2007年秋にNTTドコモとauが導入した新料金プラン(割賦販売制度)は、先行していたソフトバンクモバイルの新スーパーボーナスプランと同じく、同一機種の2年間利用を条件とすることで月々の基本料金を下げるもの。ビジネスとして健全になったかもしれないが、端末そのものは高額になり、ユーザーにとってお得感は薄くなってしまった。その結果、2008年は“新機種が売れない”というメーカーの悲痛な声ばかりが聞こえてきた1年だったように思う。
折からの不況も重なり業界再編も加速しそうだが、暗いニュースが続く一方で、2008年にはケータイの新たな楽しみ方を提示するようなサービスが続々登場した。筆者が注目したのは、そんな新サービスに対応した機種だ。
2008年、筆者が最も注目した新サービスが1月末にスタートした「au Smart Sports」だ。Nike+iPodが火を付けた(と筆者は思っている)ジョギングブームにうまく乗ったと言ってしまえばそれまでだが、ケータイにスポーツという新たな活用シーンを示した功績は大きい。そして、このau Smart Sportsに特化した端末として登場したのが、東芝製の「Sportio」だ。
52(幅)×93(高さ)×13.7(厚さ)ミリというコンパクトなボディにも驚いたが、それ以上にキー配置を左右非対称にし、操作面で大きな犠牲を払ってもサイズを優先させた思い切りのよさに感心した。Bluetoothによるワイヤレスミュージックなど、ケータイ×スポーツシーンに欠かせない機能を搭載する一方で、ワンセグもおサイフケータイもすっきり削ぎ落とした潔さには、auが今後目指す端末の方向性が色濃く表れていたように思う。
ドコモが2年使えるケータイとして“全部入り”を提示したのとは対照的に、auが目指すのは、さまざまな利用シーンに特化した端末なのだろう。例えば普段使いのメイン端末とは別に、専用機としてもう1台持ちたくなるような、そんな個性的なケータイだ。
その意味では、年末に発表されたソニー・エリクソン製の「Walkman Phone, Xmini」も、2008年のauを象徴する端末と言える。
ソフトバンクモバイルが月間純増数1位を更新し続ける陰で、イー・モバイルが大躍進したのも2008年を象徴する出来事の1つ。低価格のミニノートPC“Netbook”と、データ通信カードとの抱き合わせが実現した“100円PC”という2つのキーワードは、流行語大賞の候補にこそ選ばれなかったが、PCメーカーや通信キャリアに与えたインパクトは相当なものだったと思う。
筆者が2008年に注目した2つ目の端末は、そのイー・モバイルがいち早く発売したHTC製の「Touch Diamond(S21HT)」。スマートフォンに見えないコンパクトさや、指で操作できる独自インタフェースのTouchFLO 3Dなど、端末そのものの魅力もさることながら、同じ端末が複数のキャリアからほぼ同時期に出る、ということにも興味を引かれた。
「iPhone 3G」の発売でスマートフォンへの関心が高まっていることや、端末を取り巻く技術が成熟してきていること、そしてパケット定額制の普及や端末ラインアップを充実させたいキャリアの思惑など、さまざまな要因はあるのだろうが、4社から販売されるという点に、圧倒的な世界シェアを持つグローバルメーカーの強さを、改めて見せつけられた気がした。
ドコモはこの冬、90xi/70xiという従来の型番ルールを、新しくPRIME/STYLE/SMART/PROという4シリーズに一新した。最後にピックアップしたのは、フラッグシップを担うPRIMEシリーズの富士通製「F-01A」だ。
F-01Aはある意味で2008年を象徴するケータイと言ってもいい。3.2インチの大型ディスプレイにタッチパネル、防水仕様、モーションセンサー、高画質カメラと、トレンド機能がこれでもかというくらい搭載されている。
タッチパネルはiPhone以降、特に注目されるようになったインタフェースだが、F-01Aはカメラ操作に応用しており、これが実に秀逸。画面を見ながらピントを合わせたい場所をタッチするとピント調整してシャッターを切ってくれるので、思い通りの構図で写真が撮れる。
また今年は、例年以上にたくさんの防水ケータイが登場したが、全部入りハイスペック×防水を実現したのはauの「G'zOne W62CA」とこのF-01Aだけ。タッチパネルと防水という、2大トレンド機能を兼ね備えたF-01Aは、まさにキングオブ全部入りケータイと言えるだろう。
なお、F-01Aは当然ながら、ドコモの新サービスの「iコンシェル」や「iウィジェット」、「iアプリオンライン」に対応している。その中でも筆者が特に注目しているのがiコンシェルだ。
今はまだ、登録したプロファイルにそった情報が一方的に送られてくるだけで、「iチャネル」の延長線といった印象だが、ケータイマーケティングという観点から見るとそのポテンシャルは相当に高い。オープン化で収益減が避けられないiモードに代わる起死回生をかけたサービス……というのは少々言いすぎかもしれないが、どのような展開を見せるのか2009年も注目したい。
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