俺、大晦日なのに中国でパイオニアの液晶テレビを購入したんだ山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

» 2011年01月24日 16時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

安価な国外製家電は裕福な都市部で買える

正月商戦期の準備を進める中国家電量販店。中国でもステレオ立体視対応がアピールされている

 中国では、2009年あたりから液晶テレビの販売競争が激しくなった。都市部住民を対象にした家電“買い換え”促進政策「以旧換新」や、農村部住民を対象にした“新規”家電購入促進政策「家電下郷」を開始してから、中国の家電メーカーは「以旧換新」「家電下郷」に関連した独自の特別キャンペーンを実施し、これがきっかけで製品の低価格化が進んだ。

 ただ、このような政策主導のキャンペーンとは関係なく、淘宝網(TAOBAO)などのオンラインショップでは、さらに低価格化が進んでいる。このような爆安オンラインショップの台頭で、超高額だった国外メーカー製品が一般的な収入の世帯でも購入できるようになってきた。となると、相対的に、政策主導キャンペーンで低価格家電を販売している中国メーカーは苦しくなる。

 この状況を打破すべく、2010年では中国メーカーもインターネットでオンライン“公式”ショップを設けるようになってきた。少しわき道にそれるが、オンラインショップを利用できるユーザーは都市部に限定されている。そのため、比較的高収入の都市部世帯ではオンラインショップで海外製家電を安く購入できるのに、収入が低い農村部世帯は、家電量販店で中国製家電を割高な価格で購入という不条理が進んでいる。

火薬の香りがする“パイオニア”のテレビ

 中国内陸部にある筆者の活動拠点では、“中国では”大手メーカーの「創維」(Skyworth)製テレビを所有している。ブラウン管を使っている老兵ゆえに最近では調子がすこぶる悪く、電源を入れるたびに「キーン」という高周波音を出すようになってきた。まさに、政策キャンペーン「以旧換新」で想定している「家電買い替え」の状況において、「以旧換新」で推奨する中国製製品ではなく、“パイオニアの液晶テレビ”(そう!プラズマテレビではない)を購入することにした。

 パイオニアは、2009年に薄型テレビ市場からの完全撤退を表明したものの、ラオックスを買収した大手家電量販店「蘇寧電器」がブランドを買い取り、同店で“パイオニア”ロゴをつけた液晶テレビを扱っている。蘇寧電器の公式見解によると「“パイオニア”ブランド製品の販売は好調で、週の売り上げが前の週の約2倍という伸びを続けている。国慶節と中秋節の商戦期で4万台を販売する見込みだ。購入者からは、世界的に知られるブランドと品質の高さ、そして、蘇寧電器のアフターサービスが評価されている」という。

 しかし、筆者が滞在する内陸部の蘇寧電器では、“パイオニア”ブランドの液晶テレビを販売しているものの、ほかのメーカー製品には当たり前のようにいる販売スタッフがおらず、特売対象になったこともないなど、蘇寧電器がこの製品を売りたいという意気込みは、ほとんど感じられない。売れ行き好調と書いてあるWebページからアクセスできる、同店のテレビ製品販売ランキングでもランク外だ。

 さらに調べると、“パイオニア”ブランドの液晶テレビに関するオフィシャルWebページは存在せず、蘇寧電器のオンラインショップでも販売されていない。まれに小さなオンラインショップで扱っていたりするが、その数は他社製品に比べて極めて少ない。かなりマイナーなメーカーの製品でも紹介する価格比較サイトに“パイオニア”ブランドの製品はない。インターネットで情報を収集できる中国在住のユーザーならば、どう考えても地雷の予感がする“パイオニア”の液晶テレビだが、「地雷原にはネタも埋まっている!」という敢闘精神に則って、「どうやら大規模な値引き販売があるかもよ」といううわさされた大晦日の夜、蘇寧電器に突撃を敢行した。

 あこがれの“パイオニア”ブランド液晶テレビは26型(LCD-26Q30)、32型(LCD-32Q30)、42型(LCD-42Q30)、46型(LCD-42Q30)が通常モデルとして用意されるほか、LEDバックライトを採用する32型(LED-32V800)、42型(LED-42V800)のプレミアムモデルをそろえている。注目はコストパフォーマンスのバランスがいい通常の32型モデルで、“うわさ”通り、通常販売価格3999元が大晦日特別価格(実は正月特別価格のフライング)で2899元と確かに安くなっている。

正月特別価格のセールを大晦日の夜からフライング気味で始めた蘇寧電器だが、客の数は悲しいほどに少ない(写真=左)。“パイオニア”ブランドの販売ブースはさらに悲しい(写真=右)

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