楽phone S1の電源を入れると「レノボのロゴ」→「楽OSのロゴ」→「中国聯通の3Gロゴ」の順に表示されてから、楽phoneの待ち受け画面が表示される。待ち受け画面では、“Androidのように”画面にあるロックバーをスライドすると、メニューアイコンが並ぶホーム画面にアクセスできる。
マンマシンインタフェースでは、画面のタップ以外に、ディスプレイのベゼルをスライドすることでアプリケーションのメニューを出したり、メニュー画面を呼び出せる。その挙動は軽快だ。画面デザインを見る限りは、楽OSが独自で開発したOSであることを物語っていなくもないが、画面をスライドしてロックを解除できるのはAndroidと同じで、設定画面や本体に標準で差しているmicro SDカードに収録されているファイルは、どうみてもAndroidだ。なんと、レノボのWebページでも「楽OSはAndroidをベースにしたOS」とさりげなく書いてあったりする。
ということで、楽OSは「Android」であるとレノボが公式に認めるOSあったりしたわけだが、Androidで標準のアイコンがほとんど見あたらない。あるのはWebブラウザくらいで、中国ではアクセスを遮断しているFacebookやtwitter、YouTubeはもちろん、Androidマーケット、メール、マップ、メッセージ、トーク、連絡先など、とにかくAndroidデバイスで標準で用意しているアプリケーションが楽OSには用意されていない。AndroidベースのOSでありながら、Googleの設定すらデバイスに反映できないのだ。
その代わりに、中国最大手のオンラインショッピング「淘宝網」や、チャットクライアント「QQ」、動画共有サイト「優酷網」(YOUKU)、「CNTV」(中国中央電視台CCTVのネット局)、中国ではtwitterの代わりに普及している「新浪微博」、同じく、Facebookの代わりの「人人網」と「開心網」など、中国で人気のWebサービスが利用できるAndroid……、いや、“楽OS”アプリケーションを標準でインストールする。あと、中国ユーザーが最も重要視する“ゲーム”も多数用意するのを忘れていない。
なお、設定できる言語は中国語か英語のみで、日本語は表示も入力もできない。検索してみると、楽phoneを入手したものの、日本語がインストールできなくて困った、という掲示板の書き込みも少なからずある。
楽Phoneに新しいアプリケーションをインストールするには、Androidマーケットではなく、会員登録が必要なレノボの「楽応用商店」を利用する。「楽応用商店」はWebページもあるので、PCからアプリケーションのラインアップを確認できるが、Google関連や日本語IMEはない。その一方で、中国でも大人気のゲーム「Angry Birds」は楽応用商店内で扱っている。
AndroidでありながらGoogle関連のアプリケーションはなく、新たに導入しようとしても、インストールできるアプリケーションはレノボに管理されていて、ハッキングしない限りユーザーは自由にインストールできない。
そういう意味で、「外国や国内政治に興味のない多くの中国人に楽しめるアプリケーションを最初から用意しておき、中国体制にとってよけいなものは入れさせない、安全で健康的なスマートフォン」というのが、楽phoneの正体といえるのではなかろうか、と、限りなく小さな声でつぶやいてみたりする。
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