”感

 「3.8インチハーフXGA液晶」に加えて、「全面タッチパネル」も931SHの大きな注目ポイントだ。2008年7月に発売した「iPhone 3G」をはじめ、2008年秋冬モデルでは、NTTドコモの「F-01A」「N-01A」「HT-02A」「L-01A」、ソフトバンクモバイルの「930SC OMNIA」「Touch Diamond X04HT」「Touch Pro X05HT」など、複数のタッチパネル搭載ケータイが発売された。931SHのタッチパネルにはどんな機能を搭載し、どんな工夫を盛り込んだのだろうか。

 「タッチパネルの課題は予想できた」と澤近氏。その最たるものが、「ディスプレイの解像度が高いので、従来機種と同じソフトウェアでは、絶対に動きが“もっさり”すること」だという。

 「端末の動作のもっさり感をなくすために、システムを抜本的に見直しました。ハードウェアは923SHや930SHと同じですが、ソフトウェアの作りが全く異なります。表示システムを見直すことで、高速な動作を実現できました」(澤近氏)

 さらに、レスポンス向上のためにもう1つ新たな仕組みを取り入れた。それが、ハードウェアとソフトウェアの“役割分担”だ。

 「921SHでは、タッチレガードセンサーで入力された信号をソフトウェアだけで解析していましたが、931SHではハードウェアとソフトウェアが一緒に動いています。例えば、タッチパネルでドラッグをする場合、『ドラッグですよ』とハードウェアが判定すれば、ソフトウェアがそれに従って動きます。つまり、判断する部分と動作させる部分で役割分担をしているというわけです。

 従来の機種ではソフトウェアが動作の1つ1つを判定してフィードバックをしていたので、反応に時間がかかることがありましたが、今回の改善でかなり速くなったと思います」(澤近氏)

 こうした基本動作の高速化を実現できたからこそ、次のステップとしてタッチパネルのレスポンスを高速化できたという。とはいえ、931SHはシャープのソフトバンクモバイル向け端末では初めてタッチパネルを搭載したモデルであり「何もない状態からスタートした」(澤近氏)ため、感度の調整にはかなり苦労したようだ。

 「タッチパネルの感度は表示内容ごとに調整しました。例えば、メールやメモ帳などのリスト表示は異なる機能でも感度を統一しています。フリックしたときにどうやって移動して止まるか、何パターンも用意してアンケートを採って、一番心地よい感度に調整しました」(澤近氏)

 澤近氏が「予想以上に速くなった」と驚くほど進化したのが、データフォルダの画像表示だ。画像を表示した状態で左右にフリックすると前後の画像に切り替わり、サムネイル画面を上下にフリックするとスクロールする。931SHではこの2つの操作をスムーズに行える。

 「商品企画としては画像表示を一番心配していました。タッチパネルは直感的に操作するものなので、これまでの物理キーを使った操作よりも反応速度がよくないと使い勝手が悪くなるだろう、というのは開発当初から話していました」(澤近氏)

photophotophoto 写真左からインライン表示、グリッド表示、プレビュー表示。サムネイルをフリックすると、スムーズにスクロールする

“タッチパネルならでは”の操作方法

 タッチパネルの搭載でもう1つこだわったのが、画面の見やすさだ。931SHでは、機能やデータのアイコンを待受画面に貼り付けられる「デスクトップショートカット」を利用できる。「特定の相手に『電話をかける』『SMSを送る』といった細かい動作のショートカットも作れるので、幅広くカスタマイズできます」(澤近氏)

 このほか、画面上部のステータスエリアをタッチすると、表示されたアイコンが拡大して未読メールや予定などを確認できる「ステータスタッチ機能」も採用した。「アイコンが増えたため、ユーザーさんから何のアイコンか分からないという声が多数寄せられていました。ステータスタッチ機能では、アイコンの説明をするだけではもったいないので、機能にアクセスできるようにしました」(澤近氏)

photophotophotophoto デスクトップショートカットに登録したアイコンをタッチすると、データや機能にアクセスできる(写真=左端、左中)。画面上部をタッチして表示されるアイコン一覧からは、新着メールやスケジューラ、アラーム、マナーモード設定などにアクセスできる(写真=右中、右端)

 タッチパネルをスムーズに操作する上で生きてくるのが、ハーフXGAサイズの3.8インチ液晶だ。タッチパネルは指で押すので、機能アイコンには一定の大きさが必要になるが、3.8インチの大画面なら、ある程度大きなアイコンでも余裕を持って配置できる。「アイコンは指で押しやすい大きさを決めて、ルール化しました」(澤近氏)

photo キッチンタイマーは、アイコンをタッチするだけで「+10分」「+1分」「+30秒」の時間調整ができる。

 また、ディスプレイの縦の解像度が増した分、使い勝手が向上した機能もある。その1つが「キッチンタイマー」だ。931SHのキッチンタイマーには「+10分」「+1分」「+30秒」のアイコンが表示され、各アイコンをタッチするだけで簡単に時間が調整できる。また、1度計測した時間の履歴が画面下部に3件表示されるので、よく計る時間はワンタッチで選択できる。「キッチンタイマーは、インスタントラーメンをよく食べる人に非常に好評です(笑)」(澤近氏)

 ブラウザは、1024ピクセルの横幅いっぱいにWebサイトを表示できるのが大きな魅力だが、澤近氏が「ブラウザで一番こだわった」と話すのが「拡大表示」だ。931SHのYahoo!ケータイとPCサイトブラウザでは、目当ての部分をロングタッチ(長押し)すると、その周辺エリアが別ウィンドウに拡大表示される。この操作によって文字が見やすくなるのはもちろん、タッチ操作でもスムーズにリンクを選択できる。

photophoto ディスプレイ上で任意の部分を長押しすると、その部分の拡大表示が現れる。そのまま指をスライドさせるとスクロールし、リンクにカーソルを合わせて指を離すと、リンク先へアクセスできる。これはYahoo!ケータイとPCサイトブラウザどちらも同じ仕様だ

 さらに、PCサイトブラウザは、ブラウザのバージョンアップに伴ってスクロール速度が向上した。「これまでの機種は十字キーで少しずつしかスクロールできませんでしたが、ある程度キャッシュにページを読み込むことで、(画面を触る)指に追随する形でスクロールします」(澤近氏)

リフレクトバリアパネルは非搭載に

 画面の見やすさに関連して気になるのが、ディスプレイの耐久性や、指紋などによる汚れだ。「931SHではコーティングを厚めにしているわけではありませんが、指紋が付きにくい保護シールを貼っています。ただし指紋を完全に消すことはできないので、今後の課題ですね。ちなみに、市販の保護シールを貼るとタッチパネルの感度に影響が出るので、推奨はしていません」(澤近氏)

 最近のシャープ製端末のディスプレイに採用されていた「リフレクトバリアパネル」は、今回、タッチパネルを搭載することで見送られた。リフレクトバリアパネルは、ディスプレイと保護パネルを密着させることで、太陽光の反射を抑える役割を果たす。

 「タッチパネルは液晶から発生するノイズの影響を受けやすいので、液晶と保護パネルを密着させるリフレクトバリアパネルを採用すると、液晶の上にある(タッチパネルの)センサーが反応して誤操作が起きやすくなります。例えば、狙った部分をタッチできない、どこにも触れていないのに動作してしまう、といったことが起こる可能性があります。今回はリフレクトバリアパネルの搭載を見送る代わりに、しっかりタッチできる操作性の実現に注力しました」(澤近氏)

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