2007年8月にカシオ計算機の初代EXILIMケータイ「EXILIMケータイ W53CA」が登場してから1年。2008年秋冬モデルとして11月に発売されたのが「EXILIMケータイ W63CA」は、カメラをはじめとするさまざまな機能をさらにグレードアップして登場した。
基本的なデザインは前モデルのW53CAを受け継いでいるが、中身はどれほど進化したのか。カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 第一事業部 戦略推進グループ 商品企画チームの本間敦氏、開発設計本部 ソフト設計グループの田谷亮氏、開発設計本部 ハード設計の北村貴哉氏に話を聞いた。
―― 初代EXILIMケータイのW53CAは私も愛用していますが、まずそのW53CAに対するユーザーの反応について教えてください。どのくらいの人がカメラを目的にW53CAを購入したのでしょうか?
本間氏 カシオ端末のユーザー比率は男性の方が高いのですが、W53CAは女性の比率も高く、男女比率がほぼ半々とバランスのよいモデルでした。別途デジタルカメラを持つことなく、日常の中できれいな写真を撮りたいという女性に支持されたと思っています。我々もそういう方にW53CAを使っていただこうと、カメラ機能を強化しつつスタイリッシュに作り上げました。
実際、W53CAを選んでいただいた一番の理由が「5.1Mピクセルカメラ」。続いて「5.1Mピクセルというカメラ機能なのにスタイリッシュ」、3番目が「手ブレ補正機能など本格的なデジタルカメラ機能」でした。
―― では逆に、初代EXILIMケータイユーザーが不満に感じていたことは何でしょうか? それが今回のW63CAに反映されていると思うのですが。
本間氏 W53CAユーザーから挙がった要望は、「さらなる画素数アップ」「ワンセグ搭載」、そして「薄型化」でした。ですから今回は、さらに画素数を向上させて、スタイリッシュなデザインにすることがテーマでした。我々はユーザーに対してさまざまな調査を行ってきましたが、W53CAはこれまでのカシオ端末の中で、実は不満点が一番少なかったモデルなんです。
―― それはすごいですね。確かにワンセグ非搭載だったことを除けば、W53CAは非常にバランスの取れた使いやすい端末だったと思います。
本間氏 ですから今回は、ワンセグとBluetoothを搭載しました。さらに8.1Mピクセルのカメラを新たに開発しています。
―― スタイリッシュといえば、デザインも少し変わっていますよね。
本間氏 W53CAはカメラのある面にFeliCaチップやスピーカー、microSDスロットのカバーを搭載していました。W63CAではスピーカーをディスプレイの上に、FeliCaチップを背面に移したので、カメラのある面はよりデジタルカメラらしい顔になっています。また、スピーカーがなくなった分、フォトライトを2つに増やして明るさを従来の2倍にしました。
北村氏 今回は「高画素化」と同時に「薄型化」も必要ということで、8.1Mピクセルのセンサーを搭載しながらカメラモジュールの厚さを抑えようと、新規にカメラモジュールもレンズ構成などを見直して、薄くできました。撮像素子自体は少し大きいのですが、小さな部品をより適材適所で配置することで、モジュールの小型化と高画素化を両立させています。
―― 809万画素となると、もうデジカメと同等レベルですね。一般に画素数が増えると1つ1つの画素サイズ(セルサイズ)が小さくなり、ノイズが出やすくなりますが……。
北村氏 確かにセルサイズは少し小さくなりましたが、その分画像処理エンジンを新規開発しました。センサーから発生するノイズをできるだけ抑えて、8.1Mピクセルの解像度を出せるようにしています。特に感度やノイズリダクション面を強化しました。
今回は新型の「EXILIMエンジン for モバイル」を搭載し、さらなる高画質化を目指しました。新しいEXILIMエンジンがなければ、光量落ちや収差の補正はできなかったですね。
できるだけデジタルカメラに近い自然な色を再現しつつ、8.1Mピクセルの解像感を実感してもらえるように絵作りをしています。そのためにディテールをつぶさないでノイズを抑えるよう、画像処理エンジンを駆使しています。
―― セルサイズが小さくなると、どうしても感度が落ちてしまいますが、W53CAと比べてどうでしょう。
北村氏 センサーの構造を改良することで、W53CAよりも感度が向上しています。W53CAではISO感度はオートだけでしたが、今回はマニュアルでセットできますので、それを実感できると思います。感度をISO1600まで上げれば、かなり暗い条件でもきれいに撮れます。
田谷氏 さらに「ナイトビジョンショット」を利用すると、画素加算により感度が上がります。W53CAは5.1Mピクセルなので、画素加算を行うとその4分の1のサイズで1Mピクセル相当になりますが、W63CAは8.1Mピクセルなので、画素加算をしても2Mピクセル相当で撮れます。これも大きいですね。
―― 今回、W63CAをいろいろと使ってみて、気づいたのは2点です。1つは横位置で撮るときのUI(ユーザーインタフェース)が大きく改善されていること。もう1つは逆光補正や顔検出など新しい機能が搭載されていることです。
田谷氏 ファインダー内の被写体がきちんと見えるように、できるだけスルー画像にアイコンなどが重ならないようデザインしました。例えば、ズームバーのように常時見えている必要がないものは時間がたつと消えるので、被写体をよりとらえやすくなっています。
残り撮影枚数の表示もEXILIMのように常に表示させていますし、右上にはうっすらと半透明でサイドキーの位置も表示しています。VGAサイズの3.1インチ有機ELディスプレイなので、“高解像度の大画面”もメリットといえます。
―― メニューも大きく変わりましたよね。分かりやすくなったと思います。
田谷氏 サブメニュー構成も1から設計し直しています。機能が多いので、アクセスしやすいようアイコンを大きくして、その機能をグラフィカルに表示させています。さらに、サブメニューの第1階層の先頭に、よく使うベストショットや画像サイズ、ライト、マクロを入れました。
―― 使いたいときすぐマクロやフォトライトのオン/オフができるのはいいですよね。W53CAではそれができず、ちょっと面倒でした。
田谷氏 その辺もW53CA開発時にご指摘いただいたので、全面的に見直しました。メニューの見直しは土台を見直すことでもあるので、見せ方も含めて新規に設計しています。機能がたくさんあるので項目も増えましたが、メニューバーの左右の端に次のアイコンが半分見えるなど、次ページのメニューが分かるような工夫も入れています。
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