ゲームの歴史そのものがストーリー――「SPACE INVADERS INFINITY GENE」ヒットの裏側(1/2 ページ)

» 2009年09月17日 14時12分 公開
[山田祐介,ITmedia]
photo SPACE INVADERS INFINITY GENEのディレクター&グラフィックデザイナーの石田氏

 アップルストア銀座で9月14日に行われたIGDA日本(国際ゲーム開発者協会日本)主催のiPhoneアプリ開発者向けセミナーに、iPhone向け人気シューティングアプリ「SPACE INVADERS INFINITY GENE(スペースインベーダーインフィニティジーン)」を手掛けたタイトーの石田礼輔氏が登壇した。記号的でスタイリッシュなグラフィックやテクノサウンド、ステージが進化する独特の展開が繰り広げられる同アプリ――。ディレクションとグラフィックを担当した石田氏は、どのような思いと狙いを作品にこめたのだろうか。


シューティングの歴史そのものが、作品の“ストーリー”

 石田氏にとって「スペースインベーダー」は特別な存在だ。デビュー作でもあるケータイ向けゲーム「トランスピンボール」や、「スピカ★アドベンチャー」「ニジイロエンソク」といった同氏の代表作には、スペースインベーダーが登場する。

photophoto 石田氏のプロフィール(写真=左)。写真のポーズは深遠な無限の世界を両手で表現した「インフィニティポーズ」だ。石田氏の代表作には、ゲーム中にスペースインベーダーが登場する(写真=右)

 そんな「スペースインベーダー大好きっ子」という石田氏が所属するタイトーは、2009年2月にiPhoneアプリに参入。スペースインベーダー30周年を記念した作品として、新作スペースインベーダーの開発オファーが石田氏に舞い込んだ。

※初出時、「iPhone向け新作スペースインベーダーの開発オファー」と記載しましたが、同作は2008年12月に携帯電話向けタイトルとして発表され、その後iPhone向けに展開した作品です。お詫びして訂正します(2009年9月18日)

photo 過去と未来をつなぐデザインが、コンセプトの1つ

 企画を練る中で石田氏は、「今の若い世代はスペースインベーダーを、『名前は知ってる』『ドット絵は見たことがある』というレベルでしか知らないのでは」と思い、ゲームを知ってもらうために“元祖スペースインベーダー”からゲームを始めると決めた。さらに、ゲームの中でシューティングの歴史を表現するために、ステージが「進化」するというコンセプトを生みだした。「スペースインベーダーがどういうゲームで、それがシューティングにどんな影響をおよぼしたのか。それが伝わるようなゲームにしたかった」と、石田氏は振り返る。


photophotophoto 元祖スペースインベーダーから始まり、ステージは「シューティングの歴史」をたどる

 「進化」というコンセプトは、“iPhoneアプリ”として人気を獲得するためのポイントでもあった。App Storeでは、作品を説明文と何点かの画像だけで紹介する必要があるため、石田氏は“一言で表現できるウリ”として「進化するゲーム」というコンセプトを打ち出したのだ。強い印象を残すビジュアルにも、一目見ただけでユーザーに印象を残したいという狙いがある。

 さらに海外展開も見据え、「誰にでも分かる」ことも強く意識した。「ゲームを“撃ってよける”という要素に絞り、説明がなくてもとりあえずは遊べるようなゲームを目指した」(石田氏)ことに加え、ゲームの進行も単純なものにしてる。企画当初は「進化」というコンセプトを表現するために、ある一定の条件で進化の方向性が変化するシステムや、ユーザーが進化を選択できるシステムも考えていたが、「進化の条件を満たすことにプレイヤー集中してしまったり、ゲームのリズムが損なわれたりすることで、ゲームそのものを楽しめなくなってしまう」と判断し、採用を見送ったという。

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